TikTok の最新媒体資料徹底分析。広告主への「セールスポイント」は

DIGIDAY

TikTokは米国での存在感をさらに強固なものにするため、広告主への売り込みを大々的に行っている。

TikTokの長期的な存続が米国議会の焦点になるなか、TikTok自身はZ世代のトッププラットフォームとしてのブランドを確立しようとしており、価格競争力のある広告製品をマーケターに売り込んでいる。

5月5日にニューフロント(NewFronts)で開催された招待制イベントで、TikTokは新しい広告製品を初めて一般公開した。TikTokはこのイベントで、「TikTokの『おすすめ』フィードのプレミアムパブリッシャーのコンテンツの後に、広告を直接配置するというコントロールと予測可能性」をマーケターにもたらすことを目的とした新製品パルス・プレミア(Pulse Premiere)を発表した。これは2022年に発表されたTikTok初の広告ソリューション、Pulseを進化させたものだ。

これに続き、TikTokは5月9日、年次イベントのTikTokワールド(TikTok World)で、新たにTikTokワールド・ハブ(TikTok World Hub)とTikTokファンダメンタルズ(TikTok Fundamentals)を発表した。前者はベストプラクティスのハブ、後者は実用的なフレームワークで、ブランドがTikTokキャンペーンを最大限に活用できるよう支援するものだ。

しかし、DIGIDAYが入手したプレゼン資料によれば、TikTokは2023年のTikTokクリエイティブ・エクスチェンジ(TTCX)の顧客にもアピールしているようだ。

※編注:媒体資料全文は原文記事より閲覧可能

TikTokの最新媒体資料

TTCXプログラムは1年半の歴史があり、TikTok広告を作成するために、増加の一途にあるクリエイティブエージェンシーと広告主とをつなぐマーケットプレイスだ。

2023年のTTCXプログラムは、ニューヨーク(2日8日)とロサンゼルス(3月28日)で開催された招待制のクリエイティブ・パートナー・デイズ(Creative Partner Days)で言及されたようだ。詳細は明かされなかったものの、その場では、TikTokの幹部が新しい価格設定とパッケージ、エージェンシーやパートナー向けの各種インセンティブを予告している。

TTCXは、媒体資料で概説されているように、TikTokがどのように広告主にアプローチしているかを明らかにするものだ。TikTokはおそらく他のプラットフォームから広告費を取り込むため、「製品やサービスの発見、購入方法を再定義する」と売り込んでいる。媒体資料によれば、これらのツールにアクセスするには、少なくとも2万~3万5000ドル(約275万~482万円)の費用がかかる。

また媒体資料によれば、TikTokのインフィードフォーマットには、ベーシックとスタンダードの2つのパッケージが用意されている。

ベーシックパッケージは2万ドル(約275万円)からで、4つのクリエイティブ(1つのコンセプトに4つの独自動画)がマーケターに提供される。納期はネット・ニュー(Net New)(ゼロから動画を制作)が20営業日、リミックス(既存の動画をTikTokのネイティブ広告に再編集)が10営業日だ。

「高度な広告購入(enhanced ad buy)」は3万5000ドル(約482万円)からで、ベーシックパッケージと同じ納期で8つのクリエイティブ(2つのコンセプトに4つずつの独自動画)が提供される。

キャンペーンの最低利用金額に満たない広告主は「TTCXアフィリエイト・メディア・サービス(TTCX Affiliate Media Services)」料金を請求されるとのことだが、その金額は明記されていない。

より柔軟性が増した価格設定に

マーベリック(Mavrck)のインフルエンサー担当アソシエイトディレクター、リンジー・ギャンブル氏は、DIGIDAYが共有した媒体資料を見た上で、広告主が予算、成果物、時期をより柔軟に調整できる価格設定だと分析している。

「TikTokは中小企業や大衆ブランドにとって貴重な広告チャネルだ。選択肢が増えることで、広告主は自社に最適なパッケージを選び、望む結果に近づくことができる」とギャンブル氏は話す。「納期が少し短くなったことも魅力だ。タイムリーな瞬間やトレンドに乗じるため、マーケターはしばしば、素早くキャンペーンを展開する必要に迫られるためだ」

