CTV はブラックボックスだらけ。マーケターが抱く不満の中身

DIGIDAY

CTVの広告市場は、猛スピードで急成長しつつあるようだ。確かに、QRコードは先端技術というわけではないが、ショッパブル動画広告や、CRMベースのターゲティングは、かなり先進的な広告プロダクトだ。

その一方で、ニュアンスこそいくらか違ってきてはいるものの、こんなことも繰り返し言われてきた。「CTVはブラックボックスの度がすぎる」。

広告主は、消費者が自社広告を目にするフリークエンシーの管理や、自社広告がどこで流されるかの確認といったことに関する数々の課題に、依然として不満を抱えている。先日開かれた「DIGIDAYプログラマティックマーケティングサミット(DIGIDAY Programmatic Marketing Summit)」に出席したブランド、エージェンシーの幹部たちは、口々にそう話していた。CTVのブラックボックスという話題が登場したのは、彼ら幹部たちが匿名を条件に率直な意見を述べてくれた非公開のタウンホールセッションの場だった。

リーチを犠牲にするか、フリークエンシーを過小にするか

フリークエンシーの管理に関する問題については、幹部たちが特に着目したのは、クロスチャネルのフリークエンシー管理をめぐる課題だった。フリークエンシーの管理は、単一のDSPで支出を集中させる場合、各ストリーミングサービス内で行うことができ、ある程度ならストリーミングサービス間でも行える。

しかし、こうしたCTV広告露出を他媒体に流す広告と結びつけるのは問題となる。また、これが広告主のCTVキャンペーンにさまざまな問題を引き起こす可能性もある。

「CTVの場合、こうしたクロスチャネルパートナーへのマッチバックがうまく行えない。多くの場合、CTVは消費者がスパムの餌食になる場所と化している。そこにはデバイスIDがないため、フリークエンシーを制限できないのだ」と、今回のサミットに参加したある参加者は語る。「コマーシャルのたびに同じ広告を目にしたり、同じ広告が4回連続で流れたりといったことがいちばん起きやすいのがCTVだ」。

「デバイスIDがないため、フリークエンシーについては過小報告している。リーチを犠牲にするか、フリークエンシーを過小報告するか。そんなように思える」と、別の参加者は語る。

どのDSPを選択すべきなのか

この問題への対処法がひとつあるとすれば、広告主がDSPに、デバイスIDを含んでいない入札リクエストを無視させることだ。キャンペーンを、広告露出を管理できる既知のオーディエンスに限定することで、オーディエンスの露出オーバーというリスクを緩和できる。ただしこれには、大きなトレードオフが必要になる場合がある。

「DSPで働いていた経験があるので、それはわかる。実際に、デバイスIDのない入札リクエストを無視していた。そうすることで、リクエストの多くが対象外になってしまっているのか? ここのところ、この件でDSPに説明を求める機会がないので、それはわからない」と、3人目の参加者は語る。

特にDSPの領域における課題は、「統合」を中心に展開している。今回話を聞いた幹部たちも、メディアバイイングを単一のDSPに統合することで、フリークエンシー管理のベストな手段が得られることを認めている。しかし、GoogleのDSPがYouTubeのインベントリにアクセスできる唯一のDSPであることを考えると、彼らの選択肢は、実際には、GoogleのDSPへ統合するか、少なくとも2つのDSPをサポートするかのいずれかに限られる。

事態をさらに複雑にしているのが、特定のSSPと固有の契約を結ぶ一部のDSPだ。そのような場合、広告費はSSPのほうへ優先的に流れているかもしれない。

「我々にとっては、ポイントは、ひとつのDSPに到達すべく統合を試みることだ。とはいえ、『DSPというのは、どのDSPか? それはどうやって選ぶ?』という状態が、ずっと続いている」と、4人目の参加者は語る。

番組レベルのレポートも課題

広告主がもっとよく知りたいと思っているカテゴリーは、広告露出だけではない。自社広告がどの番組のなかで流れたのかもそうだ。従来型TVにおいては、この番組レベルのリポートは比較的入手しやすい。広告主が自社広告の放送日時をTVネットワークの番組スケジュールで相互参照できるからだ。ところが、ストリーミングの場合、オンデマンドの性質上、これは容易ではない。

「我々がぶつかっている最大の問題のひとつは、番組レベルのデータに関するリポートの精度だ。できることなら、リニアの番組と同じか、可能なかぎりそれに近いレベルでリーチを得たい。しかし実際には、ピーコック(Peacock)やHuluを利用している人たちが、その先でいったい何を見ているのかについて、有意で重要なデータを入手することは非常に難しい。視聴者が何を見ているのかについては、推測するしかない」と、5人目の参加者は語る。

フリークエンシーの管理や番組レベルのリポートを求める声は、何年も前から上がっていた。そのことを考えると、こうした不満をバイサイドの幹部たちがエコーチェンバーのなかで言っているように思えなくもない。その一方で、6人目の参加者はこれが、広告主とエージェンシーがこうした問題の対処に乗り出すチャンスだという点を強調する。

広告バイヤーのあいだでCTVアドテクの統合を推す声が上がっている要因のひとつに、アドテクベンダー間に目に見える違いがないことがある(GoogleのDSPは除く)。広告主とエージェンシーはそこを突けば、アドテク仲介業者にこうした課題の解決を要求できるはずだ。

同氏はこう語る。「私はこれをマグナイト(Magnite)に求めた。彼らの反応は『どう差別化しろと?』だった。そこで私はこう言った。『リポートの範囲を増やしてほしい。この件でネットワーク側と話し合ってもらえないだろうか? そちらが事態の進展に本気で取り組んでくれるのなら、こちらも支出について本気で考えようじゃないか」

[原文:Future of TV Briefing: CTV continues to be a black box to programmatic marketers

Tim Peterson(翻訳:ガリレオ、編集:分島翔平)

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