多様化する ソーシャルメディア に苦心するクリエイターたち:のしかかる、すべてのプラットフォームを使うべきという強迫観念

DIGIDAY

ソーシャルメディアが進化し続けるなか、プラットフォームたちは常にその焦点を変え、動画へシフトしてみたり、あるいは動画からシフトしてみたりしている。アルゴリズムやオーディエンスも変転を繰り返し、クリエイターたちはその渦中に身を置きながら、絶え間ない変化の波への対応に苦慮している。

数年前の話なら、コンテンツクリエイターたちはひとつのソーシャルメディアプラットフォームに絞って、コンテンツ戦略を考えればよかった。しかし、ある5人のクリエイターたちによると、ソーシャルメディアプラットフォームの増殖と市場の断片化によって、オーディエンスがどこにいるのか把握しにくくなったという。このような逆風と闘いながら、活動する複数のプラットフォームのそれぞれで存在感を示すことは、おそろしく困難だと彼らは話す。

プラットフォームの多様化による悩み

コスプレイヤーでコンテンツクリエイターの「スナーキージェイ」ことジェイ・フェット氏は、2016年にインスタグラムのアカウント(現在のフォロワー数は6万人)を開設したが、本腰を入れはじめたのは2018年のことだった。さらにYouTubeでもスターウォーズのレビューを始めたが、現在ではスターウォーズに限らず、ほかのスーパーヒーローのシリーズやブランドも扱っている。同氏がこの多角化戦略を始めた当初、フォロワーによるフォロー解除が相次いだ。

同氏はこう話す。「YouTubeのコンテンツを多角化するなら、できるかぎり早期にやるべきだと思った。早いうちから、オーディエンスに自分の活動をすべて知っておいてもらう。後から新しいことを始めると、彼らに違和感を抱かせてしまうと考えた」。なお、同氏はYouTubeでの収入(具体的な金額は非公開)を考えて、企業との連携はしていないという。

進化するソーシャルメディアへの対応を迫られているのはフェット氏だけではない。シンガーのリアーナ・ファイアストン氏、Netflixの「ザ・サークル」に出演するサミー・シマレリ氏、TikTokスターのタヤ・ミラー氏、YouTubeパーソナリティのロニー・ヘイズ氏、さらには腸活ドリンクをD2Cで販売するポッピー(Poppi)の創業者であるアリソン・エルスワース氏らも同様の悩みを抱えている。

彼ら彼女らにとって、コンテンツ制作のもっとも難しい側面は、再生回数、コメント数、チャンネル登録者数、いいね回数など、これまでに積み上げてきた実績が一瞬にして失われ、その成功の再現は不可能かもしれないという恐怖だという。

アルゴリズムはさまざま

ファイアストン氏の場合、Twitterとインスタグラムは個人的なコンテンツの配信に使っているが、最大のフォロワー数(70万人)を獲得しているのは音楽にフォーカスしたTikTokページだという。一方で、TikTokに関しては不安もあると同氏は話す。「TikTokに投稿した動画の成否が、気持ちの浮き沈みに大きく影響するのが問題だ。これまで大成功してきた分、うまくいくと思って投稿した動画がうまくいかないと、何が間違っていたのだろうか、自分のどこが悪かったのだろうかと考えてしまうのだ」。

コンテンツクリエイターたちは、すべてのプラットフォームでコンテンツを発信すべきという強迫観念にかられると口をそろえる。フォロワーが使っているアプリで彼らに語りかけ、さらには旧来のアプリだけでなく、BeReal(ビーリアル)やHive(ハイヴ)のような新興のアプリでも新規のフォロワーを開拓するには、すべてをカバーする必要を感じるのだという。しかし、すべてのプラットフォームが自分たちに都合のよいアルゴリズムを採用しているわけではなく、ニッチなオーディエンスに対して自分のコンテンツが必ず表示されるとも限らない。

ソーシャルメディアマーケティングと音楽アーティストのマネジメントを手がけるクラウドサーフ(Crowd Surf)の創業者で、最高経営責任者(CEO)を務めるキャシー・ペトレイ氏は、データと広告ツールが経時的に改善されてきた点に言及する。「ターゲティングの精度が極限的に上がった結果、かつてないほどニッチなカルチャーやユーザー層に手が届く。少なくとも、こうした人々を認識し、ターゲティングすることがきるようになった」。

