Shopify、ショッパブル動画でYouTubeとタッグ:米国におけるライブコマース投資の是非

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eコマース大手のShopify(ショッピファイ)は、収益性の高いライブストリームコマース市場において競合に勝利するため、出品者向けの新サービス、YouTubeショッピングを7月19日に公開した。

2018年から始まったGoogleとの取り組み

この新しい統合により、Shopifyの出品者は、YouTubeのライブストリーミング、動画、ストアフロントというの3つの方法により、あらゆるの商品を販売できるようになる。Shopifyの売り手は、YouTubeのライブストリーム中の主要なポイントで商品をタグ付けしたり、ピン留めできるようになる。すべての売り手のYouTubeチャンネルには新しいタブが追加され、すべての商品が表示される。また、売り手が作成したYouTube動画については、それぞれの動画の下にある商品棚に、その売り手の商品の一部コレクションが表示されるようになる。さらに出品者は、これらのライブやオンデマンドの動画のパフォーマンスを、Shopifyの管理画面から直接確認でき、マルチチャネルの売上の全容を把握することができる。

Shopifyの商品ディレクターであるアミール・カバラ氏は、米モダンリテールへのメールでの回答で、「Googleは当社の出品者にとって、新しい消費者を見つけ出すためのもっとも重要なチャネルのひとつだ」と述べている。「我々はGoogleとのパートナーシップにより、Googleチャネルを改良し、出品者の販売プロセスを合理化し続けている」と、同氏は付け加えている。

カバラ氏は次のように述べている。「この新しいYouTubeショッピングとの統合により、Shopifyのクリエイターや出品者は自分のオンラインストアを、YouTubeと直接統合することができる。Shopifyは出品者の小売運用システムとして機能するため、商品情報はYouTubeを含むすべての販売チャネルで自動的に同期され、出品者は、商品の在庫から、注文、顧客の詳細まで、ビジネスの全体を一括して把握できるようになる」。

ShopifyとGoogleの統合は年々進化し、2018年には出品者がShopify管理画面で、広告やGoogleショッピングのキャンペーンを直接設定できるものだったのが、現在では売り手の商品をGoogleの検索エンジンに表示させるものになった。カナダのテック大手であるShopifyは最近、Googleと提携し、Google検索、マップ、画像、レンズ、YouTubeにわたり売り手の商品をすべて統合した。今回の最新の統合は、上記の統合に加えて、「YouTubeでのオンサイトチェック」などの機能が追加された。これにより、米国の消費者はプラットフォームを離れることなく、Shopifyの一部の売り手から商品を購入できる。

ライブショッピング需要を見込んだ投資

Shopifyはこの1年間にわたり、ライブショッピングとインフルエンサーのコマースを成功させようと、最近の数々の発表を行った。今年3月には、インフルエンサーからのソーシャルメディア・トラフィックを収益化するため、リンクポップ(Linkpop)というリンクインバイオのツールを導入した。また同社は、ブランドが自社のインフルエンサーマーケティングプログラムを管理するためのソフトウェア新興企業であるダブテイル(Dovetale)などを買収し、顧客との直接的なつながりを構築するための新しい投資方法を模索している。

このような新しい動きは、TikTokなどの競合他社がライブストリームで惨憺(さんたん)たる売上を記録し、米国と欧州においてライブeコマース構想の拡大計画を白紙に戻したと報じられた時期に進められたものだ。

2021年10月にShopifyが委託したフォレスター(Forrester)の調査によると、ライブショッピングの需要は増加しつつある。この調査では、米国の消費者の22%が、今年のライブストリームショッピングイベントの一部として購入を行うことを計画していると回答している。これは、昨年のライブショッピングイベントに参加したと回答した消費者の割合13%を大きく上回るものだ。

消費者が本当に求めている機能なのか

しかし依然として、一部の専門家は近いうちに米国がライブショッピングを一斉に取り入れるとは信じていない。

マーケットプレイスパルス(Marketplace Pulse)の創設者でCEOを務めるジョーザス・カジウケナス氏は次のように述べている。「総合的に、ライブコマースは興味深い実験の場であり続けるだろうが、消費者が実際にそれを見たがっているという証拠はほとんど見つからない。YouTubeは何年にもわたってさまざまなショッピングの実験を試みているが、同社はそれがうまく機能する方法をいまだ見つけ出していない。このため、この分野にあまり期待すべきでないというのが私の考えだ」。

「Amazonはライブコマースを実験している最大規模の小売業者だが、同社のその精彩を欠いたコンテンツは恥ずかしく、Amazonの買い物客の多くは、それが存在していることすら知らない」と、同氏は述べている。「ライブコマースを中心とした新興企業も存在するが、これらの企業は商品の選択肢が少ない傾向があり、ユーザーからも、ライブコマース用に別のアプリを使用することへの大きな需要があるかどうかは不明瞭だ」と同氏は付け加えている。

成功の鍵はインフルエンサーの活用?

しかし、誰もがカジウケナス氏のように悲観的なわけではない。

メディアバイイング事業者のグループエム(GroupM)のインフルエンサーマーケティング部門であるインカ(INCA)でグローバル商品ディレクターを務めるニラム・アトダリア氏は、ライブコマースがインフルエンサーマーケティングだけではなく、ソーシャルメディアマーケティング全体で、より大きな役割を果たすと予測している。

同氏は次のように述べている。「ライブショッピングが、アジアの多くの地域のように正しく行われれば、eコマースプラットフォームに巨大な影響を持つようになるだろう。ライブショッピングを成功させるための鍵のひとつは、熱心なオーディエンスがついており、自分たちのフォロワーとコマースプラットフォームとを結合できるようなインフルエンサーを活用することだ。インフルエンサーがShopifyだけでなくAmazonでも重視されつつあるのはその理由からだ。ほかの大手小売業者が同様な戦略を採用しても驚かない」。

しかし、カジウケナス氏は、他国で起きたようなライブストリームショッピングの革新が米国でも起きるのかどうかについてはそれほど確信を持っていない。「他国で成功しているeコマースの機能を米国にも持ち込めるという考えは、必ずしも正しいとは限らない」と、同氏は付け加えている。

「欧米の企業は、ライブストリーミングを成功させるためのコンテンツの品質、商品の選択、および消費者との接触ポイントについて、正しい公式をいまだ見つけ出していない。コンテンツが貧弱か、商品が興味を引くものでないか、またはエクスペリエンス全体が、ユーザーが保有していない別のアプリで動作する、のいずれかだ」と、同氏は述べている。

[原文:Shopify’s most recent YouTube integration aims to promote live shopping]

Vidhi Choudhary(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:猿渡さとみ)
Image via Shopify

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