アパレル 小売の第1四半期、勝敗を分けた3つの要素:アバクロは10年以上ぶりに売上記録を更新

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アパレルの決算について、5月第4週に驚くべき発表がいくつかあり、すべての業者にとって「万能なフリーサイズの解決策はない」ことが証明された。

特に、中堅のモールベースのブランドはこれに当てはまり、これらの業者の多くは同じ顧客を取り合っている。好調な決算を発表した小売企業がい一方で、まだ大幅な進展が必要であることを示した小売業者もいた。

たとえばアバクロンビー&フィッチ(Abercrombie & Fitch)は、会計年度の第1四半期に驚くほど良好な利益を報告し、2023年の残りについて純売上の見通しを引き上げた。アーバンアウトフィッターズ社(Urban Outfitters Inc.)は、既存店売上の5%増加を報告した。ギャップ社(Gap Inc.)の純売上は、前年同期比6%減だった。アメリカンイーグル・アウトフィッターズ(American Eagle Outfitters、AEO)は、アナリストの予測を上回ったものの、通期の見通しを引き下げた。

ここ数カ月のあいだ、買い物客は自分の家計を厳しく見つめ直し、食費、住居費、交通費などの必需品に多くの資金を回すようになった。多くの家庭にとって、裁量的なカテゴリーとされる衣料品や靴の買い替えは優先事項ではない。2023年3月から4月にかけての米国での小売売上高は0.4%増加した。これは、2カ月連続して減少したあとで増加に転じているものの、依然として予測を下回っている。米国人がスポーツ用品、家具、電子機器製品、衣類に費やす額は毎月減少している。

消費者の余剰資金が限られているため、アパレル小売業者にとって自社の価値を消費者に示すことはますます重要になってきている。決算結果やアナリストによると、この分野で勝利している業者は、優れた品揃え、トレンドの維持、効果的なリーダーシップの決定を主な理由に成功していることが明らかになっている。

勝者:アバクロンビー&フィッチとアーバンアウトフィッターズ

アバクロンビー&フィッチは、CEOのフラン・ホロウィッツ氏によれば、「過去10年以上で最高の第1四半期売上高」を達成した。同社は逆風を受けなかったわけではない。実際にホロウィッツ氏は、将来について「慎重ながら楽観的」だと語っていた。しかし、同社はカテゴリーを超えて需要を捉えることに成功した。

たとえば、同社のビジネスは、「ターゲットとする顧客と有意義に共鳴し、さまざまなジェンダー、カテゴリー、地域にわたって、今四半期にほかにもいくつかの売上記録を打ち立てた」と、ホロウィッツ氏は述べる。同社のブランドのひとつであるホリスター(Hollister)は、夏および新学期シーズンに優れた品揃えを行っていたと、同氏は付け加えた。「当社は在庫を厳密に管理しており、各ブランドは需要に合わせて動くことができる」。

これに対してアーバンアウトフィッターズ社は、4月30日までの3カ月に過去最高の11億1000万ドル(約1550億円)の売上を叩き出した。同社の成長の多くはアンソロポロジー(Anthropologie)、ヌーリー(Nuuly)、フリーピープル(Free People)によるものだ。CEOを務めるリチャード・ヘイン氏は決算発表で、アンソロポロジー、フリーピープル、およびエフピームーブメント(FP Movement)への需要が第1四半期に「加速した」と語った。「これらのブランドは、明らかに既存の顧客を喜ばせ、市場シェアを新たに獲得している」と、同氏は付け加えた。

グローバルデータリテール(GlobalData Retail)のマネージングディレクターを務めるニール・サンダース氏は、アバクロンビーやアンソロポロジーが「消費者の望んでいたものと、より合致した商品を取り揃えていた」ことに同意している。「たとえば、どちらの小売業者も、ドレスや花柄を特に重視しているが、春にはこれらの商品に強い需要があった」と、同氏は米モダンリテールに語っている。「これは、購買チームのスキルに大きくかかっている」。

顧客の属性も関係していると、同氏は述べる。「ポジショニングについて述べておくべき点がある。アバクロンビーやアンソロポロジーは主に、比較的購買力のある若年の成人や中年層をターゲットにしている」と、同氏は付け加えている。

