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ハンドメイド作品のマーケットプレイス、Etsy(エッツィー)の売り手の一部は、このプラットフォーム経由での販売が近年になって難しくなってきたと考え、トランザクション手数料の値上げに抗議するためストライキに打って出ようとしている。
EtsyのCEOを務めるジョッシュ・シルバーマン氏は2月24日に投資家に対し、同社が過去最高の売上を計上したあとで、売り手へのトランザクション手数料の値上げを発表した。同社は手数料を売り上げの5%から30%増やし、6.5%に変更する予定だ。
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「当社は今年顧客サポートに5000万ドル(約62億5000万円)以上を投資し、当社のチームは20%以上増やす」と、Etsyのリリースは手数料の値上げについて記載している。これに対してEtsyの数千の売り手は、4月11日から4月18日までストアを閉鎖することでストライキを編成した。
ストライキの主催者は、最新の手数料値上げの取消し、リセラーの厳しい取り締まり、スターセラー(Star Seller)プログラムの終了などの要求をまとめた。スターセラープログラムは、売り手に特定の売上額と配送の指標を満たすことを要求していると非難されていたものだ。多くの売り手は米モダンリテールに、自分たちはストアを閉鎖してストライキに参加するが、このプラットフォームから恒久的に離れることは困難かもしれないと語った。手作りの商品やビンテージビジネスの保有に関して、Etsyの到達範囲は類がないものだ。
これらの売り手の一部は、ショッピファイ(Shopify)やビッグカルテル(Big Cartel)などほかのeコマースプラットフォームをテストしたが、多数のフォロワーと、合理化された国際的なフルフィルメントの関係で、Etsyのプラットフォームに回帰することになった。一方でこのストライキは、Etsyが職人とその収入を支配していることに対しての懸念をさらに強めることになった。
Etsyのスポークスパーソンは米モダンリテールに、「当社にとって、売り手の成功は最優先だ。当社は常に売り手からのフィードバックを聞き入れている。実際に新しい手数料の構造は、マーケティング、顧客サポートなど請願に要約されている分野への当社の投資を増やし、当社のポリシーを満たさないリスティングを取り除くために役立つ」と述べた。このスポークスパーソンは、同社が「当社の530万の売り手に対して優れた価値を提供できるよう全力投入している」と付け加えた。
ますます手に負えない手数料
過去数年間に、Etsyは職人が自家製のアイテムを販売するためのeコマースプラットフォームから、より洗練された世界的なeコマースプラットフォームへと変換してきた。会計年度2021年末の時点で、Etsyには750万のアクティブな売り手が存在し、これは前年比で72%の増加だ。
パンデミックのあいだに顧客によるマスクと装飾品の購入が殺到したことで、同社の売上が増加した。同社によれば、2019年から2020年までに、同社の収益は111%も急増して17億ドル(約2130億円)に達した。
それ以来、同社の戦略は国際的な買収と、自社の広告ネットワークの構築に特化してきた。シルバーマン氏は2016年にCEOとして同社に参加して以来、商品の検索と広告の機能を改良することで、EtsyをAmazonと競合できるまでに成長させてきた。しかし、これらの改良は何年ものあいだに、多くの売り手にとって次第にコストの増加をもたらすようになった。
とはいえ、多くの売り手にとって最後のとどめになったのは、最新の手数料値上げだった。
ある匿名希望のEtsyの売り手は、スパイク付きレザージュエリーを販売するニッチなショップを運営するのは、供給が不足するなかでは特に困難だったと語った。「手数料に加えて、消耗品代や労働力に支払いを行うため、商品を値上げせざるを得なくなり、それによって売上はさらに減少した」。同氏は、ストライキに参加し、新しい手数料ポリシーが実施されれば、「おそらくはEtsyを完全に去るだろう」と語った。
同氏は次のように述べている。「私が約7年前に自分のショップを開いたとき、手数料はわずかなものだった。しかし現在では、販売のあとで毎回資金が不足している」。この売り手はEtsyの広告プログラムだけでも毎月50ドル(約6250円)を支払っているが、十分な売上を得るにはこのプログラムに参加するしかないと同氏は感じている。
これらの売上が同氏のビジネスの利益をどれだけ減らしているかの例として、匿名希望のEtsyの売り手は、現在Etsyでの40ドル(約5000円)の売上は、さまざまなコストを引いたあとで約16ドル(約2000円)の利益になると語った。従来は、同じトランザクションでも合計売上の80%近く、約32ドル(約4000円)が同氏の取り分だった。
過去数年間にコスト増大の影響を特に強く受けてきた別のグループは、国際的な売り手だ。
スペイン在住のEtsyの売り手であるイアン・トーレス氏は、2018年12月にEtsyでステッカーの販売をはじめ、毎月多少の収入を得てきた。「2020年はパッチが大量に売れ、2021年にはさらに多く売れた」と同氏は述べる。「しかし、商品を売るたびに手数料が積み上がるようになってきた」と同氏は説明している。
同氏は次のように述べている。「昨年私は、トランザクション手数料だけで約3000ユーロ(約41万1000円)を支払った。Etsyには優れたマーケットプレイスがあるが、手数料とサービスの品質が釣り合っているとは思えない」。同氏は、米国外のショップであることでさらに問題が増えていると、特に付け加えた。たとえば、Etsyは売り手に対して、35ドル(約4380円)を超える注文では送料を無料にすることを推奨している。「Etsyは、このサービスを行っているリスティングに褒賞を与えている」と同氏は述べているが、同氏のようなショップは自腹で送料を払うことにより、損失を招くだけだ。「もうひとつの方法は、その手数料を含めるように価格を引き上げることだが、そうすると米国外の顧客は、同じ商品に対してより多くの金額を支払うことになる」。
