セフォラ に見る、小売業者たちの BOPIS への取り組み:よりシームレスでカスタマイズ可能な体験を

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化粧品小売のセフォラ(Sephora)は、BOPISプラットフォームを更新したことにより、配達および受け取りオプションを技術的にアップグレードした最新の小売業者になった。

この大手化粧品会社は、自社の基礎となるコマースプラットフォームを、同社が「古い従来型システム」と呼ぶものからコマースツールズ(Commercetools)に切り替えることを、7月12日に公表した。同社のエグゼクティブは、新しいクラウドベースのヘッドレステクノロジーにより、顧客一人ひとりに対して、よりシームレスでカスタマイズ可能な体験を提供できると語っており、これによって即日配達やオンライン購入、店内受け取り(BOPIS)サービスが改善されることに同社は期待している。

BOPISや即日配達が一般的に

パンデミックの禍中で対面ショッピングに制限が課せられたとき、多くの小売業者は店舗での売上を回復するため、はじめてBOPISの使用を開始した。

現在、多くの小売業者は、一般的となった受け取りおよび配達システムのアップグレードを2022年に行っている。たとえばターゲット(Target)は、自社のカーブサイド受け取りサービスで、アイテムの返却やスターバックス(Starbucks)の注文などの新機能を試験運用していることを発表した。スティーブマデン(Steve Madden)などほかの業者も、需要の増大に対応するためバックエンドを新しい注文管理システムにアップグレードしている。2022年2月のレポートによれば、買い物客は2021年にBOPISでの注文に2500億ドル(約34兆8000億円)近くの額を消費し、BOPIS市場は2027年には7030億ドル(約97兆7000億円)を超えると予測されている。

この新しいテクノロジーにより、「クライアントのための軽快でシームレスな体験を拡張、適応、作成でき、BOPIS、即日配達、チェックアウト、そのほか多くの機能に対応できるようになる」と、セフォラのCTOを務めるスリー・スリーダーララジャ氏は米モダンリテールにメールで語った。

セフォラは、店舗内とオンラインでの売上の比率を公表していない。しかしスリーダーララジャ氏は、「実店舗とオンラインでの売上は極めて健全なバランスを保っており」、BOPISや即日配達が一般的になってきていると語る。

同氏は次のように述べている。「双方が劇的に増加している。そしてごく最近、米国とカナダの全域に即日配達を拡大したことで、当社のクライアントが買い物を行う場所と方法を決めるとき、主に考慮するのは簡便さだと明らかになった」。

店舗内とオンラインでのエクスペリエンスを統一

セフォラがダイネータ(Dynata)と共同で2022年6月に行った調査から、即日配達は利用者が希望するもっとも一般的なサービスであることが判明した。回答者の約63%は、即日配達を使用する理由として、お気に入りの美容品がなくなったら、すぐに手元に欲しいからと回答していた。

コマースツールズの創設者でCEOを務めるダーク・ホーリグ氏は、同社のテクノロジーによってセフォラのようなクライアントは店舗内とオンラインでのショッピングエクスペリエンスを統一できると、米モダンリテールに語った。さらに、より統一されたシステムによって、さらに高速で効率的なオンライン取引と店舗内受け取りも可能になる。

「実際には、小売業者がすべての店舗で保有しているPOSシステムを、グローバルなデジタルプラットフォームと接続させる必要があるということだ」と、ホーリグ氏は述べている。

ラストマイルソリューションプロバイダのレーザーシップ(Lasership)による2021年11月の調査では、100余りの小売の専門家を調査対象とし、それらの専門家の87%がBOPISシステムを実装していることが判明した。しかし、その半数以上は商品の在庫状況、キャパシティの圧迫、スタッフの課題に関する問題に直面していることが、調査により明らかになった。

優先すべきはパーソナライゼーション

セフォラにとってもうひとつの大きな優先事項はパーソナライゼーションだと、ホーリグ氏は語る。これは、システムが顧客に対して、どのような商品がトレンドか、どのような商品を買いたいと思うかについて、より的確な推奨を行えるということだ。同社が実際にどのような事例を運用開始するかはいまだ明確ではないが、チェックアウト直前に別の商品をカートに追加することを提案したり、または過去のショッピング習慣に基づいて別のホームページのリンクを表示することなどが考えられる。

ホーリグ氏は次のように述べている。「企業は柔軟である必要がある。自社独自のカスタマーエクスペリエンスを作り出せる必要がある。物事を迅速に運用開始でき、新しいビジネスモデルも運用開始できる必要がある」。

コマースツールズはヘッドレスアーキテクチャで動作する。これは、ウェブサイトのバックエンドである注文管理などのシステムが、フロントエンドとは切り離されているということだ。これによってセフォラのような小売業者は、ウェブサイトのフロントエンド、つまり顧客の目に留まる部分を、受け取りや配達注文の管理に使用される部分に影響を及ぼすことなしに、パーソナライズすることができる。

セフォラは、自社のテクノロジーを新しいサービスとして改善することに長年注力してきた。同社のシニアバイスプレジデントでeコマース担当ジェネラルマネージャーのキャロリン・ボジャノウスキー氏は、同社がBOPISに移行する前に、オンラインで予約、店内で受け取りを開始していたと、米モダンリテールに語った。

オムニコンコマースグループ(Omnicom Commerce Group)のブライアン・ギルデンバーグ氏は、コマースツールズへの移行は、クラウドベースのテクノロジーの能力を考えれば驚くにあたらないと語る。商品の提案をパーソナライズできることで、セフォラは顧客が受け取り注文に支出する額を増やすことができると、同氏は述べている。

「この種のソリューションはヘッドレスな性質のため、買い物客向けの画像、メッセージ、提案を、eコマースソリューションよりはるかに少ない労力で、簡単に変化および適応させることができる」と同氏は述べている。

米国は、車中心の文化であり、たとえば週末の用事と用事のあいだに商品を受け取りに行ったり、イベントに行く途中でちょっと立ち寄ったりと、BOPIS形式のサービスが適合しているため、ますます一般的になりつつあると同氏は語っている。

また、同氏は次のように述べている。「米国の家族にとって、車ベースの利便性は重要だ。10年前、我々がeコマースの将来を予測しようとしていた頃でも、我々が確信していたことのひとつは、BOPISが大きな部分を占めるだろうということだった」。

[原文:Why retailers like Sephora are giving their buy online, pickup in-store platforms an upgrade]

Melissa Daniels(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:黒田千聖)
Image via Sephora

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