クレド、競合のフォランを 買収 。主流となったクリーンビューティ業界の今後は?【ビューティ&ウェルネスブリーフィング】

DIGIDAY

クリーンビューティ小売業者のクレド(Credo)は、10月16日、競合他社のフォラン(Follain)の買収を発表した。

クレドとフォランの統合で強化されるクリーンビューティ分野

クレドはフォランの40のブランドを個別に検討して、クレドの事業に合ったものを統合するという。また、ボストンのビーコンヒルにあるフォランの店舗を引き継ぐ。現在クレドは約175のブランドを取り扱っているが、より厳選するために品揃えを見直しているところである。クレドには10店舗があり、来年初めにロサンゼルスのラーチモントビレッジに11店目がオープン予定だ。クレドは約6カ月後に全ロケーションの新しいストアコンセプトを発表する。買収価格は両社からは公表されていない。

多くの点でクレドとフォランの統合は自然な結果だといえる。どちらもクリーンカテゴリーのクリエイターとして知られており、クレドは故シャシ・バトラ氏とアニー・ジャクソン氏により2015年に設立された。フォランは創業者兼CEOのタラ・フォーリー氏によって2013年に創業した。フォーリー氏はクレドのアドバイザーとして残留する。

ジャクソン氏は次のように述べている。「両社のあいだには非常に多くの整合があった。この分野では多くのコラボレーションが行われている。クレドは優れた製品を提供することに専念している相手と良い関係を築こうと努めている。フォランとは長い付き合いがある。それにより我々が行う業務の影響はさらに強化されるだろう」。

クレドとフォランはアルタビューティ(Ulta Beauty)とも深いつながりがある。アルタビューティは2020年に独自のクリーンプログラムとクレドビューティパートナーシップ(Credo Beauty partnership)を発表しており、また、フォランのプライベートレーベルも取り扱っている。そのプライベートレーベルはそのまま継続される。これは、2020年の日焼け止めラインのイレブン・バイ・ビーナス・ウィリアムズ(EleVen by Venus Williams)とクリーンファンデーションブランドのエクサ(Exa)のローンチに続いてクレドが所有する3番目のブランドとなる。

「フォランは、当社の長期的な戦略的成長計画にとって理にかなっている」と述べているのは、クレドCEOのスチュアート・ミラー氏だ。同氏は2月にイソップ(Aesop)からクレドに移籍した。「当社が50%がクリーン、50%が従来型のオンラインプラットフォームを買収するとしたら、その動機について問われるだろう。フォランのおかげで発言力を強め、影響力を高め、ビジネスを成長させることにフォーカスできる」。クレドは前年比で2桁台の高成長を遂げている。

主流になったクリーンビューティの軌跡

クレドとフォランの創業以来、クリーンビューティはニッチから主流への変遷を遂げている。クリーンが生まれて約10年が経過、新しい創業者が次々に現れてはクリーンブランドのローンチにいたった「ひらめきの瞬間」について語っている。たとえば妊娠中に製品を探していてひらめいたというような話だ。そのような創業者の話は、2013年に「疑わしい6成分(Suspicious 6)」の成分リストを発表したドランクエレファント(Drunk Elephant)の創業者、ティファニー・マスターソン氏の話と比べるとそれほど斬新さは感じられない。

また、クリーンビューティのオリジナルブランドの多くはコングロマリットに買収されている。これには、現在ユニリーバ(Unilever)傘下のタッチャ(Tatcha)とポーラズチョイス(Paula’s Choice)、資生堂に買収されたドランクエレファント(Drunk Elephant)、最近ではアモーレパシフィック(Amorepacific)が買収したタタハーパー(Tata Harper)などがある。現在、買収者はクリーンスキンケアからクリーンコスメに注目するようになっており、イリア(Ilia)は2月にクルタン-クラランス家の持ち株会社であるファミーユC(Famille C)に売却され、(コングロマリットに買収された)クリーンカラーブランドの第1号となった。小売業部門でも多くの統合が行われており、デトックスマーケット(Detox Market)は、2015年にハスク(Husk)を、2016年にFreshfaced.caを、2020年にカナダの競合他社、クレメンタインフィールズ(Clementine Fields)を買収している。

セフォラ(Sephora)ターゲット(Target)のような小売業者にとって、また新規ブランドにとってクリーンビューティが当たり前になるにつれて反発が生じた。TikTokで人気のスキンケアブランドのひとつであるデュー(Dieux)の創業者、シャーロット・パレルミノ氏は「クリーン」ラベルは無意味だと公言している。また、スーザン・ヤラ氏は消費者が求めているのは問題を解決するビューティ製品であると言い、ナチュリアム(Naturium)はクリーンなポジショニングに依存していないと断固主張している。その結果、「クリーニカル(cleanical、cleanとclinicalを合わせた造語)」ブランドと専門家が指揮を執る問題解決にフォーカスしたブランドが成功を収めている。