TikTokは2022年まで確固たる広告ソリューションを持っておらず、間違いなく、今はマーケターを獲得しているところだ。そして、それは理にかなっている。TikTokはプラットフォームとして急速に成長しているものの、メタ(Meta)やYouTubeのような同業他社に比べれば、まだ新しいサービスといえる。また、TikTokはZ世代から絶大な人気を集めているが、ほとんどのブランドはこの短編動画アプリで本物の存在感を示すにはどうすればよいかを考え、実験予算を投じるにとどまっている。

マンモス・メディア(Mammoth Media)の創業者兼CEO、ブノワ・バテレ氏によれば、TikTokは広告費の獲得を強化しているという。「私たちはノンストップで売り込みを受けている」とバテレ氏は話す。「毎日のように、新しいバンドル、新しいパッケージ、新しい機能、新しい広告費の使い方を提案するメッセージが届いている」

バテレ氏の言う通りだ。匿名を条件にDIGIDAYの取材に応じた米国のあるマーケターは、2022年9月に、新しい広告主を獲得するためのメッセージを受け取ったと述べている。当時、マーケターはネット・ニューまたはリミックスいずれかのパッケージを購入できた。

前述のマーケターによれば、ネット・ニューは8つの動画(2つのコンセプト/ヒーローとそれぞれ4つのバリエーション)、最大2人のクリエイター/俳優、撮り直しなしのポストプロダクション編集1回をすべて28日の納期で提供するというものだった。リミックスも同じ8つの動画だが、14日の納期で3回の編集が付いていた。

※注:当時のTTCXプロジェクトでは、新規の広告主は2万5000ドル(約344万円)以上使う必要があり、既存の広告主は3万5000ドル(約482万円)以上使っていることが条件だった。

その後、調整が行われ、2022年末までに新しいパッケージを利用できるようになった。前述のマーケターによれば、最低利用金額は2万5000ドル(約344万円)で、8つの動画を制作費なしで提供するというものだった。

具体的な数字

しかし、TikTokは最新の媒体資料で「皆のための動画プラットフォーム」を自称しており、エンターテインメントアプリとしての地位をさらに固めようとしているのがわかる。媒体資料では社内データを引用し、全世界の月間ユーザー数は10億人、動画の再生回数は1カ月6兆回に達していると主張している。

これに対し、メタは第1四半期の決算発表で、約38億人が自社のアプリを1カ月に少なくとも1つ利用していると述べている。Facebookの1日当たりのアクティブユーザー数は20億4000万人だ。

そして、これらの数字は、TikTokが飛躍的な成長を遂げたことを示している。DIGIDAYは2019年1月、ヨーロッパの大手広告エージェンシーに送られてきた媒体資料を入手した。TikTokはそのなかで、1日当たりのアクティブユーザー数は8億人だと主張していた。また、2019年2月、米国のエージェンシーに送られてきた別の媒体資料を入手したが、月間アクティブユーザー数は2650万人で、アプリが開かれているのは1日平均8回、合計46分だと書かれていた。

そして、閲覧時間の争奪戦が勃発した。TikTokは2023年4月のプレゼン資料に、同業他社と比較して最も見られているプラットフォームだと記載している。data.aiを情報源とする2021年6月付けの社内データによれば、消費者が1日に費やす時間はYouTubeが75分、Facebookが52分に対し、TikTokは118分だったという。このリストはTwitch(33分)、インスタグラム(31分)、Snapchat(22分)、Twitter(17分)と続く。

閲覧時間はTikTokにとって有利になる一方だ。全世界を対象としたデータ・エーアイの最新データによれば、Androidユーザーは月平均23時間28分をTikTokで過ごしているのに対し、YouTubeは23時間9分、Facebookは19時間43分となっている。

これについてTikTokにコメントを求めたが、回答は得られなかった。

[原文:Pitch deck: How TikTok is courting advertisers

Krystal Scanlon(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:分島翔平)

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