シャワーヘッドのジョリー、初年度売上420万ドルに:D2Cの限界に直面するブランドが増えるなか、成長と黒字化を両立

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フィルター付きのシャワーヘッドを販売しているジョリー(Jolie)は美容品の新興企業であり、D2C新興企業ではない。2021年10月に創業して以来、同社の商品はAmazonや、グウィネス・パルトロウが主宰するライフスタイルブランド「グープ(Goop)」を通じて、また、一部のヘアサロンで販売されている。

しかし、ジョリーはCEOのライアン・バベンジェン氏が前職の新興企業、すなわちデジタルネイティブのスニーカーブランドのグレイツ(Greats)で直面した課題のいくつかをきっかけに誕生したものだ。グレイツは2019年、収益が約1300万ドル(約16億8000万円)に成長した後、靴ブランドのスティーブマデン(Steve Madden)に買収されたが、その収益の大部分はグレイツのD2Cチャネルによるものだった。

バベンジェン氏は、デジタルネイティブの新興企業の規模拡大を試みるとき、何がうまく働き、何が働かないかについて学んだ知識を武器に、ジョリーで新しいカテゴリーを攻略することをめざしている。具体的には、マルチ流通モデルが成功の鍵で、さらに人々が利点について語りたくなるような商品を販売し、ユーザーが作成したバイラル性の高いコンテンツを利用することも重要だ。ジョリーは2021年12月に開業してから、最初の丸1年で400万ドル(約5億1600万円)以上の売上を上げ、しかも黒字を維持した。この若いスタートアップの軌跡は、顧客獲得コストの高騰などD2Cモデルの限界に直面しているブランドが増えるなか、ますます多くのブランドが見習いたいと考えているものだ。

新興企業を立ち上げる際の3つの原則

「当社の目的は、収益性のある企業を作り上げることだった。そして最初の年で黒字を達成した。これからも同じ方法でビジネスの運営を続けていく」と、バベンジェン氏は述べている。

バベンジェン氏は、元コンサルタントであるアルヤン・シン氏とともにジョリーを設立した。最初の数カ月はほぼ自己資金でビジネスを行ったが、「SAFEノートという形で、少量の非機関投資家向けの資金を引き受けた」という。

バベンジェン氏は、次の新興企業のアイデアを探しているとき、指針となるフレームワークとして3つの原則を考えていたと、筆者に語った。まず、世界共通のサイズ感の商品を売りたいということ。「一度でも、オンラインを中心としたフットウェアブランドを作り上げた経験があれば、複数の面を持つ商品でビジネスを構築することの非効率性について思い知るだろう」と同氏は述べる。同氏は、次は人々の日常生活にフィットするような商品を作りたいと考えていた

そして最後に、もっとも重要な点として、同氏は見栄に特化した商品にしたいと考えた。「見栄は、消費決定を推進する大きな要因だと思う」と、同氏は付け加えている。

そこで、同氏はシャワーに着目した。具体的にはシャワーヘッドだ。ジョリーの売り文句は、美はきれいな水から生まれるというもので、同社はそれに合わせて、最適な圧力ときれいな水の両方を供給できるよう設計されたシャワーヘッドフィルターを設計した。

「当社は、顧客の物理的な外見と健康の両方に恩恵をもたらす。つまり、非常に強力な商品だ」と、バベンジェン氏は述べている。

このフィルター付きシャワーヘッドの販売価格は、サブスクリプションに申し込むと148ドル(約1万9100円)で販売され、交換用フィルターを3カ月ごとに33ドル(約4260円)で入手できる。顧客がサブスクリプションにサインアップしない場合、シャワーヘッドの価格は165ドル(約2万1300円)だ。

その結果、ジョリーの顧客ベースの80%近くは定期購入者で、これまでのところ解約率はわずか3%にすぎない。同社の収益の約12%は、Amazonからのものだ。

UGCを想定したマーケティング

ジョリーは最初の1年間、初年度の顧客獲得に、GoogleとFacebookなどの有料広告に頼っていたが、有料マーケティング戦略はユーザー作成コンテンツ(UGC)からはじまると、バベンジェン氏は述べている。

