コカ・コーラが フォートナイト 限定フレーバーを出した狙い:「ブランドにとって安全な、巨大プラットフォームだ」

DIGIDAY

ゲーマーはフォートナイト(Fortnite)の世界で、現実世界の店頭にもまだ並んでいないコカ・コーラ(Coca-Cola)の新しいフレーバーを体験できる。

コカ・コーラは4月4日、フォートナイトに専用の島をつくり、ゲームからインスピレーションを得たゼロ・シュガー・バイト(Zero Sugar Byte)という限定フレーバーを発表した。これはフォートナイトが広告プラットフォームとして成熟したことを示す新たな証拠であり、コカ・コーラがエピック・ゲームズ(Epic Games)のメタバース構築計画を信頼している証拠でもある。

コカ・コーラは3月28日、フォートナイトにピクセル・ポイント(Pixel Point)という島を誕生させた。コカ・コーラ一色のネオンカラーの仮想空間で、共同制作のパズルやミニゲームが巨大な瓶や缶に入れられている。コカ・コーラがクリエイティブの案を出し、ゲーム会社であるチームPWR(Team PWR)のフォートナイト・クリエイティブ(Fortnite Creative)部門がデザインしたものだ。コカ・コーラのクリエイティブ戦略担当シニアマネージャーを務めるチェイス・アブラハム氏は「ガードレールを設置した。ブランドの観点から気を付けなければならないことがあった」と話す。「しかし、私たちは彼らに多くの自由を与えた」。

フォートナイトの開発元であるエピック・ゲームズはこのアクティベーションに直接関わっていない。コカ・コーラはチームPWRと独占的にコラボレートし、フォートナイトの体験をデザインした。チームPWRのような企業がコカ・コーラのような大手ブランドと強固な関係を築いていることは、ロブロックス(Roblox)におけるクリエイタースタジオの台頭と同様、フォートナイトでも力強いクリエイター・エコノミーが形成されつつあることを示している。

チームPWRの創業者であるラックラン・パワー氏は「ブランドと協力し、彼らをフォートナイトに参加させ、フォートナイトの公式コラボレーションと肩を並べる。まさにフォートナイト体験の昇華だ」と語る。

「メタバースと見なすものの不可欠な一部」

低カロリーのゼロ・シュガー・バイトは、2月発売のコカ・コーラ・スターライト(Coca-Cola Starlight)から始まった限定フレーバーシリーズ、コカ・コーラ・クリエーションズ(Coca-Cola Creations)の最新作だ。スターライトは宇宙をイメージしたフレーバーと言われており、ゼロ・シュガー・バイトはマーケティング資料で「ピクセルフレーバー」と表現されている。

コカ・コーラのメッセージでもうひとつ印象的だったのは、ゼロ・シュガー・バイトを「メタバース生まれの飲み物」と表現していることだ。メタバースは没入感のあるインターネットの後継者で、ゲームから生まれると考えている専門家もいる。エピック・ゲームズは何年も前からメタバースの構築という目標を公言しており、3D制作ツール、アンリアルエンジン(Unreal Engine)の使い方をブランドに教えるためのワークショップも開催している。しかし、ここ数年、ソーシャルメディアとNFT/ブロックチェーンの両方からライバルが現れている。結局、コカ・コーラはフォートナイトにおける初めてのアクティベーションとしてメタバース体験を選択し、エピック・ゲームズの仮想世界への長年の主張を認めたことになる。

「メタバースは私たちにとって、人々が集まり、これを体験できるデジタル空間だった」とアブラハム氏は話す。

ソーシャルメディアとインフルエンサーマーケティングを専門とするエージェンシー、ファンバイツ(Fanbytes)でクリエイティブ戦略を統括するトム・スウィーニー氏は、「フォートナイトでアクティベーションを行うことで、彼らは安全な道を歩んでいるのだと思う。フォートナイトはブランドにとって安全な巨大ゲームだからだ」と分析する。「ただし、彼らはきちんと認識している。ゲームとゲームから発展したエコシステムが、私たちがメタバースと見なすようになるものの不可欠な一部であることを」。

ブランディングの絶対的基準

フォートナイトでアクティベーションを行うというコカ・コーラの決断は、メタバースの構築というエピック・ゲームズの野心を支持したことになるだけでなく、フォートナイトが主要な広告プラットフォームになったことも示唆している。2018年以降、マーベル(Marvel)、バレンシアガ(Balenciaga)、NFLなどの有名ブランドがフォートナイトに足を踏み入れているが、コカ・コーラが参入したことで、これまでよりはるかに多くのブランドがフォートナイトに注目する可能性がある。

「コカ・コーラは一般的なブランドであり、決して最先端を行くブランドではない。彼らはブランディングの絶対的基準のような存在だ」とスウィーニー氏は話す。「コカ・コーラがやって来て、文化のこの部分を活用すると言えば、私の目から見れば、その正当性が証明されたようなものだ。当然、ほかのブランドもそのように見るだろう」

コカ・コーラの影響力はさておき、近年、フォートナイトへのブランドの関与は大幅に増えている。コカ・コーラはチームPWRとピクセル・ポイントの体験を構築したとき、プレーヤーがゲーム内でのブランドとの関わりにうんざりする可能性を意識し、純粋に楽しむための島をつくることにした。

「私たちの究極の目標は、いつもユニークな本物の体験を提供することだ。コカ・コーラは私たちと一緒に、そのビジョンを真っすぐ見つめてくれた」とパワー氏は振り返る。「私たちはこのように考えていた。『クリエイティブな体験のなかに、ただ広告看板を置くようなことはしたくない。このコラボレーションの一部になりたい。皆がこの世界で築いている体験の一部になりたい』」。

「フォートナイトはほかのゲームよりいい」

スウィーニー氏は、フォートナイトにおける消費者の燃え尽き症候群は現実的な懸念事項だが、コカ・コーラのような大手ブランドが現段階で心配するようなことではないと考えている。今のところ、コカ・コーラのようなブランドがフォートナイトに関与することは、特にピクセル・ポイントのようなゲーマーがつくる体験であれば、ゲーマーのあいだに不信感より興奮をもたらす可能性が高い。

「あるゲームがブランドに認められ、正当に評価されれば、そのゲームのコミュニティは誇りを感じる」とスウィーニー氏は話す。「彼らはこう言うだろう。『コカ・コーラがフォートナイトのスポンサーになったということは、間違いなく、ほかのゲームよりいいということだ』」

[原文:Why Coca-Cola’s in-game flavor announcement validates Fortnite as both an advertising and metaverse platform

Alexander Lee(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:分島翔平)

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