インターネットが分断される「Splinternet」の危険性を専門家が警告

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国境や民族を問わず、世界中を単一につなげるコンピューターネットワークとして機能するように考案されたシステムが「インターネット」ですが、現代では何らかの理由や要因によって世界ではインターネットが分断されている国や地域があります。この動きは「Splinter(破片)」または「Split(分割)」と「Internet(インターネット)」という単語を組み合わせた「Splinternet(スプリンターネット)」と呼ばれています。

What is the ‘splinternet’? Here’s why the internet is less whole than you might think
https://theconversation.com/what-is-the-splinternet-heres-why-the-internet-is-less-whole-than-you-might-think-207033


インターネットの約70%という大部分は「ディープウェブ」と呼ばれる検索エンジンなどからのアクセスができない部分です。ディープウェブには個人のメールやクラウドサーバー、個人用SNSアカウントなど、パスワードの強弱を問わず、アクセスするためにはパスワードの入力が必要なサイトやサービスが含まれています。

インターネットはこのような広く開示されていないページやサイト、サービスが大部分を占めているため、インターネットの全体像を知ることは困難です。

一見全世界に公開されているように見えるインターネットですが、国や地域によって独自のポリシーや規制などが設けられていることもあります。例えばロシアは、ソビエト連邦時代から続くインターネット監視体制を維持しており、中国は「グレート・ファイアウォール」と呼ばれる大規模な情報検閲システムを構築して、インターネット上の他国からの情報やサービスを大幅に制限しています。


インターネットを使用する際の障壁は国家による監視や検閲だけではなく、ユーザー間での嫌がらせや、汎用(はんよう)的でない独自技術を採用して一般的なインターネットとの情報の往来を拒むケース、プラットフォームによる商業的な囲い込みによる実質的なユーザー間の分断などが(PDFファイル)問題視されています。これらの規制や制限の一部はバーチャルプライベートネットワーク(VPN)を利用する事で回避可能ですが、一般の人々には参入の障壁が高く、一部のユーザーしか使用しない特殊なソリューションとなっていることが現状です。

オーストラリア・モナシュ大学でコミュニケーションおよびメディア研究の講師を務めるロビー・フォーダイス氏は「監視などを行って閲覧可能なコンテンツを制限できること自体は悪くありません。コンテンツの制限を行うことで、有害なサイトを表示される前に秘匿することができます。しかし、コンテンツの制限は国家間や地域間でのインターネット体験の分裂につながります」と指摘しています。

国家によるインターネットの検閲や規制がよく批判の的となりますが、情報の制限は企業からも行われることがあります。2021年にオーストラリアでは、大手IT企業にニュース使用料の支払いを義務づける「ニュースメディア交渉法」の制定が行われ、それに反発したFacebookはオーストラリアのユーザーやパブリッシャーが国内外のニュースコンテンツの共有や閲覧に制限を課すことを発表していました。

Facebookがオーストラリアで「いかなるニュース記事に対しても投稿&リンクできない」よう仕様変更 – GIGAZINE

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また、Facebookは発展途上国に対して「Free Basics」と呼ばれる無料でインターネットを利用できるプログラムを公開しました。しかし、Free Basicsでは「Zero-rating」と呼ばれるサービスを用いて、Facebookが用意したサイトやコンテンツのみアクセスが可能となっていました。こうした制限は、2015年から2016年に行われたFacebookに対する大規模な抗議活動につながりました。

このような国や地域におけるネットワーク中立性のさらなる低下は、インターネットサービスプロバイダーの制限や価格競争につながることが危惧されています。


フォーダイス氏は「インターネット上の体験が多様化することで、インターネットを利用する企業によるトラッキングや広告の表示がますます増加する現状では、今後もインターネットの分裂は続くでしょう」と述べています。

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