WWE 、買収を機に広告とプロダクトプレースメントを拡大へ:「極めてロイヤルティが高く熱心なファンにリーチできる」

DIGIDAY

米プロレス団体のWWEが、広告主を引き付けるためにクリエイティブな取り組みに乗り出している。

WWEでCEOを務めるニック・カーン氏は2022年度第4四半期の決算報告で、広告プレースメントやデジタルディスプレイ、プロダクトプレースメントを活用して、リングやフェンスのさまざまな場所でマネタイズを始める計画を明らかにした。

この動きは、かつて存在したプロレス団体のWCWがリングマットや入場ステージにスポンサー広告を配置した1990年代の活動や、総合格闘技団体のUFCが現在行っている取り組みとよく似ている。

マーケティングの可能性は無限大に

WWEが4月初めに開催した1年で最大のプロレスイベント「レッスルマニア(WrestleMania)」では、ゼネラル・ミルズ(General Mills)、マイクス・ハード・レモネード(Mike’s Hard Lemonade)、インテュイット(Intuit)といったブランドが、デジタル広告を掲示したりプロダクトプレースメントを利用したりした。具体的な契約金額は公開されていないが、この事実は「概念実証」の役割を果たしたといえる。WWEが210億ドル(約2兆7840億円)で大手エンターテインメント企業のエンデバー(Endeavor)に買収され、広告主の幅が広がる可能性が出てきたからだ。WWEは、UFCやIMGとともにエンデバーのブランドポートフォリオに加わることになる。米DIGIDAYはこの件に関してエンデバーにコメントを求めたが、回答は得られていない。

エンデバーは過去にUFCを買収しているが、この買収はビールブランドのモデロ(Modelo)やブロックチェーン企業のビーチェーン(Vechain)などとの「非常に有利な取引」をブローカーにもたらしたと、2007年以降のプロレス界をテーマにしたポッドキャストで受賞歴もある「ソロモンスター・サウンズ・オフ(Solomonster Sounds Off)」のホスト、ジェイソン・ソロモン氏は話す。WWEを手にしたことで「マーケティングの可能性は無限大」になったと、同氏は見ている。

また、今回の買収をきっかけに、UFCとWWEが視聴率の向上や販売促進の取り組みで提携する可能性もあると、スポーツマネジメントを手がけるパラダイム・スポーツ(Paradigm Sports)の創業者兼CEO、オーディー・アタール氏は指摘する。

ブランドを活性化させるのに最適な場所

WWEが買収される前、ゼネラル・ミルズの「シナモン・トースト・クランチ(Cinnamon Toast Crunch)」ブランドは、レッスルマニアでWWEファンの関心を引くために、ブランドのキャラクターを覆面レスラーに仕立て上げ、レイ・ミステリオ・ジュニアとドミニク・ミステリオ親子の試合中に、アリーナのデジタルスクリーン、バナー、リングエプロンサイドのデジタルディスプレイで披露した。

ゼネラル・ミルズでアソシエイトブランド体験マネージャーを務めるデイナ・ニーダム氏によれば、このコラボレーションの実現には1年を要したという。

「レッスルマニアはブランドを活性化させるのに最適な場所だ」とニーダム氏は述べ、「大規模なカルチャーイベントであるだけでなく、極めてロイヤルティが高く熱心なファンに初めてリーチし、エンターテインメント性の高い方法でファンを驚かせることを可能にした」と付け加えた。なお、同氏はこのキャンペーンの成果を裏付ける具体的なデータを示していない。

スポーツドリンクのプライム(PRIME)、炭酸飲料のマウンテン・デュー(Mountain Dew)、チョコレートバーのスニッカーズ(Snickers)もレッスルマニアにちなんだ広告を展開したが、米DIGIDAYのコメント要請には応じなかった。

スポーツとエンタメの境目は?

ただし、エンデバーによるWWEの獲得は、いまどきのスポーツリーグとスポーツ団体の境界線を曖昧にするものだと、成長戦略コンサルティング企業のプロフェット(Prophet)でマーケティングおよび営業担当共同責任者を務めるデビッド・ノバック氏はいう。また、派手に演出された劇場型のスポーツイベントと規制の多い正統派のスポーツ大会を組み合わせることで、ブランドセーフティの点で疑問を持たれる可能性もある。

「コンテンツが高い相乗効果を生み出し、ストリーミングコンテンツが両者に極めて興味深い機会もたらしていることは疑いようもない。また、各ブランドがすでに獲得している広告スポンサーは、清涼飲料、アルコール飲料、スポーツドリンクなど似たようなカテゴリーに属している」と、ノバック氏は語った。

[原文:Wrestlemania could harness larger advertiser network after Endeavor acquisition

Julian Cannon(翻訳:佐藤 卓/ガリレオ、編集:分島翔平)

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