上位3%の 常連顧客 を維持するための対応策とは?【eコマース・フォーラム】

DIGIDAY

5月15日にマンハッタンで開催されたGlossy eコマース・フォーラムでは、ファッションと美容に関するブランドの代表者が集まり、今日のビジネスに影響を与えるeコマースの最大のトレンドと課題について議論した。ディスカッションされた多くの話題のなかでもっとも重要な懸念事項とされていたのは、ブランドのハイエンドなオーディエンスに対応するための最善策だった。

景気が後退しているあいだ、ブランドはいちばん忠実な常連客に頼ることが多くなる。新規顧客獲得のためにコストを消費するよりも、既存顧客のLTV(顧客生涯価値)を優先させることの重要性については以前も記事にした。今回のフォーラムでは、ラグジュアリーのeコマース小売業者マイテレサ(Mytheresa)の北米プレジデントであるヘザー・カミネツキー氏が、毎週買い物をする上位3%のオーディエンスに同社ではどのように対応しているかについて語った。

秘訣はマイテレサのパーソナルショッパー・プログラムにあるとカミネツキー氏は言う。パーソナルショッパーは、マイテレサのほかのオーディエンスが購入できるようになる数日前に新発売の商品にいち早くアクセスできるなど、トップクラスの顧客に価値を提供する。

「新商品はつねに完売している」とカミネツキー氏。「マイテレサにはロイヤルティプログラムはないが、同じような目的のパーソナルショッパーがある。当社のパーソナルショッパーでは、購入前に試せるメモ(Memo)というサービスがある。トップクライアントはこれを本当に気に入っている」。

またカミネツキー氏は、メモをトップクライアントにのみに限定することで、購入されない可能性のある商品を世界中に発送するコストを軽減できると述べた。マイテレサはこれらの顧客をよく理解しており、サイズ情報やスタイルの好みもすべて把握しているため、返品はめったにない。

「ニューヨークに何かを注文すると2日で届く。西海岸なら3日だ」と同氏は言う。「米国にはまだ倉庫はないが、いずれできる予定だ」。

ラグジュアリーブランドと再販企業との連携

新規顧客の獲得については、複数の出席者がGlossyに語ったところによると、Meta(メタ)のようなプラットフォームを通じて広告を購入する従来の方法が法外に高額であることに変わりはない。これは初めてブランドを試してみるという最初のコミットメントの参入への価格障壁が高くなるような、特に高価な製品に当てはまる可能性がある。アルチュザラ(Altuzzara)のCEOシーラ・スー・カーミー氏は、同ブランドの場合、1000ドル(約13万6500円)のワンピースを購入してもらうために新規顧客を呼び込むには、平均して300ドル(4万1000円)かかると述べている。

ラグジュアリーの顧客が新しいブランドを試す方法のひとつに、再販がある。再販会社ヴェスティエール・コレクティブ(Vestiaire Collective)の米州担当CEOであるサミナ・ヴィルク氏によると、同社の調査対象顧客の62%が、再販を通じて初めてラグジュアリーブランドを知ったと答えている。そして、その顧客の半数以上が、そのブランドを再び新品で購入すると回答した。

「新しいブランドへのアクセスや入手のしやすさは、つねに再販の売上の大きな原動力となっている」とヴィルク氏は述べている。

これはブランドが再販企業と提携するよい理由であり、カミネツキー氏もそうした理由からマイテレサは明らかにヴェスティエール・コレクティブを提携先企業に選んでいると話した。

「当社は自社で再販はしていないが、ヴェスティエール・コレクティブと連携している。我々のコアビジネスに対する脅威とはまったく考えていない」とカミネツキー氏は述べた。

タウンホール

TikTokのバイラリティから、大小のインフルエンサーとの連携、小売業者の要求への対応にいたるまで、フォーラムの参加者は課題について率直に議論し、アイデアや解決策を共有した。以下は、フォーラムのタウンホールセクションの発言からの引用である。匿名のため、参加者の名前は削除している。

小売について

「卸売業者向けの生産は本当に厳しい。先方は事前に8カ月から1年の商品情報リストを見たがるが、いつもそれを提供できるわけではない。自分たちのスケジュール通りに進めることができれば、経営を管理するのが非常に楽だ。生産に遅れが生じた際、取引を失うリスクを負うことなく、自分たちで対処できる」。

インフルエンサーについて

「リーチのためのメガインフルエンサーと、エンゲージメントのためのマイクロインフルエンサーと協力している。人材のなかから適切な小規模のインフルエンサーをかなりの手作業で探し出している。その意思決定をするために見るべき正しいデータが何なのかを見きわめるのが難しいことがある」。

ホワイトリスティングとバイラリティ

「マイクロインフルエンスは非常に大きいが、それでどうやってリーチを稼ぐか? バイラリティに頼ることはできない。バイラルが起きればすばらしいが、予測は困難だ。ひとつの方法として、インフルエンサーをホワイトリストに登録することが挙げられる(ホワイトリスティングとは、インフルエンサーがブランドに対して自分のソーシャルハンドルを通じて広告を出すことを許可すること)。 インフルエンサーと提携し、ブランドといちばん相性のよいインフルエンサーを見つけてホワイトリストに登録し、その規模を拡大しようとすること。これはほぼ制御可能なバイラリティのようなものだ」。

「ホワイトリスティングの欠点はライセンスの問題だ。たとえば、インフルエンサーが3カ月間自分たちに権利を与えてくれた場合、その契約を超えないよう、しっかりコントロールしなくてはならない。さもなければ莫大な罰金が発生する可能性もある。私たちは、すでにブランドアンバサダーのような存在になっているトップクラスの人材だけをホワイトリストに入れるようにしている。そうすることでよりシンプルになる」。

[原文:How fashion and beauty brands are keeping their top customers]

DANNY PARISI(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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