エイサップ・ロッキーは自らボトルデザインも:ブランドと「真のコラボレーション」をする セレブリティ たち

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一部のブランドにとって、セレブリティが、有料での投稿や一度限りのキャンペーンに参加することは、もはや切り札ではなくなっているようだ。

ラッパーのエイサップ・ロッキー氏は、1年前に発足した自身のアルコール飲料ブランド、マーサー+プリンス(Mercer + Prince)のボトルをデザインし、ラッパーのポスト・マローン氏は、2020年に公式に発売された自身のワインブランド、メゾンナンバーナイン(Maison No. 9)で、さまざまな液体のブレンドをテストした。俳優のシム・リウ氏は最近、ダンプリングやソースなどの商品を販売する中国食品ブランドのミラ(MìLà)の最高コンテンツ責任者に就任し、同ブランドのクリエイティブ戦略やマーケティング施策の開発を担うことになった。

女優でコメディアンのマーヤ・ルドルフ氏と提携したM&M’sや、シンガーソングライターのH.E.R.(ハー)を起用したロレアルパリ(L’Oréal Paris)などのように、純粋にスポークスパーソンとしてセレブリティに依頼するブランドもあるが、一方で、組織自体に取り入れるためにセレブリティを起用しているブランドもある。セレブリティは自ら本気で仕事に取組み、多くは特定の商品の機能やマーケティングに自身のアイデアを提供する。このトレンドは、ブランドがセレブリティパートナーにより強固なロイヤルティを求め、消費者がセレブリティのお墨付きにより本物らしさを要求した結果として生まれたものだ。

インフルエンサーマーケティングプラットフォームのグリン(Grin)でマーケティング担当バイスプレジデントを務めているアリ・ファザル氏は次のように述べている。「継続的に見られていることだが、消費者は、報酬と引き換えに商品をお勧めしていることが明らかな、単にお金のために行っている投稿と思われるものに対して多くの抵抗がある。消費者はこのような投稿を見抜くのが非常に得意になってきた」。

ブランドの運用にも深く関与

セレブリティは、自身のパーソナルブランドやメディアでの活動を中心に、大勢のフォロワーを獲得してきた。たとえばポスト・マローン氏には2310万人以上のフォロワーが存在し、自身のワインブランドを取り上げた投稿では、150万以上の「いいね!」を集めた。このように、セレブリティの知見を商品やマーケティング戦略に取り入れることで、ブランドはその著名人の顧客層をより的確にターゲティングすることができるようになる。セレブリティはテレビやメディアに出演しているため、自分のパーソナリティをアピールする機会も多いと、ファザル氏は述べている。

セレブリティがブランドの運用に深く関与するパートナーシップは、多くの売上と、卸売業者からの関心を得ることができる。たとえば缶詰・瓶詰カクテル企業のトーマスアシュボーン(Thomas Ashbourne)は、創業から半年足らずで収益が100万ドル(約1億3200万円)を超え、現在は26州にわたり、クローガー(Kroger)やアルバートソンズ(Albertsons)などを含む4000店舗で販売されている。女優のサラ・ジェシカ・パーカー氏やバネッサ・ハジェンズ氏が、同社の持ち株を保有している。

エイサップ・ロッキー氏により共同創設されたマーサー+プリンスは、32ドル(約4220円)のボトル入りウイスキーが、昨年の発売からわずか1週間で完売した。ロッキー氏はウイスキーのパッケージを、ナプキンの裏側に自分で描いてデザインしたと、マーサー+プリンス、メゾンナンバーナインなどを保有しているグローバルブランドイクイティズ(Global Brand Equities)の創業者兼CEOのジェイムズ・モリッシー氏は語る。ロッキー氏は、商品にプレミアム感を持たせ、家の棚に置いたときに芸術品が飾られているようにしたいと考えていた。

「これは、コンセプト考案から実行までを通した真のコラボレーションだ」と、モリッシー氏は述べている。「当社の商品は、すべてタレントと共同で作成される」。同氏は、ベンチャー企業に打ち込み、熱意を持っているセレブリティのパートナーを特に探していると語る。同氏はテキーラブランドのグラン・コラミノ(Gran Coramino)を運営するコメディアンのケビン・ハート氏など、5人のセレブリティと提携している。

ポスト・マローン氏のメゾンナンバーナインは、先行販売の2日間で5万ユニットを売り上げた。このブランドは現在フレンチ・ロゼを販売しているが、ラッパーである同氏はこのブランドを作り上げるにあたり、ブランドに理想的なフレイバーのプロファイルの感覚をつかむために、フランスのワイナリーに自ら滞在した。

モリッシー氏は次のように述べている。「商品の開発に関与するパートナーや人々と結びつきを持つ場合、その人には、我々と同じような責任感を持って、しっかり関与し協力してほしい。セレブリティを使ってインフルエンサープログラムや広告キャンペーンを行い、報酬を支払うことで商品を勧めてもらうのは、リアルではない。本物らしさがない。当社が築いてきたビジネスのバックボーンになるのが本物らしさだ」。

セレブリティパートナーの精査

ミラの共同創設者であるジェニファー・リャオ氏とカレブ・ワン氏は、シム・リウ氏が、商品開発や販売側も含めてブランドに全般的に関与すると語る。しかし、俳優である同氏はブランドのマーケティングとストーリーテリングの面で主に関わるだろう。リウ氏はインスタグラムの投稿で、ミラとのパートナーシップを発表し、同氏が「ビジネスのクリエイティブ戦略を形成するため積極的な役割を果たし、主要なマーケティング施策を推進していく」と述べ、12万400を超える「いいね!」を獲得した。

「リウ氏は適切な価値観を持っているように感じられる」と、リャオ氏は述べる。「同氏はマーケティングに多くの経験を持ち、それに対する審美眼があり、関心も抱いている」。リウ氏は俳優としての活躍する以前は、コンサルティング企業のデロイト(Deloitte)で会計士を務めていた。

同社は、チームが商品のパッケージをリウ氏の自宅に送ったことをきっかけに、同氏とつながりを持った。リウ氏はミラの商品をテストしたあとで、昨年行われた同社の最初の資金調達ラウンドで、エンジェル投資家になった。

ワン氏は次のように述べている。「最初の数カ月に行うことのひとつとして、同氏がビジネスのさまざまな部分で迅速に活躍できるようにするための、深く掘り下げた話し合いを行っている。パートナーシップをはじめる前に、1対1でイントロダクションを行ったが、今度はさらに深い説明を行う予定だ」。

セレブリティのパートナーを見つけるブランドが増えるにつれ、小売業者はこれまでのように、有名人の「お墨付き」に簡単に動かされなくなるだろうと、グローバルブランドイクイティのモリッシー氏は語る。また、論争に巻き込まれて評判を落とすことを避けるため、セレブリティパートナーを精査することも、ブランドにとって極めて重要になるだろう。

同氏は次のように述べている。「セレブリティのブランドについて、シニカルで懐疑的な見方もある。私もそれに共感する。顧客はセレブリティの話に対して多くの場合に興奮してきたが、しだいに反応が薄くなってきている」。

[原文:‘A true collaboration:’ Brands are weaving celebrity partners in product development and marketing strategies ]

Maria Monteros(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Mercer + Prince

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