全体として、匿名のEtsyの売り手は、手数料の値上げが売り手の助けとなるツールへの投資でなく「企業の強欲さの表れ」だと指摘している。「手芸を、多くの場合は空き時間に行う人々を、Amazonのように扱い、売り手が毎日24時間、無休で顧客の対応をし、注文をただちに、送料なしで出荷するのを期待するのは酷すぎる」と売り手は述べている。
Etsyを去って別のプラットフォームに移ることの現実
匿名希望のEtsyの売り手は、自分の手作りのジュエリーを販売するため、ショッピファイ、スクエアスペース(Squarespace)そして「ワードプレス(WordPress)のサイトまで」の作成を検討している。
しかし、言うのは簡単だが実行は難しい。「ほかのサイトには、同様なプラットフォームがあっても、手作りアイテム向けにEtsyが広く知られているのと同じだけ知られているプラットフォームはないし、到達範囲も及ばない」と同氏は述べる。
売り手にとって、Etsyと競合を試みているほかのプラットフォームにはいくつかの制限がある。たとえばショッピファイのストアを運営するのはトランザクション手数料こそ安いが、売り手はヨーロッパ連合(European Union)のVATのような、国境を超えることによる手数料を自分で支払う必要がある。
トーレス氏は、付属するショップの追加にもより多くの作業が必要で、さらに多くの場合は売り上げもEtsyより少なくなると同意している。「すでにオーディエンスがいるなら、Etsyの外部で成功できるだろう」と同氏は述べている。多くの場合、ソーシャルメディアからの売上は運任せになると、同氏は語る。「アルゴリズムに祈るしかないこともある」と同氏は続けている。
それでもトーレス氏は、2021年にアパレルを販売するためショッピファイのページを作成した。同氏はこのページを自分の好むように作り上げるため「苦闘」したと語っている。
しかし同氏は、「ショッピファイのストアを作ってよかったと思っている。私はストライキの終了時にEtsyを去る計画だが、これで移行がはるかに円滑に行えるようになるだろう」と述べている。
米モダンリテールと対談したほかの売り手も、Etsy以外のプラットフォームをテストしたと語っているが、その結果はそれぞれ異なっていた。
2つ目の匿名希望の売り手は、自分のイラストレーションを売るショップを2015年にEtsyに開設した。この売り手は2018年に、Etsyが売り手へのトランザクション手数料を3.5%から5%に増額したとき、ショッピファイに移行した。それから2020年に、自分のショップをビッグカルテルに移すことを試みた。
この匿名の売り手は、ショッピファイとビッグカルテルのどちらでも同じ課題、すなわち売上を生み出すにはインスタグラムやピンタレスト(Pinterest)などのソーシャルメディアプラットフォームでフォロワーを増やす必要があるということに直面した。これは、ショッピファイとビッグカルテルのどちらにも、Etsyのようなマーケットプレイスが存在しないためだ。そして、この売り手には多くのフォロワーが存在せず、すべてのプラットフォームを合わせても5000人未満だった。
この売り手は結局、別の問題のため、昨年Etsyに戻ることを選んだ。国外の、ビッグカルテルではVATの支払いで問題を抱える買い手へのサービスを改善することを希望したのだ。「手数料の増加は対処可能と感じたので、その問題はあまり気にしなくなった」とこの売り手は述べている。
この売り手は次のように説明している。「ほとんどの売り手は、国際的な配送、VAT、パッシブな広告が簡単なことから、Etsyのショップを維持している。しかし、売り手が在庫をうまく整理していれば、ショッピファイ、ビッグカルテル、コーファイ(Ko-fi)などほかのサイトは間違いなく検討の価値がある」。
それでも、Etsyの多くの売り手にとって、別のプラットフォームに飛び移るという考えは不安を抱くものだ。Etsyの売り手のアレックス・キトル氏は次のように述べている。「私はEtsyを離れて自分の店を持つことを何度か考えたが、Etsyに備わっているオーディエンスを失うことはあまりにも大きな損失と感じられる。何年もかけてEtsyのプラットフォームでビジネスを築き上げてきたあとでは特にそうだ」。同氏は2010年に自分のEtsyストアを開始し、2019年にはアートのビジネスをフルタイムで行うため、今までの仕事を辞めた。
同氏は、自分のショップが累積売上高と常連客によって高いスターレーティングを得ていることにも言及した。「この時点で最初からやり直すのは膨大な作業になる」。
しかし、新しい手数料が実施されれば、同氏はEtsy以外のプラットフォームとして以前から考えていたコーファイをテストする計画だ。これはパトレオン(Patreon)と似たクリエイター向けのプラットフォームで、売り手を呼び寄せるために昨年eコマースのオプションを導入したと、同氏は語る。「コーファイはたしかにEtsyよりも簡素だが、手数料は最小限で、セットアップの作業も簡単だ。私はとにかく、人が来ることを望んでいる」。
[原文:‘Coming up short after every sale’: Etsy sellers prepare to strike over increased fees]
Gabriela Barkho(翻訳:ジェスコーポレーション 編集:長田真)
Image via Etsy/Eugenia Mello