Facebookとインスタグラム、 D2C の「大黒柱」から転落か:「TikTokとFacebook、両方で勝つことを求められている」

DIGIDAY

大麻関連のコンテンツでインスタグラムから3度削除されているものの、THC(テトラヒドロカンナビノール)入り飲料のカン(Cann)は2022年に入ってから、共同創業者のルーク・アンダーソン氏が大麻関連のマーケティング規則に違反しない「面白くて笑える共有可能」なコンテンツと表現するものをTikTokに投稿している。

カリフォルニア州に本社を置くカンは、従来のソーシャルメディアのインフルエンサーを活用するだけでなく、30人以上いる著名な投資家の一部を起用している(カンのTikTokに登場する著名人は、五輪にも出場したスキーヤーのガス・ケンワージー氏、女優のサラ・ミシェル・ゲラー氏、ドラァグクイーンのコーンブレッド・ジェテ氏など。女優で投資家のグウィネス・パルトロー氏、レベル・ウィルソン氏もカンのコンテンツをさまざまなプラットフォームで共有している)。フォロワー数は辛うじて5000人を超えたところだが、TikTokに投稿されている20本余りの動画は何百万回も再生され、プライド月間のキャンペーンに至っては、数万本のユーザー生成動画につながっている。

一方、インペリア・キャビア(Imperia Caviar)の場合、マーケティングマネージャーのダニエル・リー氏は今もFacebookとGoogleにより多くの資金を投じている。それでも、TikTokは現在、ウェブサイトへのトラフィック供給源のトップ3に食い込んでいる。TikTokアカウントのフォロワーは1万4000人足らずだが、キャビア「バンプ(手の甲に載せたキャビアを食べること)」のトレンドを取り上げた動画など、いくつかの動画は再生回数が数百万に達している。

「デジタルマーケティングは進化の時期に来ていると思う。ありとあらゆる手法が増えているためだ」とアンダーソン氏は話す。「そして、何が起きているかを見てみると、どれもROIはプラスになっていない」。

TikTokとの競争激化で、Metaは存亡の危機に直面

大麻やキャビアだけでなく、さまざまなマーケターがTikTokで成果を出し始めている。Facebookとインスタグラムは長年、D2Cコマースの大黒柱だったが、ブランドやエージェンシーは広告価格の上昇、オーガニックリーチの減少、フォーマットの変化をきっかけに、新しいプラットフォームのテストや広告予算の多様化にますます積極的になっていると口をそろえる。

Meta(メタ)はこの数カ月、存亡の危機とも言われる事態に直面している。AppleのiOSの変更によって、データターゲティングが弱体化しているうえ、TikTokとの競争も激化しているためだ。また、TikTokのクローンであるリールで、アルゴリズムがレコメンドする動画を優先する傾向が強まり、一部のFacebook、インスタグラムユーザーを怒らせている。四半期決算で初めての減収を報告しただけでなく、7月下旬に(セレブリティの)カイリー・ジェンナー氏とキム・カーダシアン氏が「Make Instagram Instagram again(インスタグラムを再びインスタグラムに)」と訴えるミームを共有したことで、さらに厳しい目を向けられている(このミームは写真家兼インフルエンサーのタチ・ブルーニング氏が作成したもので、チェンジ・オーグでは30万近い著名が集まっている)。

しかし、Metaは反発を押しのけ、この新しいフォーマットはすでに勢い付いていると主張している。リールの利用時間は第2四半期、Facebookとインスタグラムで30%増加し、ユーザーがインスタグラムで過ごす時間の20%を占めていた。CEOのマーク・ザッカーバーグ氏は第2四半期の決算報告で、リールの広告が「予想より早く成長している」と述べ、年間売上高10億ドル(約1330億円)に達したスピードはストーリーズより速かったと説明している。

「理論上、リールの成長を抑制すれば、短期的な逆風を和らげることができる」とザッカーバーグ氏は前置きし、「しかし、長期的に見ると、私たちの製品やビジネスに悪影響を及ぼすだろう。リールは全体的なエンゲージメントと品質を高め、いずれフィードに近い形で収益化できると確信しているためだ」と断言した。

電通メディアのソーシャルメディア担当ディレクター、コディ・ファルディン氏は、Metaはまだ「皆が口に出していない大きな問題」だが、アテンションエコノミーの急激な変化に伴い、3分の1のクライアントはすでに、広告費をさまざまなプラットフォームに分散させていると述べている。

「ソーシャルコマースの進歩を考えると、広告主が利用できる機会はいくつもあり、その扉は開かれつつある」とファルディン氏は話す。

「両方で勝つ」ことを求められるマーケター

予算獲得競争で、両方の利点を見いだしているマーケターもいる。パーソナルケアブランドのドクター・スクワッチ(Dr. Squatch)はほんの1年前まで、TikTokに広告費を投じていなかったが、最高マーケティング責任者のジョシュ・フリードマン氏によれば、現在は常時、予算全体の15~25%をTikTokに使っているという。ただし、Facebookとインスタグラムは今もマーケティング予算の50%以上を占めており、リールの比較的小さなテストで「本当に前向き」な結果が得られているとフリードマン氏は話している。

CAVUベンチャー・パートナーズ(CAVU Venture Partners)の最高ブランドアーキテクトを務めるスティービー・クレメンツ氏は、AppleがiOSのプライバシーを変更したことで、新しい顧客を見つけることがますます難しくなり、CAVUが出資するブランドはほかの場所で実験を行うようになったと述べている。たとえば、プレバイオティクスソーダのポッピー(Poppi)やビーガンボディケアのオセア・マリブ(OSEA Malibu)は「大成功」を収めた後、FacebookからTikTokに焦点を移している。しかし、必ずしもどちらか一方ではない。クレメンツ氏によれば、Facebookでインフルエンサーを全方向に活用している企業もあれば、TikTokで「本物」のコンテンツに傾倒している企業もあり、プラットフォームに違いがあるため、マーケターは「両方で勝つ」ことを求められているという。

TikTokに広告費を投じた方が効率的だとクレメンツ氏は断言し、TikTokではオーガニックな有料メディアがうまくいくと説明した。「多様な方法でメディアミックスにアプローチしているブランドの多くが成果を出していると思う」。

Facebook、Pinterest(ピンタレスト)、そしてスナップ(Snap)で合わせて10年を過ごし、現在、インフルエンサーエージェンシーのホエーラー(Whalar)で測定分析担当プレジデントを務めるガズメンド・アルシ氏は、それぞれのプラットフォームが互いにコピーし競い合うなかで、多くの変化を目の当たりにしてきた。アルシ氏は2017年3月、インスタグラムがストーリーズを発表したときを振り返り、「厳しい現実」として、あるフォーマットを誰がつくったかなどどうでもいいことで、誰が一番うまくやっているかがすべてだと語った。ただし、インスタグラムのユーザーが現在の変更を受け入れる兆候は見られないという。

「結局のところ、熱心な消費者がいなければ、彼ら(Meta)は何ものでもない」とアルシ氏は語る。「そして、人々はインスタグラムアプリの熱心なユーザーだ」。

[原文:After organic success on TikTok, more DTC brands are diversifying their budgets

Marty Swant(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:黒田千聖)

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