「アトピー性皮膚炎、皮膚炎、酒皶、肌の周期に関する検索が大幅に伸びていることから、顧客は自分の懸念事項に対してより精通してきている」と述べているのは、AIトレンド予測プラットフォームであるスペイト(Spate)の共同創業者、ヤーデン・ホロウィッツ氏だ。「トレチノインは月間100万件の検索があり、前年比で16%成長している。この勢いはまだまだ衰える様子はない。トレチノインは皮膚科医からの処方箋が必要だ」。

トゥルービューティベンチャーズ(True Beauty Ventures)の共同創設者兼ゼネラルパートナーであるクリスティナ・ヌニェス氏は、次のように述べている。「ドランクエレファント、タタ(ハーパー)、ファーマシー(Farmacy)のようなクリーンスキンケアブランドとは異なり、現在のクリーンはブランドのアイデンティティではなく製品の属性だ。クリーンは業界全体の動きを推進したが、それは主に消費者主導であったし、今でもそうだ。現在の購入客は、敏感肌に安全な製品やニキビを悪化させない製品を選ぶのと同じようにクリーンな処方を求めている」。トゥルービューティベンチャーズはデューだけではなく、クリーンブランドのクラウンアフェアー(Crown Affair)やムーンジュース(Moon Juice)にも投資している。「トゥルービューティベンチャーズはクリーンなブランドに投資しているが、クリーンが唯一の理由ではない。それは決定的な評価ではない」。

一貫性のあるクリーンの定義やさらなる進歩が業界の課題

「クリーンに関してブランドと消費者が問題視しているのはクリーンが普遍的に定義されていないことだ。その結果、誤った情報や虚偽の表示、時には誤用につながる可能性がある」とヌニェス氏は語っている。「クリーンビューティ分野には、混乱ではなくもっと多くの統合が必要だ。現時点では個々の小売業者とブランドは一貫性と明確性のない独自の定義を使っている。アルタ(Ulta)とクレドのパートナーシップは正しい方向への一歩だ。アルタはすでに確立されたクリーンの定義であるクレドクリーンスタンダード(Credo Clean Standard)を採用している」。

それでもクリーンビューティは衰えを見せてはいない。スペイトの最近のデータによると、クリーンビューティは前年比で13.8%成長している。クリーンな製品の月間平均検索数は3.2万回だ。上位の検索には「クリーンビューティ」「クリーンビューティ製品」「クリーンビューティブランド」「セフォラクリーンビューティ」「クリーンビューティ ビタミンCセラム」、「クレドクリーンビューティ」「ベスト クリーンビューティブランド」などがある。クレドが際立っているという事実は同社がこのカテゴリーと同義になっていることを示している。また、検索ボリュームがもっとも多い個別のクリーンブランドには、デシエム(Deciem)(190万回)、オラプレックス(Olaplex)(150万回)、ビューティカウンター(Beautycounter)(42.37万回)がある。

また、新規のクリーンブランドは検索で成功を収めており、クリーンが引き続き高い関連性を持っていることが浮き彫りになっている。マヤチア(Maya Chia)、メリット(Merit)、トピカルズ(Topicals)はすべて上昇軌道にあり、トピカルズは前年比で135%増加して、月平均で2.7万件を超える検索回数を記録している。

だが、ホロウィッツ氏はトピカルズとメリットの成長はクリーンなブランドとしての地位だけが理由ではないと述べる。「クリーンビューティブランドというだけでは十分ではない。トピカルズが消費者から選ばれているのは、その感性とブランディング、そして色素沈着過剰と変色に特化した製品のためだ。色素沈着過剰と変色について消費者は知識を持っている」。

ジャクソン氏はクリーンの基準が高くなったことを認識している。「我々は原材料について疑問を問いかけることからクレドを始めたが、大きく前進した」。同氏は持続可能性におけるクレドの取り組みとパクトコレクティブ(Pact Collective)について言及した。パクトコレクティブは、ハドソン湾会社(Hudson’s Bay Company)やMOBなどと提携して立ち上げた初の非営利パッケージ回収プログラムだ。「だが、グリーンリーンウォッシングは容認できない。(企業が)クレドの高い基準を満たしているのであれば、それは素晴らしい。しかし、だからといって行うべきことが少ないということではない。クリーンは進化し続けなければならない」。

[原文:Beauty & Wellness Briefing: As Credo buys Follain, what is the state of clean beauty?

PRIYA RAO(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)

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