コーチとクロックス、ホリデーシーズンのバーチャルストアに投資:eコマース戦略に新たな体験導入の必要性

DIGIDAY

コーチ(Coach)やクロックス(Crocs)といったブランドが、ホリデーシーズンに向けてバーチャルストアに投資を行っている。その目的は、独自のブティックを幻想的に再現することによって、昨年のeコマースサイトのエンゲージメントや売上を上回ることだ。

多くのブランドがバーチャルストアに手を出しているが、これがブランドのホリデー戦略において重要な焦点となるのは今年が初めてだ。11月初旬、コーチは「Feel the Wonder」キャンペーンの一環として、バーチャルホリデーストアを公開した。過去2年間、コーチは小売のバイヤー向けにプライベートなバーチャルストアを開設してきたが、ゲーミングやバーチャルワールドの人気が原動力となり、顧客にもサービスを拡大することに決定した。このバーチャルなコーチのストアには、同ブランドのD2C向けeコマースサイトからアクセスすることができる。

エキサイティングな体験を提供するコーチのバーチャルストア

このバーチャルストアは、コーチのホリデーシーズンのテーマであるノスタルジアを反映している。レトロなギフトショップが特徴となっているほか、ゲーミフィケーションの体験に参加した人だけがアクセスできるシークレットルームもある。その体験では、さまざまな部屋にあるコーチの恐竜のマスコット、レクシー(Rexy)の画像を5点集めなくてはならない。各部屋ではブランドのホリデーシリーズの製品を購入することができるが、顧客はバーチャル体験の開始時に提供されるライブ動画機能を通じて、友人と一緒に買い物も楽しめる。コーチはプレスや店内サイン、独自のソーシャルチャネル、および有料デジタル広告を通じてこのストアをマーケティングしている。この店舗はホリデーシーズンの間中オープンする予定である。

コーチのグローバルブランドマーケティングおよびデジタルエクスペリエンス・バイスプレジデントのレネー・クライン氏は、「コーチは、もっともエキサイティングで革新的な方法で顧客と関わる方法をつねに探している」と語った。「バーチャルストアは、今シーズンのホリデーショッピングをオンラインでよりエキサイティングなものにするために、友人とのショッピングやライブストリーミングなど、独自の体験を促進する機会を提供する」。12月までにコーチでは、インスタグラムのリールにてインフルエンサー主導のライブストリームショッピングシリーズも開始する。

バーチャルストアの買い物客は他のチャネルより多く消費する

市場情報プラットフォームのS&Pグローバル(S&P Global)によると、来年、米国の小売業者はオンライン成長の鈍化と価格競争の激化に直面するという。米国ではホリデーシーズン初期の売上が鈍化しており、サイト訪問と売上を促進するための新たな体験を生み出す必要性が浮き彫りとなっている。S&Pグローバルの報告書に引用されている451リサーチ(451 Research)によると、支出を減らすと予想している消費者の回答者のあいだでは、ホリデーシーズンの支出計画を押し下げるもっとも重要な要因としてインフレが挙げられている。

「ゲーミフィケーションでは、消費者がストアでより多くの時間を過ごし、より多く交流し、最終的にはより多くの買い物をすることが見てとれる」と述べたのは、バーチャルプラットフォームのオブセス(Obsess)の創業者でCEOのネーハ・シン氏だ。同社はバーチャルストアでコーチと提携している。

シン氏いわく、バーチャルストアに関与する消費者は、eコマースサイトのほかの部分に費やす時間と同じかそれ以上の時間をバーチャルストアで過ごしている。オブセスによると、バーチャルストアの買い物客は、基本的なeコマースや実店舗を含む他のチャネルの買い物客よりも20~70%多く消費している。2018年以降、オブセスはバーチャルストアの開設でシャーロットティルベリー(Charlotte Tilbury)やプラダ(Prada)、ラルフローレン(Ralph Lauren)、メイベリン(Maybelline)といった美容ブランドとも提携している。

重要な交流の場となるデジタル世界

バーチャルストアの開設にかかる費用はさまざまだが、物理的な店舗や大規模なマルチプレイヤーゲームで同様のアクティベーションをローンチするのに比べると大幅に少ない。「コストは、対象としたい機能の数とローンチしている市場の数による。だが、当社は基本的にSaaSとしてこれらの体験すべてにソフトウェアのコアを再利用しているため、比較的手頃な価格だ」。

この体験は、コーチにとって出発点に過ぎない。コーチは将来的にはさらに多くのバーチャルストアをホストする計画だ。同社によると、オブセスとの大半のパートナーシップは少なくとも1年であり、複数のストアのローンチが含まれている。

「デジタル世界がコミュニティにとって重要な交流の場となり続けるなか、バーチャルストアは、店員、インフルエンサー、友人や家族の輪など、コミュニティと交流するためのいくつものタッチポイントをバーチャル環境内に提供する」とクライン氏は述べている。

大規模な体験を構築するクロックス

オンライン・ホリデーショッピングを活気づけるためにバーチャルストアに依存するブランドは、コーチだけではない。11月9日には、クロックスもオブセスとの2回目のアクティベーションとして、バーチャル・ホリデーストアをオープンした。クロックスは、シンガーのスウィーティー氏とのコラボレーションのローンチに合わせて、6月により限定的な最初のストアをデビューさせている。シン氏によれば、クロックスの前回のバーチャルストアは、ソーシャルメディアエンゲージメントの業界ベンチマークをすべて上回り、それを受けてブランドはホリデーシーズンに向けてより大規模な体験を構築することになった。

クロックスのD2Cのeコマースサイトにある5つの部屋の体験は、3カ月かけて構築された。その体験には、クイズや限定賞品が当たるゲーム、クロックスのフェイクファー・シリーズの手触りとホリデーシーズンのテーマを伝える4つの部屋が含まれている。小売パートナーによると、クロックスは、顧客が自分の靴をパーソナライズできるジビッツ(Jibitz)と呼ばれる人気のチャームの延長として、デジタル空間でのパーソナライゼーションに注力している。どちらのコンセプトも顧客をブランドの世界観に引き込むものだ。クロックスは1月にNFTをリリースし、9月には「Croctober」のアクティベーションの一環として、バーチャルプラットフォームのZEPETO(ゼペット)とRobloxにローンチした。

クロックスのデジタルプロダクトマネジメントおよびコンシューマーエクスペリエンスのバイスプレジデントであるフェリツ・パピッチ氏は、「ブランドとして、より没入感のあるデジタルファーストの体験を通じて製品から感情へと脱却することに力を入れている」と話す。「従来のチャネルを超えた進化は、消費者とのますます相互的でインタラクティブな関係への扉を開く」。

ユニクロのバーチャルストアの試用例

ほとんどのブランドがオブセスのようなスタジオと提携している一方で、単独で行っているブランドもある。日本のアパレルブランドであるユニクロ(Uniqlo)は、東京の店舗でバーチャルストアのコンセプトの試用を開始し、来年にはヨーロッパと米国で展開する計画だ。ユニクロのコミュニケーションおよびPRのディレクター、マイケル・ザクゼウスキー氏は、オンラインからオフラインへの体験に関するブランドコミットメントの一環として、同ブランドの秋冬シーズンのキックオフのためにこのストアをローンチしたと述べた。

「当社のライフウェア(LifeWear)の特別展示会に直接参加できなかった顧客が、自宅から見る機会を得られた。360度カメラを使って、顧客は実際にその場にいるかのようにストアを探索し、買い物をすることができた」。

[原文:Coach and Crocs are investing in virtual holiday stores]

ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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