マーケターは夢中も、クリエイターは TikTok に不満:金銭事情や根本的な諸問題について聞く

DIGIDAY

TikTokに対し、マーケター勢は夢中かもしれないが、クリエイター勢はそうでもない。

クリエイター勢はこの2年間、TikTokが短尺動画で収めている大成功の中核にいたわけだが、それに見合うだけの報酬をもらっているとは、必ずしも思っていない。それゆえ、同プラットフォームにはもはや、かつてのような薔薇色の未来図は描けないかもしれない。クリエイター勢は金銭的不満を募らせるなか、さらに同アプリのほかの不安要素についても疑問を抱きはじめている。

その点を念頭に、DIGIDAYは7人のクリエイターに取材し、金銭事情を含め、TikTokに関する根本的な諸問題について語ってもらった。

低報酬

TikTokがクリエイターに支払う報酬が、少なくとも現在はあまりよくないことは、一般に知られている。

DIGIDAYが以前に報じたとおり、TikTokは公認クリエイター(フォロワー数10万人以上)と広告収益を折半している。TikTokはこれを、2022年5月に立ち上げた基金プログラムであるTikTokパルス(TikTok Pulse)を介して実施しているが、クリエイター勢のやる気を大いに高めるには至っていないようだ。

事実、TikTokに2万7700人のフォロワーを有するフォーエヴァーサミー(ForeverSammy)氏によれば、クリエイターがクリエイターファンドを通じて手にできる報酬は一般に、10万回視聴あたり、わずか50p(0.61ドル、約80円)だという。

同様に、TikTokに28万9500人のフォロワーを持ち、このほどゴールデンセット・コレクティブ(Goldenset Collective)の一員になったセイホプキンス(Sayhopkins)氏は、クリエイターファンドの恩恵はまったく受けていないと説明する。「たとえば、2022年11月に私がアップした動画の視聴数は約800万回に達しているが、お金がほとんど入ってこないわけではないにしろ、相応の見返りが期待できるものではない」とセイホプキンス氏はいう。「しっかり視聴数は稼いでいる。しかし、私がこれまでに手にした総額は人生を変えてくれるものでもなく、日々の支払を賄ってくれるものでもない」。

同アプリ上に62万4400人のフォロワーを持つ人気者、ダニグメイクアップワン(Danigmakeup1)氏でさえ、同様の経験をしている。同氏がDIGIDAYに明らかにしたところでは、2023年2月11日~18日の収益は、プロフィール閲覧数が1万7000回、動画視聴数が76万2000回だったにもかかわらず、一日平均92p(1.11ドル[約145円]、計7.34ポンド/8.89ドル[約1156円])だった。

とはいえ、TikTokはこのほど、クリエイターファンドをはじめとするソリューションに関するクリエイター勢の意見をもとに、クリエイティビティ・プログラム・ベータ(Creativity Program Beta)の導入を発表している。現在のところ招待のみだが、この先数カ月のあいだに、TikTokは同サービスをすべての適格な米クリエイターに適用していく。つまり、事態の改善が見られる可能性はある、ということだ。

よりよいアルゴリズム

業界ではしばしば、TikTok独自のアルゴリズムを称える声が聞かれており、その点においてFacebookやインスタグラム、Snapchat(スナップチャット)さえもはるかに凌いでいるとも言われている――誰でもバズらせられるその力についても、然りだ。

しかしながら、これは実のところ、TikTok幹部のさじ加減ひとつで決まることもあり、社内限定の機能「heating(加熱、の意)」を使い、誰/何をバズらせるか、彼らが手動で決めている、という事実が明るみに出る前の話だ。そしてこれもまた、増え続けるTikTok不満要素リストのひとつであり、クリエイター勢が同アプリのアルゴリズムに必ずしも心酔していない理由となっている。

フォーエヴァーサミー氏は、このアルゴリズムのせいで、自身のTikTok動画視聴が散発的であり、非常に残念な結果になっていると話す。

「TikTokが実際にどうやってコンテンツを分散しているのか、そして実は何か特定のフォーマットがあって、クリエイターはそれを利用できるのかどうか、その点がわかれば、どんなにありがたいか。絶対にいけると思ってアップした動画がパッとしない結果に終われば、本当にがっかりするし、本当はアルゴリズムのせいなのに自分の作り方やアイデアのどこがダメなんだろうと、くよくよ悩んでばかり、ということになる」。

一貫性のない利用停止措置

クリエイター勢にはまた、自身のアカウントを管理する権限もない。TikTokフォロワー3万100人を有するアイアムブランドン(IAmBrandon)氏によれば、ほかユーザーによる報告のせいで、TikTokの利用を禁止され、その後アカウントが削除されるといった事態はクリエイターの身にいとも簡単に起きるという。

クリエイターにしてみれば、それは時に、重要な収入源を丸々失うことでもある。「そうなったら、クリエイターは異を唱えるしかない。というより、その報告が虚偽または誤りであると祈るしかないし、実際は運を天に任せるしかない」と、アイアムブランドン氏は話す。

