HuaweiのメッシュWi-Fiってどう? 「HUAWEI WiFi Mesh 3」を試す【イニシャルB】

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 Huaweiから、家庭用のWi-Fiメッシュシステム「HUAWEI WiFi Mesh 3」が発売された。日本向けの家庭用Wi-Fi製品としては同社初となるメッシュに対応した製品だ。

 Huaweiの通信機器というと企業向けを思い浮かべるが、家庭用での実力を検証してみた。

2台セットの「HUAWEI WiFi Mesh 3」

改善点は2年前からそのまま

 まずは改善点から。

 2年前(2020年3月)、本連載で「HUAWEI WiFi WS5200」をレビューしたが、そのときに指摘した改善点が、今回の「HUAWEI WiFi Mesh 3」でも、そのままだったので、同じことをもう一度記しておく。

MRUの値

 MRUの値が標準で「1492」に設定されている。日本でユーザーが多いフレッツシリーズの回線では、MRUは「1454」なので、標準値を変更するのが難しくても、設定用アプリなどで値の変更について一言触れるべき。

IPv6対応

 MAP-EやDS-LiteなどのIPv4 over IPv6に対応していないのは、海外製品では珍しくないので仕方がないとしても、PPPoEとの組み合わせでIPv6が利用できない。

 IPv6はWAN側の構成に依存する仕様のため、インターネット接続にPPPoEを指定すると、PPPoEからIPv6を取得しようとする。日本は、IPoE方式でIPv6が配布されるケースが多いので、この設定は見直すべき。

デバッグ情報がtarなのにzip

 デバック情報でダウンロードされるファイルがtar形式なのに拡張子がzipとなる。意図的なのかもしれないが、ユーザーとしては通常の方法ではzipを展開できないので困る。

 また、SyslogでIPアドレスの一部が伏せ字になる。通常は単一ネットワークなので、伏せ字でも分からないことはないが、「192.***.*.14」などと表示されるため、分かりにくい。

 グローバル仕様の製品を、最低限の日本語化だけ施して販売するというスタイルは、もはや考え方が古い。同じ中国メーカーでもコンシューマー市場で強いTP-Linkは、日本の市場や通信事情をよく研究しているし、パッケージや取扱説明書など日本市場で重視される項目の改善を年々積み重ねてきているが、Huaweiの製品には、残念ながらそういった点が見られない。

 後述するように、本製品のWi-Fi性能は優秀だ。基本的な通信機能が悪くないのだから、個人的には非常に「もったいない」と思ってしまった。

デザインは秀逸

 では、あらためて製品をチェックしていこう。

 本製品は、同社独自の「HarmonyOS Mesh+」というメッシュ方式に対応したWi-Fi 6対応ルーターだ。2ユニットがセットになったモデルで、実売価格は2万5980円(2022年3月25日時点のAmazon.co.jp価格)となっている。

 最大通信速度は、5GHz帯が2402Mbps(2ストリーム、160MHz幅時)、2.4GHz帯が574Mbps(2ストリーム、40MHz幅時)で、デュアルバンドのメッシュということになる。

正面

 デザインは秀逸だ。形状は円柱タイプで、断面が楕円となっており、やわらかい印象を受ける。ホワイトで底面の台座部分のみシルバーとなっているカラーもシンプルで、ロゴの主張もさほど強くなく、好印象だ。もちろん、アンテナは内蔵タイプでサイズもコンパクトだ。

 メッシュ製品は、家庭内の複数の場所に設定されることから、ホワイト系のシンプルな製品が多いが、その中でも個人的には好みのデザインだ。

 インターフェースは背面に用意されており、有線接続用のポートは、全て1Gbps対応ながら3ポート全てがWAN/LANの自動判定対応だ。つまり、WAN/LANの区別なく、どのポートにつないでも構わない。ケーブルの接続ミスが発生しないので、この機能はとても便利だ。

側面

背面

 有線ポートが3つというのも地味にありがたい。メッシュ製品の多くはサイズをコンパクトにするため、LANポートが1~2基というケースが多いが、本製品は別途スイッチを用意しなくても、2台(親機側)または3台(サテライト側)の端末を有線接続することができる。

HUAWEI WiFi Mesh 3
価格 2万3546円
CPU
メモリ 256MB
Wi-Fiチップ(5GHz)
対応規格 IEEE 802.11ax/ac/n/a/g/b
バンド数 2
160MHz幅対応
最大速度(2.4GHz) 573Mbps
最大速度(5GHz-1) 2402Mbps
最大速度(5GHz-2)
チャネル(2.4GHz) 1-13ch
チャネル(5GHz-1) W52/W53/W56
チャネル(5GHz-2)
新電波法(144ch) ×
ストリーム数(2.4GHz) 2
ストリーム数(5GHz-1) 2
ストリーム数(5GHz-2)
アンテナ 内蔵
WPA3
メッシュ
IPv6 △(WAN側依存)
DS-Lite ×
MAP-E ×
WAN LANのうち1つを自動認識
LAN 1Gbps×3
LAG ×
USB ×
セキュリティ ステートフルファイアウォール
動作モード メッシュ
ファームウェア自動更新
本体サイズ(幅×奥行×高さ) 174×70×107mm

電源を入れるだけでメッシュを自動構成

 設定や管理は、ウェブブラウザーのほか「HUAWEI AI Life」というアプリを利用することもできる。

 パッケージには、簡易的なスタートガイドしか含まれていないが、初期設定時にウェブブラウザーでアクセスすることで、ケーブルの接続方法などのガイドが表示されるようになっている。日本では、紙の取扱説明書を製品へ同梱する方が好まれるが、この方式でも設定に困ることは実質的にないだろう。

