Amazon、労働不足で窮地に:労組の承認、倉庫の自動化などが課題に

DIGIDAY

こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です
※モダンリテール[日本版]は、DIGIDAY[日本版]内のバーティカルサイトとなります

Amazonは倉庫やフルフィルメントセンターにおいて労働力の危機的な不足に直面しており、最近リークされた企業文書によれば、事態がこのまま続いた場合、同社は2024年に配達、仕分け、発送を行う従業員が足りなくなる可能性がある。

同社の従業員の大部分は倉庫で勤務しており、すでにかなりの期間にわたって労働力の不足に対処してきた。米国において同社は100万人以上の人員を採用しており、物流とサプライチェーンを管理するため数十万人を雇用し、昨年後半だけでも27万人を雇い入れた。

労働力不足が危機的状況に

「断っておくと、我々は2021年の後半、労働力が不足した環境で運用を行ってきた」と、同社の最高財務責任者を務めるブライアン・オルサブスキー氏は4月に行われた第1四半期の決算発表で述べた。2021年後半にオミクロン株が出現したことで、フルフィルメントネットワークを離職する従業員が大幅に増加し、当社はその穴をカバーするために新たな従業員を引き続き雇用している」と、同氏は付け加えている。

労働力はAmazonにとって新しい問題ではない。同社は以前から、労働環境よりもビジネスの効率や顧客満足を優先することが大きく報じられてきた。2021年10月には、オクラホマにある同社の倉庫の従業員が、病気や出産のために休職を求めた従業員を解雇し、給与のカットを行ったと訴えた。11月には、数百人の公衆衛生専門家が同社に対して、ホリデーシーズンやプライムデー(Prime Day)には同社の従業員の負傷が大幅に増加したと告知した。

このような理由から、同社は人間の労働力への依存を軽減するためにさまざまな投資を行っている。一方、労働環境の改善を求めて団結する従業員もいる。現在、今後の人材不足が見えはじめてきたなかで、これらの問題の多くが危機的な状況に達しつつある。労働力の専門家によれば、この危機を回避するためには、労働組合の承認、給与の増加、サプライチェーンの管理の改善、倉庫の自律化にもっとも適した職種の見極めなど、いくつかの手順が考えられるという。

自動化とロボットへの注力

Amazonが倉庫において重視していることのひとつが自動化だ。同社は6月、倉庫スタッフの潜在的な用途をより幅広く支援するため、初の完全自律型モバイル倉庫ロボットとして、プロテウス(Proteus)を発表した

しかし、ロボット工学の専門家は、このようなテクノロジーがビジネスにどのような役に立つかを理解するよう、Amazonのような企業に対して助言している。無人フォークリフトやワークフロー調停ソフトウェアを幅広い顧客に供給している倉庫自動化の新興企業のベクナロボティクス(Vecna Robotics)の創設者であるダニエル・シーアボルド氏は、「Amazonもそうだが、自動化を行おうとしている多くの大組織は、自動化を使用して実際に従業員の生産性を上げることより、自動化を使用して労働力の格差に対処することに思考を向けてしまいがちだ」と述べている。

「基礎の段階から、人間の要求を念頭に置いて作成されたテクノロジーは、従業員の生産性を上げ、燃え尽き症候群で離職することを防止できる。文化としても、この分野に真剣に取り組み始める必要がある」と同氏は述べている。

シーアボルド氏は、Amazonやほかの多くの企業が倉庫の自動化で大きな成功を収めてきたのは、それらの倉庫がクローズドボックスであること、つまり、Amazonが物事の進め方を管理できる倉庫だったことからだと指摘している。「このボックスのなかで何を行うかは、企業がほとんどコントロールできる」と同氏は付け加えている。同氏は、物事をどのようにとり行うかをAmazonが管理できる倉庫について述べている。

投資対効果

しかし、一部の企業は、テクノロジーによって解決可能な問題があると考えている。米国とイスラエルのロボット工学プロバイダのファブリック(Fabric)は、迅速なフルフィルメントと配送に関連する問題は、倉庫を自動化して企業のD2Cへの取り組みを支援することで解決できると語っている。

いくつかのブランドは、自社のフルフィルメント運用を遂行するため、自動化ロボット工学に目を向けつつあると、ファブリックのマーケティングおよびカスタマーエクスペリエンス担当バイスプレジデントを務めるイアン・テレビック氏は語る。ナイキ(Nike)、エイソス(Asos)、ユニクロ(Uniqlo)などのブランドは、過去3年間にeコマースの需要を満たすため、ロボット工学に投資してきた。自動化された倉庫では生産性が向上し、コストが削減されるとともに、労働者にとって賃金がより高く、身体的な負担が少ない職務が可能になると、テレビック氏は付け加えている。

ナイキは従業員によるマーチャンダイズの仕分け、梱包、移動を支援するため、1000台を超えるロボットも導入した。しかし、これには多くのコストを要し、常に望んだ効果を上げられるとは限られない。たとえばウォルマート(Walmart)はプロセスの自動化を何年にもわたって試みてきたが、店舗の通路で移動式ロボットを使って在庫を把握するためことを2年前に断念した

それでも、Amazonの労働環境は、現状の問題を解決するため、さらに役立つ可能性はある。「より効率化され、自動化された倉庫は、毎日24時間年中無休で稼働し、その投資対効果の増加により、業界が今日直面しているコストの上昇と労働力の不足を相殺できる」とテレビック氏は述べている。

労働者の苦悩

しかし、倉庫にロボットを追加しても、人間は依然として必要になる。そして、フルフィルメントセンターの労働環境については、作業員がトイレを使用できない、休憩時間が短すぎる、監視、総合的に危険な環境など、膨大な数の問題点と報道が公表されてきた。

ごく最近の話として、ニューヨークのAmazonの倉庫従業員のグループは4月、米国でははじめて労働組合を承認するよう、インターネット大手企業である同社に要求した。

労働力の専門家たちは、労働組合の承認することが、同社の現在の労働力に関する危機を軽減するひとつの方法だと語る。「まず、Amazonは従業員が望んでいる場所で労働組合を承認することに合意すべきだ」と、ニューヨーク市立大学(City University of New York)の労働都市学スクール(School of Labor and Urban Studies)の教授を務めるステファニー・ルース氏は述べている。「そうすれば、労働者自身が、作業環境を改善する最良の方法を決定することに関与できるようになる。どのように作業環境を改善すべきかについては、当の作業員たちが最良のアイデアを持ち合わせているだろう」。

同氏はさらに、よく議論を引き起こすAmazonの生産ノルマや監視政策について疑念を呈している。これらは従業員の満足度に大きく影響する2つの要因だ。

現在のところ、同社は労働力不足に対して技術的なソリューションを重視しているように見える。一部の人々によれば、この投資はいまだ実を結んでいない。

ルース氏は、Amazonについて次のように述べている。「同社は、投資対効果が高く効率的だと考える自動化を採用するするだろう。しかし、自動化はまだ人間の労働者に置き換わるような、投資対効果の高く効率的な方法ではないことを理解している。この理由から同社は、大勢の人員を雇用し続けている」。

[原文:Amazon Briefing: As a labor shortage looms, Amazon faces a crisis]

Vidhi Choudhary(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)

Source

タイトルとURLをコピーしました