プラットフォームの相性と人気を考える

ロニー・ヘイズ氏は2015年に「ザ・ウォーキングデッド」にフォーカスした「メイク・ア・パス・プレゼンツ(Make a Path Presents)」というYouTubeチャンネルを開設した。現在のチャンネル登録者数は11万2000人であり、今は映画全般のレビューを投稿している。開設から数年後、同氏は「ザ・ウォーキングデッド」について語り合うためのFacebookグループを作り、さらについ最近、ディスコード(Discord)にもチャンネルを作成した。Facebookとディスコードでは収益化はおこなっていないという。

クリエイターが変容するソーシャルメディアプラットフォームに対処する際、検討すべき点が2つあると同氏は指摘する。ひとつは、配信するコンテンツ、およびプラットフォームの強みや構造との相性を考えること。同時にその限界や、そこでコンテンツがどう消費されるのかを検討することだ。そしてもうひとつは、プラットフォームの人気度だという。

「個人的に関心のないプラットフォームであっても、もしそのプラットフォームがあなたにとって望ましいユーザー層から絶大な支持を得ているなら、その有用性を過小評価してはいけない」と同氏は話す。

重要なのは自分を偽らないこと

一方、シマレリ氏の話では、「ザ・サークル」がNetflixで公開されると、フォロワーが飛躍的に増えたという(ファーストシーズンの公開から数カ月で、インスタグラムのフォロワーが100万人を超えた)。ところが、2022年に子どもが誕生すると、同氏はコンテンツ戦略を自身の日常を伝える投稿へと一変させた。現在はYouTubeとTikTokでも定期的に情報発信しているが、コンテンツのテーマを変えた途端に男性のフォロワーが減ってしまったという。

「私のフォロワーはオンリーファンズ(OnlyFans)風のコンテンツを期待しているのだと思う。しかし、実際に私のページで目にするのは息子や犬や猫と並ぶ私の笑顔であり、『期待と違う』と感じるのだろう」。同氏はそう語り、「プラットフォームごとにオーディエンスの力学は異なるのだから、それもしかたがない」と続けた。

TikTokスターのタヤ・ミラー氏(フォロワー数は480万人)もオーディエンスの期待という同じ問題に直面しているが、「重要なのは自分を偽らないこと」だと感じているという。「常に特定のオーディエンスの期待に応えようとしてきたが、自分はクリエイターであり、まわりの期待に応えるだけというのは違うと思うようになった」と同氏は話す。「それはオーディエンスに対しても誠実ではない。彼らが見ているのは本当の私ではないのだから」。

シマレリ氏は、インスタグラムはビジネスアカウント、TikTokとYouTubeは私的なアカウントと考えている。ファイアストン氏とミラー氏と同じように、シマレリ氏も「ブランドとの連携を検討する際は、自分を偽らないコンテンツを発信したい」と述べている。

また、「企業との連携であまりにも多くの縛りがある場合、たとえば私はこういう音楽を使うべきとか、これはこうすべきとか、あるいはこれを着るべき、こう発言すべきと決められてしまうと、それはもはやありのままの私とはいえない。そういうことはやりたくない」と言い添える。

絶え間ないインスタグラムのアルゴリズム変更

多くのプラットフォームが定期的にアルゴリズムを更新するなか、クリエイターたちはインスタグラムがおこなう絶え間ない変更はとくに厄介だと口をそろえる。SNS管理ツールのフートスイート(Hootsuite)によると、インスタグラムは2022年7月の変更でアプリの各部分に異なるアルゴリズムを採用した。つまり、「フィード」「発見」「リールズ」のアルゴリズムはそれぞれ異なるということだ。

これは、アプリの機能やタブによってユーザーの使い方が異なるためだ。たとえば、新しいコンテンツを探しているなら、普通は「発見」タブを使う。親しい友人が投稿する「ストーリーズ」にはいかない。

エルスワース氏は、自身のコンテンツ戦略も常に変化しているため、インスタグラムのアルゴリズム変更にストレスを感じることはないという。「パフォーマンスの低いコンテンツを日単位または週単位で追跡する必要はある」と同氏は話す。以前に米DIGIDAYが報じた通り、インスタグラムはTikTokに対抗するために「リールズ」の機能を推進したが、「この戦略から転換する気配も伺える」と同氏は続けた。

タレントマネジメント会社のリトルレッドマネジメント(Little Red Management)を創業し、CEOを務めるコートニー・バグビー氏は「このアルゴリズムの一貫性のなさは、インスタグラムとクリエイターの協力関係にも影響しうる」と述べている。また、「どの部分に注力するのか判断するのはひどく難しい。ひとつの投稿がいくつものフィードに表示され、あちこちに紛れて目立たなくなることもあるからだ」 という。

[原文:Content creators say they struggle to keep up with their audiences as social media platforms evolve

Julian Cannon(翻訳:英じゅんこ、編集:島田涼平)

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