敗者:アメリカンイーグル・アウトフィッターズとギャップ

一方、アメリカンイーグル・アウトフィッターズ社の状況は悲喜こもごもだ。同社は、主にアメリカンイーグルとエアリー(Aerie)の売上のおかげで、ウォールストリート(Wall Street)の業績予想とほぼ一致した。決算発表によれば、同社は「過去最高の第1四半期収益である11億ドル(約1540億ドル)を達成し、エアリーは「過去最高の第1四半期収益と収益性を記録し、複合成長率もプラスだった」。

しかし同時に、同社は通期の営業利益の見通しを引き下げた。「マクロの課題が続いているため、当社は在庫の管理、コスト削減、および事業全体の効率化に明確に注力していく」と、CEOのジェイ・ショッテンシュタイン氏は語る。「今後に向けた当社の優先事項は、営業利益率を立てなおすと同時に、収益性の高い成長の機会を探り、より安定した株主還元を行うことだ」。

同様に、ギャップ社も「長期的に一貫した成果を出せるような道に戻る」ことを望んでいると、暫定CEOのボブ・マーティン氏は語る。ギャップ社の第1四半期の既存店売上は前年同期と比べて3%減少し、オンライン売上は9%減少した。同社のブランドであるギャップ(Gap)、オールドネイビー(Old Navy)、アスレタ(Athleta)、バナナリパブリック(Banana Republic)はすべて、四半期の純売上が減少した。

ギャップ社は大きな転換期を迎えている。アスレタのプレジデント兼CEOは3月9日に職位を離れ、ギャップ社の前CEOであるソニア・シンガル氏は2022年の末に突然離職した。また同社は、9月にレイオフした500人の3倍以上となる1800人の従業員をレイオフする。このレイオフにより、年間3億ドル(約420億円)の経費を削減できると、マーティン氏は声明で述べている。

サンダース氏は、ギャップ社とAEOはどちらも、「取扱商品の範囲に関するイノベーションに失敗している」一方で、同業他社はこのイノベーションに成功していると、米モダンリテールに語った。「ギャップは依然として、旧来と同じようなものを生産しており、顧客の関心や興味を引くような商品を作りだしていない」と、同氏は述べる。「AEOの選択は、第1四半期においてかなりフラットで、活力を欠いていた。抑圧の厳しい環境で売上を促進できるほど良いものではなかった」。

そのほかの関係する要因

業界全体の明るい兆候として、これら4社の小売業者すべてが、前年同期に比べて在庫が減少した。アバクロンビー&フィッチの在庫は20%、アーバンアウトフィッターズ社は6.3%、ギャップ社は27%、AEOは8%それぞれ減少した。

ギャップ社は、前年からの減少がもっとも大きかったが、2022年度の終わりにあたって「在庫規模の適正化において大きな進展」があったと、最高財務責任者を務めるカトリーナ・オコネル氏は決算発表で語った。「当社は2023年度も購買の調整に注力し、反応のいい部分をさらに重視して、2022年度に保留された在庫を将来の品揃えに統合する作業を続ける」と、同氏は述べている。

これら4社の小売業者は、店舗の開設と閉店についても状況が異なっている。ギャップ社は今年、「店舗の開設は、以前の計画よりも少なくなる」と、オコネル氏は語る。

アーバンアウトフィッターズ社は、アンソロポロジー、フリーピープル、アーバンアウトフィッターズの店舗をさらに開設することを計画しているが、「恐らく、現在我々のポートフォリオにある店舗よりは、若干小さくなるだろう。これは、小規模の店舗の方が、高いリターンを得られることが多いとことが明らかになったからだ」と、同社のCEO兼プレジデントを務めるヘイン氏は決算発表で語った。これらの店舗のほとんどは、「モールやセンター内に設置されるものもあるだろうが、ほとんどの場合、独立型店舗ではないだろう」と、同氏は付け加えている。

これら4社の小売業者が同じ路線に乗ることができるかどうかは、今後明らかになるだろう。たとえば、これからの新学期シーズンに売上が伸びる可能性があり、気温が上がれば、ショートボトムスやドレス、タンクトップの購入が増える可能性がある。重要なのは、各社の経営戦略が大きな違いを生むということだ。サンダース氏が説明したように、ギャップ、AEO、アバクロンビー、アーバンアウトフィッターズについて、「結局のところ、業績の差は主に、実行するかどうかに尽きる」。

[原文:‘Comes down to execution’: Behind the winners and losers of this quarter’s apparel earnings]

Julia Waldow(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via American Eagle on Facebook

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