「ライブコマースは、とてつもない巨大マーケットになる」:ユニコーン企業 ワットノット創業者 G・ラフォンテイン氏

DIGIDAY

トレーディングカードやコミックブック、玩具などのコレクター向けプラットフォーム、ワットノット(Whatnot)は、創業からわずか2年足らずで、米国でもっとも価値の高い独立系ライブストリームショッピング企業となった。同社は先ごろ、ベンチャーキャピタル企業からシリーズCラウンドで1億5000万ドル(約165億円)の資金調達に成功し、企業価値を15億ドル(約1650億円)に高めた。

これにより、ワットノットは米ライブストリームショッピング業界初のユニコーン企業となった。同社の支援者には、人気YouTuberのローガン・ポール氏、有名DJのスティーヴ・アオキ氏、NFLトップ選手のデアンドレ・ホプキンス氏とボビー・ワグナー氏、ベンチャーキャピタルのYコンビネーター(Y Combinator)やアンドリーセン・ホロウィッツ(Andreessen Horowitz)など、錚々たる名前が並ぶ。

ストリートファッションとリセールサービスの人気がライブショッピングで爆発的に高まり、競争が激化するなか、同社はすべてをまかなえる、いわゆるオールインワンなプラットフォームを目指している。つまり、数千ものカテゴリーを揃え、多種多様なマニアやコレクターが買い物を楽しめる場だ。実際、同社はすでに今年、ビンテージファッションおよびスニーカー分野に進出している。また、その拡大の一環として、調達した資金でエンジニアおよびマーケターを数十人単位で増員していくという。

具体的な数字は明らかにしていないが、ワットノットによれば、同社アプリの月間ユーザーは数十万人おり、セラー数も数千に上るという。

このたび、米モダンリテールは同社の共同創業者グラント・ラフォンテイン氏に取材し、ライブストリームによるeコマースの未来、投資家を惹きつける要素、ライブ動画界の覇権も狙う同社の企業アイデンティティをどのように維持していくのかについて、話を聞いた。

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――ライブストリームショッピング業界は、外部の目にはニッチ市場に見えます。投資家は我々には見えない何に注目しているのか?

惹きつける要素はふたつある。投資家はシンプルだ。彼らはリターンを、そして非常に大きなマーケットを追い求める。ライブストリームショッピングはいまだ米国および欧州マーケットではニッチな存在だが、今後5年から10年のうちにメインストリームになると、私を含め多くが確信している。

この業界もほかのテック勢の流れを追っているように見える。たとえば、巨大インターネットプラットフォーム勢も、多くはもともと狭い分野の、つまりニッチな存在であり、そこから外に向けて広がっていく。YouTubeもTwitch(ツイッチ)もFacebookも、ご存じのとおり、もともとはアイビーリーグの学生や卒業間もない若者たちが立ち上げたものだった。

それに、ライブショッピングはほぼすべてのカテゴリーに通用するフォーマットのひとつ、という気もする。ほぼすべてのカテゴリーがライブストリーム界に存在する世界になれば、それはすなわち、とてつもなく大きなマーケットにほかならない。投資家はそこに注目している。

また、こんな興味深い事実もある。ライブストリーミングショッピング界最大のライバルといえば、間違いなくQVCとHSN(ホームショッピングネットワーク)であり、どちらも90億~100億ドル級(約9900億~1兆1000億円)の企業だ。でも実は、QVCはコレクターズアイテムからその歩みを始めた。つまり、歴史的にもそういう流れがある。

もちろん、投資である以上、彼らはリターンを求める。ただ、その構図はポップカルチャーにもあてはまるし、それはインフルエンサーやセレブたちにも十二分に理解できる。たとえばアスリートなら、自分でも気づかないうちにスポーツカードやいわゆるメモラビリア(記念品)に大いに関わっているわけで、投資とリターンの構図はそのごく自然な延長線上にあると言える。

――新カテゴリー進出を支える戦略は?

我々はコレクターとマニアにフォーカスしている。つまり、商品構成は彼らの希望から逆算する形で考えている。これまでにローンチしたものはほぼすべて、オーディエンスから求められたものだ。スポーツカードも、コミックブックも、アクションフィギュアも然り。それこそが、各分野に進出を決めた原動力なんだ。逆に言うと、彼らがそうした品々を愛していないのであれば、我々が提供するものは何もない。

いまはビンテージファッション、アクションフィギュア、スニーカーに投資している最中であり、まもなくNFT分野にも進出する。

――ワットノットの収益構造は? アプリ内広告を導入する計画は?

