クローガーとアルバートソンズが合併:Amazon、ウォルマートに次ぐ リテールメディア 企業になる可能性

DIGIDAY

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食料品店チェーンのクローガー(Kroger)とアルバートソンズ(Albertsons)は、今回の合併案で、両社のファーストパーティーデータを結合し、小売店舗が増えることで、リテールメディア・ネットワークの現状を一変させる可能性がある。

クローガーは10月14日、アルバートソンズを246億ドル(約3兆7100億円)で買収する意向を発表した。これは米国のスーパーマーケット業界史上最大級の取引のひとつだ。両社はプレス声明で、「両社が組み合わさると、全米で約8500万世帯に拡大された国内オーディエンスと関わることができ、リテールメディア(Retail Media)、クローガーパーソナルファイナンス(Kroger Personal Finance)、カスタマーインサイト(Customer Insights)など、別の収益ビジネスの成長が促進される」と、述べている。

食料品シェアはウォルマートに続く全米2位に

小売業者が自社ウェブサイトをメディアプラットフォームに転換するという発想は新しいものではない。しかし、eコマース大手のAmazonが巨大な広告ビジネスを作り上げることに成功したため、この5年間でより多くのブランドからの強い関心と注目を集めるようになった。現在、Amazonはリテールメディアの広告分野をリードしており、昨年は310億ドル(約4兆6800億円)の広告収益を生み出した

専門家によると、クローガーとアルバートソンズの契約はリテールメディアから多くの注目を集め、合併後の新会社は、ブランドにより魅力的な広告サービスを提供し、ターゲティング広告に役立つより幅広いデータを提供することにより、リテールメディア分野で2番目に大きな企業であるウォルマート(Walmart)にも立ち向かうことが可能になるかもしれないという。ウォルマートは昨年初めて、メディアおよび広告事業の収益を公開し、その総額が21億ドル(約3171億円)であることを明らかにした。

「リテールメディアは、小売業者がもたらすデータの規模に基づいて勝敗が決まるゲームだ」と、スイフトリー(Swiftly)の最高テクノロジー責任者を務めるショーン・ターナー氏は、米モダンリテールとのインタビューで述べた。スイフトリーは、ファミリーダラー(Family Dollar)や、ラッキー・スーパーマーケッツ(Lucky Supermarkets)、セーブマート・スーパーマーケッツ(Save Mart Supermarkets)などの小売業者と連携し、自社のウェブサイトやアプリを強化するためのテクノロジープラットフォームだ。「この新しい事業体(クローガーとアルバートソンズ)は、アルバートソンズとクローガーの両方が保有していたリーチ、売上、およびデータ資産のすべてを組み合わせて、さらに強力な広告事業体を形成することができる」と同氏は述べている。

ニューメレーター(Numerator)によると、米国における食料品への出費の9.9%はクローガー、5.7%はアルバートソンズが占める。すなわち、提案される事業体が、米国における食料品への出資の15.6%を占め、20.9%の市場シェアを握るウォルマートに次ぐ2番目の大手企業になる。

リテールメディアにおける優位性

クローガーがはじめてリテールメディアへの参入を試みたのは2015年、テスコ(Tesco)のデータ分析ビジネスであるダンハンビー・ユーエスエー(Dunnhumby USA)を買収したときだ。同社は、これを拡大するために2017年には精密マーケティング部門を開設し、自社のウェブサイトやアプリ全体でターゲティング広告を行っている。同社は数年にわたってこの分野をさらに重視し、ブランドがデータにアクセスしやすくし、ロク(Roku)やピンタレスト(Pinterest)などのプラットフォームと提携して、リーチを拡大した。同社は昨年、精密マーケティング部門で約2000のブランドと協力していることを明らかにした。

一方、ライバルのアルバートソンズがリテールメディア分野に参入したのはごく最近のことだ。同社は昨年11月に自社のリテールメディア・ネットワークを立ち上げ、シトラスアド(CitrusAd)やマークル(Merkle)などとの提携により、自社のウェブサイトやアプリにさまざまな広告を配信できるようにした。

食料品は購入頻度が高く、食料品店は顧客がどのような買い物をするかについて、ほかの種類の小売業者よりも多くのデータを得られることから、広告主にとってより魅力的な分野になってきた。食料品のすべてまたは一部をオンラインで購入する利用者が増えたことで、顧客が購入する商品に関するデータを収集する能力はますます高度になっている。フォード・メディア・インスティテュート(Food Media Institute)の年次食料品ショッピング動向レポートによると、昨年調査対象になった買い物客の29%は、毎週オンラインで食料品を発注していた。

「食料品のeコマースはリテールメディアの基礎だ」と、インサイダーインテリジェンス(Insider Intelligence)で小売およびeコマースのプリンシパルアナリストを務めるアンドリュー・リプスマン氏は述べている。

同氏によると、クローガーの取引の約97%がロイヤルティカード会員プログラムを経由しており、ロイヤルティカードのデータの非常に高い信頼性から、すでに大きな競争優位性を得ている。

また、ターナー氏によると、クローガーの強みは、ブランドに対して正確かつパーソナライズされた顧客データを提供し、測定可能な効果を生み出すことに特化した同社の精密マーケティングプログラムにもあるという。

実店舗を重要視する動き

クローガーとアルバートソンズが合併した新しい法人は4996店舗、配送センター66拠点、製造施設52拠点、薬局3972軒、ガソリンスタンド2015店舗を抱えることになり、実店舗数ではウォルマートをも上回る。両社はこの数を利用して、リテールメディア内に明確に「より多くの影響力を作り上げる」ことができるだろうと、ターナー氏は語る。

リプスマン氏は、リテールメディアの将来はますます実店舗に依存するようになっていくと認めている。これは、クローガーとアルバートソンズから生まれる新しい法人の優位点となる。「このデータをオフライン販売から抽出してターゲティングとアトリビューションに利用できるのは大きな利点だ」。

ターナー氏は、この合併が、自社顧客とのデジタルエンゲージメントに与える影響を懸念している米国の小規模な地域食料品店チェーンにとって、「警鐘」になる可能性があると指摘している。

「デジタルの観点から、非常に強力な競争相手が生まれたことになる」とターナー氏は語る。これまで、クローガーとアルバートソンズの店舗が重なる地域に居住しているeコマース食料品店の買い物客は、食料品をオンラインのどこで購入するかを決めるとき、インスタカート(Instacart)、クローガー、アルバートソンズのどれかを選ぶことが多かった。「それが今になって突然、ひとつの法人とインスタカートに変化したわけだ」と同氏は述べている。

リプスマン氏によると、最終的には、リテールメディアは急成長するビジネスの収益源であり、マクロ経済環境が厳しいなかで、クローガーとアルバートソンズに利益をもたらす可能性があるとのことだ。同氏は次のように述べている。「私は、デジタル広告の経済がすべてを変化させたと思っている。これによって、企業の収支決算における収益性が完全に変化するかもしれない」。

[原文:What the Kroger-Albertsons merger means for the retail media landscape]

VIDHI CHOUDHARY(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Kroger

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