「オーガニックで大きな話題がすでに起こっていない場合、有料広告は極めて困難なチャネルになる」と、同氏は述べる。

ジョリーの顧客は、同社が開業した最初の年にして、インスタグラムや、TikTok、そのほかのソーシャルプラットフォームで4000件のユーザー作成コンテンツを生成したと、同氏は述べている。実際のところ、商品をプレゼントされたインフルエンサーによるものも、その一部に含まれる。

バベンジェン氏は、同社は一般的に、人々が何について投稿するかに干渉しないが、「我々は確かに、ジョリーの商品に満足したなら、それを友人と共有してくれとは伝えている」という。

UGCの一部は、ジョリーを使用したことで、自分たちの肌や髪がどれだけ改善されたかを語る顧客で構成されている。それ以外には、商品を開封する動画もある。取り付けが簡単になるようジョリーに付属されているミントグリーンのレンチや、「世界でもっともキュートなテープ」と書かれたテープなど、美的センスのあふれるツールを使って顧客がシャワーヘッドを取り付ける動画も、人気のあるフォーマットだ。

「皆がこのブランド、つまりジョリーのスキンケアやシャワーヘッドについて投稿していて、肌や髪が変わったなんていう信じられないような話をしているので、どういうことなのか見てみたいと思った」と、あるユーザーは最近のジョリーの取り付け動画で語り、この動画はTikTokで260万の「いいね!」が付いた。

もっとも成果の高い投稿を広告に

UGCを活用しているのはジョリーだけではない。米モダンリテールが以前報じたように、さらに多くのブランドが、特にここ1、2年のあいだに、自社のマーケティング予算を十分に活用するため、UGCに目を向けるようになっている。Appleのプライバシー関連の更新の影響で、Facebookによる収益性の拡大が困難になってきたことから、顧客が写真や動画を投稿して自社ブランドの商品の好きな点について語ることをさりげなく奨励し、動画のなかでもっとも成果の高いものを広告に変えるブランドが増えてきいる。

D2Cや消費者向けテックブランドと協業してきたマーケティングコンサルタントのリリー・サン氏は、基本的に同氏はブランドに対して、ユーザーに報酬を支払ってコンテンツの作成を頼むことはすぐには行わないよう助言していると語る。特に、3~4人で立ち上げたばかりの新興企業の場合、UGCを有料広告にする前に、創設者やマーケティング担当者自身が「毎週3〜4本のコンテンツを次々と作る」ことを試し、何がうまく機能し、何が機能しないかをたしかめるよう、同氏は勧めている。

また同氏は、ある特定のタイプのUGCが、すべてのブランドにとって有意義とは限らないとも述べている。たとえば、ある保湿剤の使い方を実演するためにカメラの前に自分の顔を出すことには抵抗がある顧客がいるかもしれない。しかし、「開封の動画なら誰でも作れる」と同氏は述べ、ブランドはパッケージと商品に投資して、より多くの顧客に開封動画の投稿を促す方法を考えることを勧めている。

収益性と成長の両方を重視

ジョリーの口コミがオンラインで広まり続けるにつれ、ブランドの流通を拡大したいとバベンジェン氏は考えている。同社は、ヘアサロンの売り場で自社のシャワーヘッドを扱っててもらえるよう働きかけを開始しており、やがてはヘアサロンに特化した商品を開発したいと同氏は語る。また来年には、バスタブ用のフィルターを発売することも計画している。

同社は現在の稼働率を考えると、来年の収益は2500万ドル(約32億3000万円)を超えると予測している。しかしバベンジェン氏曰く、あくまでその成長を確実に収益に結びつけることに重点を置いているという。

「多くの成長は、お金を出して買うものだ」と同氏は述べる。これに対して、ジョリーは「極めてユニークなビジネスモデル」であり、収益性と成長の両方を重視していると、同氏は述べている。

[原文:DTC Briefing: How Jolie reached $4.2M in sales its first year while staying profitable]

ANNA HENSEL(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Jolie

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