その点を踏まえ、現在フォロワー数1779人のクリエイター、アイランドスタイル(IslandStyle)氏は、「TikTokにはもっと透明性が必要であり、禁止および停止などのアカウントに対して下す決定については、その理由が明確にわかるように、クリエイターに歩み寄る姿勢が求められる」と断言する。

同氏はまた、明確な利用条件も設けて欲しい、とも話す。というのも、クリエイターの利用停止措置に一貫性がないのは、「とどのつまり、曖昧な規定のせいとも言えるからだ」という。

「TikTokには、明確な利用ルールを設けて、そのルールにちゃんと則る必要がある」とアイランドスタイル氏は話す。「偏見に満ちたコンテンツやコメントをあまりにも簡単に上げられる。加えて、TikTokがライブストリーミングを推しているいま、アカウントに関する虚偽報告が山ほどある。それはつまり、クリエイターが何の理由もなく、もしくはろくに確認もされずに、利用を禁止されていることを意味する。利用規程と罰則の決定についても、それを実際に科すことについても、その過程に一貫性がないのは大きな問題であり、それがクリエイターのTikTokに対する不信感につながっている」。

この現在進行形の対処すべき諸問題についてはTikTokも自覚しており、同社は2023年2月前半にアカウント利用制度を改訂した。これは、以前のものがわかりにくいという、クリエイター勢の声に耳を傾けた結果だった。

編集機能の向上

同アプリ上に並ぶ、何時間にも及ぶ大量の超短尺動画を、ユーザーは何の気なしにスクロールするわけだが、その動画がそれなりの手間と時間をかけて制作および編集されている事実は、忘れられがちだ(たとえ素人感丸出しの仕上がりであったとしても)。2万6000人のフォロワーを持つクリエイターのアメリア・ソーデル氏は、動画をアップした後に編集したりキャプションを加えたりできる機能をぜひ加えて欲しい、と話す。

心の健康への配慮

この「常時稼動」な業界で、自らの精神衛生を保つために、クリエイター勢は燃え尽き症候群との戦いを常に繰り広げている。

クリエイターとフォロワーのあいだに境界線を設けるのが重要、というクリエイター勢の見解については、DIGIDAYが以前に報じたとおりだが、フォーエヴァーサミー氏はさらに、「TikTokがPost View(視聴数の確認)機能をすべて排除してくれたら、どんなに嬉しいか」と話す。理由はもちろん、閲覧/視聴数はクリエイターに多大なプレッシャーを与えるからだ。なお、インスタグラムは2022年に心の健康を増進するひとつの方法として、視聴数確認の機能を排除した。

コミュニティの提供

インフルエンサーの活躍の場は基本的に個々のコミュニティであり、コミュニティの忠誠心があるからこそ、クリエイターはブランドと手を組み、その閲覧/視聴数を売上に転換できる。だからこそ、エイミア・ヴァリアン・バリー氏は本拠地のプラットフォームであるインスタグラム(フォロワー数10万2000人)よりも、TikTok(フォロワー数332人)を優先したいとは思わないという。

「インスタグラムには、もう10年も私のアカウントを文字どおりフォローしてくれているコミュニティがあり、そこの人たちは私と私のコンテンツを心から愛してくれている」とバリー氏はいう。また、「しかしTikTokにそれはない。コミュニティ感はまったく抱けない。広告主はとにかく、動画をバズらせて、自分たちの商品にできるだけ多くの目を向けさせたいと躍起になるが、それは息の長い強固なコミュニティを築くという点においては、マイナスでしかない」と話す。

公式ではクリエイターの声に耳を傾けると声明

こうした意見に対して、TikTokは声明文で以下のように回答した。

「動画制作が本業の人も副業の人も、エンターテイナーも教育者も、パーソナルブランドを築いている人も、『ただ楽しいから』創っている人も、クリエイターは全員、TikTokを支えてくれる源です。私たちのプラットフォームはクリエイターが自身の経験を共有し、情熱をキャリアに変え、楽しませてもらいたいと思っているオーディエンスを見つけ、活気あるコミュニティを育む場なのです」。

「私たちはまた、TikTokにおける成功の道筋がひとつでないことも承知しています。だからこそ、私たちはクリエイターがそれぞれのコミュニティを育み、それぞれのジャーニーの各段階において収入源を創造し、それぞれのクリエイティブな夢を(その大小にかかわらず)追い求めるためのお手伝いができる、さまざまな機能を創造しているのです」。

「私たちはクリエイター個々の動機や目標を理解するために、その声にしっかりと耳を傾けます。大切なクリエイターたちがそれぞれの創造性と努力を認められる幅広い機会を、今後もしっかりと提供し続けていく所存です」。

[原文:What do creators really want from TikTok?

Krystal Scanlon(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)

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