現在の収益は、各取引の手数料8%だけだ。多くのユーザーがうちのアプリに長時間を費やしてくれている。ユーザー1人あたりの1日の動画視聴時間は、平均で1時間を越えている。

それだけのエンゲージメント率があれば、広告ビジネスも確立できるだろう。ただ、それは将来的な話であり、いま現在は投資していない。

――小規模アプリからYouTubeやTikTokといった巨大プラットフォームに至るまで、ライブストリーミングに数多くの選択肢があるなか、ユーザーを維持していくための計画は?

排他性を導入するつもりはない。我々のセラーやバイヤーにYouTubeやFacebookをはじめ、ほかのプラットフォームの利用を禁じる、といったことはしたくない。彼らの多くにとって、重要なディストリビューションチャネルだからだ。

誰もが巨大テック企業や大手ライバルとの競合を恐れている。しかし、歴史が証明しているとおり、彼らは我々のような企業を潰しはしない。急成長を遂げたコンシューマー向けスタートアップで、巨大テック企業に潰されたところは、これまで1社もない。突き詰めればそれは、ライブストリームショッピングを軌道に乗せるのは、それに近いすべてのソーシャルコマースの場合も含めて、非常に難しい、という事実に行き着く。ライブストリーム動画に「購入」ボタンを付ければ済む、というような単純な話ではない。

過去に遡れば、いくつか具体例が見つかる。eBay(イーベイ)の創業当時、王者はポータルサイトだったヤフー(Yahoo!)であり、後者は前者を真似てヤフーオークション(Yahoo! Auction)を始めた。少々時間を早送りすると、たとえばGoogleがGoogle+(グーグルプラス)を立ち上げたのは、Facebookがテック企業として台頭してきたときのことだった。最近のSnapchatも然りで、人々はFacebookがストーリーズ(Stories)で前者を駆逐すると思っていたが、そうはならなかった。

――調達した資金の使い途は?

大部分は人員増強に充てる。エンジニアチームを立ち上げ、マーケティングチームも立ち上げる。両グループの仕事は? 前者はプロダクトの改善にフォーカスし、エンゲージメント率を高める機能を統合していく。後者はもちろん、カテゴリーのさらなる拡大に注力する。カテゴリーは数千に増やすつもりだ。

同時に、ライブ動画コンテンツおよびオリジナルシリーズ制作にも投資していく。

――ライブストリーム業界の今後は?

ライブストリームショッピングは、マーケットとして見れば、まだまだ初期段階にあると思う。今後、さらに多くの企業が進出してくるはずだ。大手テック企業勢も何かしら仕掛けてくるだろう。業界として確固たるものになるかどうかは、まだ何とも言えない。しばらくは、ダイナミック(動的)な市場であり続けるだろう。

個人的に確信しているのは、ライブストリームおよびソーシャルコマースが今後、米国および欧州においてとてつもなく大きな存在になる、という点だ。箱詰めで送付できる物品のリテール市場は現在約2兆7000億ドル(約297兆円)だが、オンラインはそのうちの5000億ドル(約55兆円)でしかない。ただ、その割合はおそらく一変する、オンライン売買が数兆ドル規模になる日がいずれ訪れるのは間違いない。そして、ライブストリームショッピングはその潮流に、楽しさという側面を通じて、上手く乗れるはずだ。

5年から10年後には、人々がニッチを含め、ありとあらゆるカテゴリーで楽しめる巨大マーケットになっていると思う。先駆者の1社として、米ライブストリームショッピング界最大の独立系プラットフォームとして、我々はこの分野の中心的存在になれる位置にいると、確信している。ただし、独立系企業の立ち上げを支援するB2Bにせよ、この業界に進出してくるさらにニッチな者たちにせよ、さまざまな企業や人々が登場してくるのも間違いない。

[原文:‘A monstrous market’: Whatnot co-founder Grant Lafontaine on what’s next for the livestream shopping unicorn

Saqib Shah(翻訳:SI Japan、編集:戸田美子)
Image via Whatnot

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