ソーシャルリスニング を強化したロレアルが求めるスピード感:「今日の市場で起こっているトレンドサイクルはとても速い」

DIGIDAY

ロレアル(L’Oreal)は2023年、ソーシャルリスニングを強化し、ビューティートレンドが出現した際にはすぐにキャッチアップできるようにしている。

トレンドを自社の多彩なブランドにいかに反映させるか、かつタイミングを逃さずに活用するにはどうすればよいか果敢に取り組んでいるようだ。

昨今のスピード感に対応するため、社内チームを編成

これを達成するために社内にチームを編成し、従来の広告マーケティングのタイムラインのような数週間から数カ月ではなく、数日以内にトレンドを取り入れたコンテンツ制作を加速させている。

ロレアルのデジタル&マーケティング最高責任者であるハン・ウェン氏は、今後のマーケティング戦略を考えるとき、変化のスピードがこれまでと異なっていることを念頭に置いている。「スピード感がまるで違う。現在の当社の目標は、アルゴリズムやコンテンツプラットフォーム、消費行動をめぐる変化によってもたらされる文化のスピードに合わせて、いかに動くかということに集中している」。

ロレアル傘下のブランドは、トレンドにまつわる質的・量的調査を以前より多く行っていると同氏は説明する。また、同社が利用できるさまざまなトレンドを特定する際に、「どのブランドがそれに最も適しているかを見極めている」と付け加える。

適切な商品やコンテンツを効果的にアピール

たとえば、最近のビューティートレンドがY2Kの美意識に紐づいて、白いアイライナーが復活していることにロレアルは目をつけた。ロレアルのブランド「NYX」は、2000年代初頭に流行したホワイトアイライナーの元祖のひとつであり、このトレンドを取り入れることはブランドにとって理にかなっていると同氏は説明する。

「これがブランドにとって本当に必要なことだと理解するのに何日もかかった」と同氏はいい、「私たちはブランドとホワイトアイライナーのストーリーで、商品の真の姿を見せられる。そのことに気づいてから数日後には、ホワイトアイライナーを使ったクラシックなウォーターラインの描き方や、眉毛の輪郭を描くときの使い方、顔の輪郭を描く方法といったコンテンツを制作することができた」と続ける。

ウェン氏はさらに、「この商品が店舗やオンラインで数日のうちに完売することを通して、エンゲージメントレベルを直接追跡できる。消費者が実際に来店されるその場所で、求めていた商品との出会いを提供するというのは、つまりこういうことだ。適切な商品やコンテンツを消費者が買い物をしたい場所で、効果的にアピールする」と語った。

従来のマーケティングのタイムラインは時間がかかり過ぎる

また同社は、これらの新しいビューティートレンドに関するコンテンツを作成する際に、有料と無料の両方のアプローチを使用している。ただし、広告予算やこのアプローチを成功させるための社内クリエイターの人数について具体的な説明をしなかったため、この取り組みにどれだけの予算を割いているかは正確には不明だ。

「ロレアルの社内チームがトレンドに関連するコンテンツを作成することで、利用価値があるトレンドを認識してから、それに関連するコンテンツを発信するまでの時間を短縮することができる」とウェン氏は説明する。同氏は、従来のマーケティングのタイムライン(エージェンシーへの説明をしてから、エージェンシーからアイデアを提案してもらうといった創造サイクル)には時間がかかり過ぎると付け加えた。

「私たちは、このサイクルを数日に短縮する」と同氏は言う。「もし今、消費者がY2Kの美学について話しているときに、1年後に私たちが現れたら、この列車に完全に乗り遅れたことになる。そのためには、まず私たちが耳を傾けるところから始めなければならない。加えて、非常に迅速に活動できるような能力を社内に備えないといけない」。

さらに、Z世代の消費者が「洗練され、完璧で、過度にコントロールされたコンテンツを求めていない」という事実が、ロレアルのブランドがコンテンツを制作し、トレンドを素早く取り込むのに役立っていると同氏は指摘する。

トレンドはクリエイターによってもたらされる

ブランドコンサルティング会社プロフェット(Prophet)のパートナーであるユーニス・シン氏は、「ロレアルのような企業が常に耳を傾けることは理にかなっている」といい、「とくに美容分野では、今日の市場はトレンドによって多くのことが左右され、そのトレンドはクリエイターによってもたらされるからだ」と説明する。

また、「今日の市場で起こっているトレンドサイクルは、とても速く起こっている」と同氏は指摘し、「その瞬間にトレンドに乗らなければならない。3カ月後にキャンペーンを展開しても、消費者が次のトレンドに乗り遅れるようでは、元も子もない」と語った。

逆風の吹く経済状況においても、「ロレアルは現在、支出を減らす計画はない」と意気込むウェン氏。「美容というカテゴリーは、非常に回復力が強いことは何度も示されてきた。2023年に入ってもこの状況は変わらず、私たちは将来の成長について非常に強気だ。ブランドとすべてのチャネルに通常どおり投資していく予定だ」。

[原文:L’Oreal uses social listening, in-house teams to tap into beauty trends ‘at the speed of culture’

Kristina Monllos(翻訳:SI Japan、編集: 島田涼平)

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