モーフィー(Morphe)は、今年初めに親会社のフォーマブランズ(Forma Brands)の破産につながった束縛から離れて再生し、前に進む準備ができているようだ。
破産後の初ローンチは製品第一をアピール
モーフィーは、6月4日、アルタビューティ(Ulta Beauty)でコンティニュアス・プレップ&セット・ミストプラス(Continuous Prep & Set Mist+)を発売した。これは、同社が連邦倒産法第11章(会社再生法)を申請してからわずか4カ月後の4月に破産から脱して以来、初めての製品ローンチとなる。新しい所有者の下で非公開の資本注入を受けてフォーマブランズは事業転換。主力ブランドのモーフィーが1月初旬に全店舗を閉鎖した後、インフルエンサーではなく製品に、そして卸売とD2Ceコマースに注力するようになっている。
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フォーマブランズのサイモン・コーウェル社長は「戦略の中核は製品第一の美容ブランドへの変革である」と述べている。
フォーマブランズの変遷
フォーマブランズは新しい所有者らに6億9000万ドル(約964億円)で購入された。所有者には、美容業界での経歴を持つ消費者ブランド投資・運営プラットフォームであるアンドヴェスト(&Vest)、サーベラスキャピタルマネジメント(Cerberus Capital Management, L.P.)が管理するジェフリーズファイナンス(Jefferies Finance LLC)ファンド、FBインターメディエイトホールディングス(FB Intermediate Holdings, LLC)などが含まれている。フォーマブランズは、2019年に過半数の株式をプライベートエクイティ会社のジェネラルアトランティック(General Atlantic)に売却した絶頂期には20億ドル(約2794億円)と評価されていた。アンドヴェストの運営パートナーであるクリフ・モスコウィッツ氏がCEOとしてフォーマブランズに加わった。モスコウィッツ氏は、2022年3月に入社した元トゥー・フェイスド(Too Faced)のCEO、エリック・ホール氏の後任となる。
現在、フォーマブランズのポートフォリオには、モーフィー、モーフィー2(Morphe 2)、リップスティッククイーン(Lipstick Queen)、ジャクリンコスメティクス(Jaclyn Cosmetics)、ボーンドリーマー(Born Dreamer)などのブランドがある。ボーンドリーマーはTikTokインフルエンサーのチャーリー・ダメリオ氏とのフレグランスのパートナーシップである。また、2月には歌手のアリアナ・グランデ氏が自身のブランドであるr.e.m.のアセットをフォーマブランズから1500万ドル(約21億円)で購入した。このブランドはライセンス契約に基づいて運営されていた。
インフルエンサーとの協働で失われた価値提案
1月に再生法を申請した時点では、ビジネス上の失敗のなかでも、ジェームズ・チャールズ氏やジェフリー・スター氏らメガインフルエンサーとのパートナーシップがとりわけモーフィーとその売上に悪影響を及ぼしたと言われていた。コーウェル氏は、2019年頃に大人気を博したモーフィーのドロップモデルとカプセルメイクアップコレクションにより、同社のフォーカスが入手のしやすさや品質から憧れの限定ブランドであることに移ったと述べている。製品の完売は喜ばしくもあるが、要するに誰にも購入できなくなるということでもある。
「(問題は)インフルエンサー自身についてではなかったが、人気インフルエンサーとのコラボレーション製品を作成した際には気軽に購入できるプレステージ品質の美容製品という重要な要素が二の次になっていた」とコーウェル氏。「失われたのは、モーフィーの真の価値提案だった」。
アンドヴェストの共同創設者であるダグ・ジェイコブ氏も、モーフィーが、そして後日にはフォーマブランズが成長したマクロビジネス環境は現在とはまったく異なるものだったと指摘している。
「『破産』という言葉は外から見ると恐ろしいものだが、実際にはクリーンなリセットだ。コアブランドは傷つかなかった。それは、複数のブランドをローンチし、大型店舗をオープンし、急速に成長するという戦略だったからだ」とジェイコブ氏は述べている。
モーフィーの再生を担う新製品
こうして、フォーマブランズの立て直しの主役としてモーフィーの新製品、コンティニュアス・プレップ&セット・ミストプラスが登場することになった。この製品は、セラミド、マグネシウム、高麗人参などのスキンケア成分を配合し、メイク前の肌を整えるという。12秒に1本売れているというモーフィーのNo.1ベストセラー製品のコンティニュアス・セッティングミスト(Continuous Setting Mist)からインスピレーションを得ている。新製品は、これまでのように主にアーンドメディアに依存するのではなく、360度のアプローチを取り入れるためにモーフィーのマーケティングモデルを刷新する機会となっている。同社は広報活動やフルファネルの有料メディア広告キャンペーンを通じて従来のメディアに関与しており、収益の18~20%を有料メディアに投資するという。依然インフルエンサーには果たすべき役割はあるものの、インフルエンサーはマーケティング内に位置づけられており、ブランドと製品にスポットライトが当てられている。モーフィーはロサンゼルスとマイアミでインフルエンサーイベントを主催する予定だ。
「いまはインフルエンサーを異なる方法で活用している。インフルエンサーは自分自身を前面に押し出すのではなく、当社のエンゲージメントと新製品の認知度を高めてくれている」とコーウェル氏は語っている。
この新製品はまったくの予想外で突然生まれたわけではない。コーウェル氏によると、過去18カ月はポートフォリオと事業の多角化に費やされたという。モーフィーはメイクアップブラシのブランドとしてスタートし、その後メイクアップ分野に拡大した。人気インフルエンサーとのパートナーシップを確立して、最終的にはフォーマブランズの創設に至った。コーウェル氏は、多角化の取り組みにはこれまでのアイメイクアップやフルフェイスメイクアップからの脱却を図り、ティント付き保湿剤や液体リップスティックのローンチが含まれていると述べている。2020年7月にローンチしたモーフィー2は、異なる消費者ニーズ、つまり軽めでもっとナチュラルなメイクアップを求める若い顧客のニーズへの対応を試みた一例である。
モーフィーは今後、コンプレクション製品、アイメイクアップ、メイクアップブラシの製造と販売に注力していくという。また、ヨーロッパ、中東、アフリカ地域での成長にも注力する予定で、これらの市場を率いる新しいゼネラルマネージャーを雇用している。
「破産(のニュース)を乗り越え、非常に強力なブランドとして再登場できることはエキサイティングだ。当社にすでに実力があることは我々にはわかっている」とジェイコブ氏は述べた。
[原文:Beauty & Wellness Briefing: Morphe’s new launch positions the brand as ‘product-first’]
EMMA SANDLER(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)