Spotify が「Spotifyまとめ」を毎年最大の販促キャンペーンにできる理由:「Cookie無き世界でエンゲージメントを復活させるための解決策になる」

DIGIDAY

ストリーミングプラットフォームSpotifyが仕掛ける販促キャンペーン「Spotifyまとめ(Wrapped)」は、同社における年間最大規模のものであり、ユーザーと同社のマーケティング目標にとって、嬉しい贈り物となっている。ソーシャルメディア内での、そして最近ではロブロックス(Roblox)との融合によって、同社に巨大なリーチの機会を供しており、それがブランド認知度の向上とユーザーベースの拡大にも繋がっている。

Spotifyまとめの意図は実際、認知度の向上にあり、ユーザーデータを活用して、各ユーザーにお気に入りの曲、アルバム、ポッドキャストを提供し、それをアプリ経由で各種ソーシャルメディアの垣根を越えて共有させている。Spotifyによれば、2021年には1億2000万人以上のユーザーがこれを利用した。今年2022年、同社はロブロックス内にSpotifyまとめを進出させており、さらに多くのオーディエンスへのリーチを目指している。

「強力なエンジンのようなもの」

「このキャンペーンの社内優先順位がこれほど高いのには、理由がある」と、Spotifyのクリエイティブ部門グローバルVPアレックス・ボッドマン氏は話す。「たんに、ユーザーベースが日々拡大しているだけではない。嬉しいことに、多くの人が戻って来てくれている」(成長率およびユーザー数についての詳細は、ボッドマン氏は明かさなかった)。

Spotifyの広告支出についても同じく、ボッドマン氏が詳細を明かさなかったため、定かでない。調査会社パスマティクス(Pathmatics)によれば、同社は2022年これまでに、昨年の6600万ドル(約92億4000万円)を少々上回る、7000万ドル(約98億円)近くを費やしている。また同じく調査会社カンター(Kantar)の報告では、2022年1月から9月までに3600万ドル弱(約50億4000万円弱)を広告に投じており、これは2021年の4600万ドル(約64億4000万円)からわずかに減少している。2020年、同社は広告に6300万ドル(約88億2000万円)以上を費やしていた(ただし、カンターの数字には、パスマティクスのそれと違い、ソーシャル支出は含まれない)。

さらに、オーガニックソーシャルのほかに、Spotifyまとめはブルックリン街中のイラスト広告など、OOH広告やインパーソン型のエクスペリエンスも活用している。

「これは強力なエンジンのようなもので、その後押しを受けて、Spotifyリスナーは友人をはじめ、各人のソーシャルで繋がっている皆に向かい、それぞれの愛を思いきり広げることができる。そこが重要なところだ」と、ボッドマン氏は話す。

Spotifyまとめをロブロックスへ

SpotifyまとめはSpotify社内で生まれ、2015年に導入された。以来、Spotifyまとめは多くが待ち望むイベントになっており、たとえばTwitterやインスタグラムを通じて、Spotifyユーザーが口コミマーケティング形式でブランデッドコンテンツをアップしてくれる、とボッドマン氏は話す。そして、ロブロックスに進出した現在、同社はより若い、新たな世代の潜在的Spotifyユーザーにリーチできる機会を手にしている。

「ロブロックスという、さまざまな人々が無作為に入り、Spotifyまとめ体験を発見できる場に進出することで、まったく新たな一連の関係性に向けて扉を開くことができる」と、メタフォース(Metaforce)のパートナー、ミッチ・ラトクリフ氏は話す。2021年、1日当たりのユーザー数が5000万人近くに上るなか、ロブロックスの注目度が新たなオーディエンスへのリーチを狙うマーケター勢の間でますます高まっていることは、すでにDIGIDAYで報告したとおりだ。「これはSpotifyにとって同社ブランドへのエントリーポイントを開くための非常に優れた方法に他ならない」と、ラドクリフ氏は言い添える。

(個人データ保護を巡る動きと、必ずや訪れるCookie無き世界のおかげで)ユーザーデータがますます貴重になりつつある今、SpotifyのSpotifyまとめ戦略は、Apple Musicのリプレイ(Replay)やYouTube MusicのRecapといった物真似を生んでいる。この戦略が有効なのはひとえに、「そのタッチポイントこそがCookie無き世界でエンゲージメントを復活させるための解決策になる」からだと、ラトクリフ氏は話す。

クリエイティブエージェンシー、リバイバル・ハウス(The Revival House)のCEO兼パートナー、トム・ケリー氏もこれに同意し、パーソナライズされたユーザー体験は、極めて有意義であり、個々との関係性が深く、それゆえ非常に共有されやすいと、指摘する。

「これはもともと、Spotifyが完全に独自で創り上げたものだが、いまやカルチャルノーム(文化規範)となっている――だからこそ、ほかのブランド勢も次々に同様の、年末データを提供しようと試みている」と、ケリー氏はDIGIDAYへのeメールで分析した。「これはつまり、無機質なデータに人間性を与え、個々にとって関連性の深いものにするひとつの手段だ」。

この先も、Spotifyにとって重要なマーケティングツール

エンゲージメントの高い自社ユーザーベースを活用することで、Spotifyは信頼の置ける多くのインフルエンサーからなるコミュニティを築いている」と、Z世代を対象とするリサーチ&戦略企業、dcdxの創業者でCEOのアンドルー・ロス氏は話す。「そうしたインフルエンサーによる1対100万のリーチは、地方コミュニティにありがちな100対100万のリーチとはまるで違う。前者のほうが、信頼度が高く、影響力も大きい」と、氏は言い添える。

Spotifyまとめはいまや、そしてこの先も、Spotifyにとって重要なマーケティングツールであり、その理由は、これが認知度を高め、新たなオーディエンスや10代のユーザーにリーチする効果的手段であるからにほかならないと、ボッドマン氏は話す。そして、Spotifyまとめは今後も、同社のマーケティングローテーションの一角を担うことになるだろう、と氏は言い添える。

「再アクティベーションから新規ユーザーに至るまで、すべてにおいてこれは弊社にとって巨大な推進力であり、だからこそ全社一丸となって取り組んでいる」とボッドマン氏。「今後も引き続き、積極的に推していく」。

[原文:Why Spotify makes Wrapped its annual marketing moment

Kimeko McCoy(翻訳:SI Japan、編集:分島翔平)

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