 インターネット接続は、「PPPoE」、「DHCP」、「スタティックIPアドレス(固定IP)」から選ぶようになっていて、前述した通り、国内で普及が進むMAP-EやDS-Liteには対応しない。自動判定により、適合すると考えられる方式には「推奨」と表示されるので、設定自体に迷うことはないだろう。

初期設定時に接続方法などのガイドが表示される

MAP-EやDS-Liteはサポートされない

 機能的には比較的シンプルで、セキュリティ機能はルーターで一般的なステートフルファイアウォールが利用可能だ。他社で増えているセキュリティ対策ベンダーとの協業によるウェブフィルタリングやDPIは採用されていない。

 ペアレンタルコントロールは可能だが、MACアドレスベースでの利用時間制限が可能で、ウェブフィルタリングはURLを自分で指定する手動設定となる。

 メッシュの構成については、自動的に実行される。他社製品の場合、ボタン設定やケーブル接続によるメッシュ構成が要求されるケースもあるが、本製品の場合、1台目のメインルーターをセットアップ後、2台目となるセカンダリルーターの電源をつなぐと、自動的に機器同士でリンクを確立し、メッシュ構成が完了する。

 今回のモデルは2パックセットで販売されているため、標準でペアリングが完了済みとなっているわけだ。これは手軽でいい。なお、さらに3台目以降のルーターを追加する場合はペアリング操作が必要となる。

Android端末ならヒートマップも作れる

 設定や管理には、前述したように「HUAWEI AI Life」アプリを利用できるが、このアプリはiOS版よりAndroid版の方が機能豊富でお勧めだ。

iOS版のアプリ。現在の状況や設定などが可能

 iOS版でも、メインとセカンダリのルーターの接続、接続されているクライアントの情報表示、Wi-Fi設定などが可能だが、Android版では、これらに加えてヒートマップを作成できる。

 ヒートマップは、間取りをスマートフォン上で作成可能となっており、なかなか高機能だ。場所ごとに電波強度を測定して、見えない電波を視覚化できるので、どこで電波が弱いのかがすぐに分かる。

 メッシュの場合、どこに2台目を置くかという判断が難しいが、ヒートマップで電波状況を見ながら場所を調整することで、最適な設置場所を探し出すことができる。

間取りをアプリで作成可能

間取りを元に電波強度を計測してヒートマップを作成できる

 また、電波強度だけでなく、配置したルーターごとに何台のクライアントがつながっているのかも見えるようになっている。これにより、例えばリビングのルーターに接続が集中しているようであれば、2台目をリビングよりに配置し直すことで、接続台数を分散させるといったこともできる。

 これは、メッシュの運用面の課題を解決できる非常に強力なツールと言える。メッシュを導入したはいいが、果たして効率的に使えているのか? が分からないケースは多い。他社製品では、ベストプラクティスを経験と試行錯誤からしか導き出せないが、本製品はきちんと目に見える情報で判断することができる。この工夫はすばらしい。

 iOSアプリもこの機能に対応してくれるとうれしいが、技術的に難しい面もあるので、できれば古いAndroid端末などを管理用として用意しておくのがお勧めだ。

パフォーマンスも優秀

 気になるパフォーマンスだが、これも優秀だ。以下のグラフは、木造3階建ての筆者宅にてiPerf3による速度を計測した結果だ。1台のみの場合と、1階に1台目のメインルーター、3階階段付近に2台目のセカンダリルーターを設置した場合の両方で速度を計測している。

iPerf3テスト

1F 2F 3F入口 3F窓際
単体 上り 743 297 148 70.3
下り 864 610 433 302
メッシュ 上り 766 367 301 259
下り 878 527 408 358

※サーバーPC環境 CPU:Ryzen 3900X、メモリ:32GB、ストレージ:1TB NVMe SSD、OS:Windows 10、※クライアント:Microsoft Surface Go2(Intel AX200)

 本製品は、1台のみでもかなり性能が高い。1階で800Mbpsオーバーは当然として、3階の端でも下りで300Mbpsオーバーを実現できている。Wi-Fi 6は性能が高いため、正直、1台でも日本の住宅ならほぼカバーできる製品が多いが、本製品もこうした1台のみでも優秀な性能を発揮できる製品の1つだ。

 一方、メッシュ構成の場合、値としては、3階で下りが302→358Mbps、上りが70.3→259Mbpsとなっており、上りを中心に向上する印象だ。

 個人的に地味にいいと感じたのは、2階の結果だ。今回のケースのように1台目を1階、2台目を3階に設置した場合、ちょうど中間となる2階は、1階につながる場合と、3階につながる場合の2通りのルートが発生する。

 もちろん1階なら直接WANへとアクセスできるが、3階経由のルートだと3階→1階→WANとなるため、経路的なロスが発生する。

 どちらにつながるかは、メーカーによって差が出るのだが、本製品は2階でもロスの少ない1階への接続を自動的に選択してくれた。

 これが、メッシュのアルゴリズムによるものなのか、たまたまなのかまでは判断できないが、個人的にテストした限りでは、メッシュの弱点になりがちな中間的な位置での接続先判定が的確なように感じられた。これは地味にいい。

日本市場にもっとコミットすべき

 以上、Huawei WiFi Mesh 3を実際に試してみたが、冒頭でも触れた通り、「もったいない」印象だ。

 Wi-Fiの性能は高い。メッシュの構成も簡単。Android版のみだがアプリの完成度も高い。しかしながら、グローバルモデルという枠が足かせになっており、日本独自の通信方式やユーザーニーズに対応できていない。コンシューマー市場の攻略には、まだ一歩、実力が不足しているという印象だ。

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