ロイヤルティ プログラムの特典をケチりはじめた小売店:ダンキン、セフォラでも不満が噴出

DIGIDAY

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小売業者のロイヤルティプログラムの特典が充実していた時代はもう終わりかもしれない。

大手家電量販店のベストバイ(Best Buy)のロイヤルティプログラム「マイベストバイ(My Best Buy)」の会員は2月から、同社の利率が高いクレジットカードで支払いを行わない限り、買い物でポイントを貯められず、キャッシュの還元や、サービス、お得なキャンペーンなどの特典を受けることができなくなった。また、ドーナツのファストフードチェーンであるダンキン(Dunkin’)は10月にロイヤルティプログラムを改訂し、無料ドリンクの特典を利用するためには、会員がより多くのポイントを集め、より多く消費しなければならなくなったことから、買い物客から批判を浴びた。化粧品小売のセフォラ(Sephora)も今年はじめ、ビューティーインサイダー(Beauty Insider)会員が誕生日ギフトの特典をオンラインで受け取るための最低購入金額の条件を追加したことで、大きな騒ぎとなった

買い物客と同様に、小売業者もインフレや経済の不透明性、原材料の価格などの逆風を受け、コストの削減を望んでいると、専門家は語る。これらの変更は、自社のもっとも熱心な顧客だけに報酬を与えるという位置づけのものだ。しかし、このような変化はロイヤルティプログラムのメンバーから好意的に受け取られておらず、買い物客を遠ざけてしまう可能性がある。

特典取り下げへの反発

「このような時代には、小売業者も顧客も、結局は同じものを求め、必要とすることになる」と、デジタルコンサルタンシー企業のシーアイアンドティー(CI&T)でリテール戦略ディレクターを務めるメリッサ・ミンコウ氏は語る。「どちらもより高い費用対効果を必要としており、どちらも苦闘しているが、それによって双方による押し引きの関係が生み出される」。

小売業者はロイヤルティプログラムのアップデートを常に行っているが、ロイヤルティ会員に与えられてきた特典を取り下げるのは一般的でないと、ミンコウ氏は語る。実際に、昨年には多くのブランドがロイヤルティプログラムの特典を増やして買い物客を引き寄せようと試みていた。ロイヤルティプログラムの特典を取り下げるのは、熱心な信奉者のロイヤルティを妨げているように見えると、同氏は述べている。

ベストバイの場合、ポイントを獲得するためのクレジットカードの要件をニュースで告知すると同時に、自社のロイヤルティプログラムの顧客に対して送料無料の特典を追加した。しかし、ソーシャルメディア上の買い物客は満足していなかったようで、一部の買い物客は、送料無料はほかの小売業者でも受けられ、ベストバイを選んだ理由はポイントシステムがあるからだと訴えた。同社は、最近の決算発表で四半期売上がパンデミック前の同時期と比べて3%低下しており、次の会計年度で売上が減少する可能性を警告した。

これらの更新の一部が買い物客を怒らせた理由の一部は、ブランドからの透明性が欠けていたことだ。ダンキンが買い物客に対して、(更新前は200ポイントだったところを)紅茶に400ポイント、コーヒーに500ポイント、フローズンドリンクやシグネチャーラテに900ポイントを集める必要があると発表したとき、買い物客はソーシャルメディアに不満をぶちまけた。

Redditのユーザーのひとりは次のように記した。「特に侮辱的なのは、この変更のマーケティング方法だ。同社はこれらが恩恵を受けるための素晴らしい報酬だと語っていたが、この変更はあまりにも劇的でケチなものであり、正直なところ裏切られた気分だ」。

Twitterのユーザーがポイントシステムへの変更について回答を求めたとき、ダンキンの公式アカウントは「数年が経過し、変更を加えるべき時期だった。当社は会員からのフィードバックに耳を傾け、ポイントをフードやドリンクの特典に交換するなど、いくつかの新しい改善点を加えた」と述べた。しかし、同社はウォールストリートジャーナル(Wall Street Journal)の取材に対して、これらの変更は飲料の製造コストの上昇を反映するためのものだとも述べている。

リピート顧客への注力

ジョージタウン大学(Georgetown University)のマーケティングの教授を務めるリュク・ワシュー氏は、小売業者が当事者としての責任を果たすという点について、人々が安心して任せられるようにするべきだと述べている。ロイヤルティプログラムに参加するとき、人々は、小売業者に支出だけでなく、個人情報も与えることになると、同氏は述べている。

「この関係のインセンティブサイクルに参加するのは、ある意味で侮辱的だ。これはビジネスにおいても良くないことだ」と、同氏は述べている。

自社のロイヤルティプログラムのルールをリセットして非難されたのは、ベストバイとダンキンだけではない。セフォラのロイヤルティプログラム「ビューティーインサイダー」は2007年の開始以来、会員がデザイナーズフレグランスからフルサイズの商品までの誕生日ギフトを選ぶことができた。しかし、同社は5月初め、今後オンラインでギフトを利用するためには、最低25ドル(約3420円)の商品を購入する必要があると発表した。しかし、買い物客が店舗でギフトを受け取るなら、引き続き最低購入金額の条件なしにギフトを受けることができる。

ダンキンと同様に、スターバックス(Starbucks)も2月から特典プログラムを更新し、会員は無料ドリンクの特典を受けるには、さらに多くの金額を消費することが必要になった。顧客がホットコーヒー、紅茶、スナックを無料でもらうには、従来の2倍となる100のスターを集めなければならなくなった。

インサイダーインテリジェンス(Insider Intelligence)でリテールおよびeコマースのコンテンツ担当バイスプレジデントを務めるスージー・デビッドカニアン氏は、これらの変更はリピーターの買い物客に報酬を与えるよう設計されたものだと語る。小売業者は顧客の行動変容を促し、より多くの買い物をするよう、ロイヤルティプログラムを調整しているのだろうと、同氏は述べる。

「小売業者は通常、もっとも多く訪れる人々に注力する必要がある。一回限りの客は小売業者にとって利益とならない」と、同氏は述べている。

専門家は、これらの小売業者がロイヤルティプログラムの更新について反発を受けたことから、将来のロイヤルティプログラムについては十分に考慮し、新たな特典の運用開始には慎重になることが予測されると語る。

「小売業者は、長期的に経営を維持できるよう、いくつかの極めて難しい決定を行っている。ロイヤルティプログラムを縮小するのは困難だが、一部のブランドにとってはそうせざるを得ない選択だろう」と、デビッドカニアン氏は述べている。

[原文:Retailers like Dunkin’ and Sephora are getting stingy with loyalty program perks]

Maria Monteros(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)

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