アクシオスのサブスクリプション、創刊1年で200万ドルの売上を獲得:「高額 サブスク を払う読者はコンテンツへの関心が高い」

DIGIDAY

米ニュースパブリッシャーのアクシオス(Axios)がサブスクリプションサービスの「アクシオス・プロ(Axios Pro)」を立ち上げたのは、2022年1月のことだった。その後の1年で、このサブスクリプションサービスは3000人を超える有料会員を獲得し、およそ200万ドル(約2億6000万円)の売上をもたらしたと同社はいう。

創刊1周年を迎えた今、アクシオス・プロは有料会員の契約継続率が100%と、好調を維持している。ただし、年単位の契約オプションしかないため、すでに契約更新時期を迎えた会員がどれくらいいるのかは不明だ(本稿執筆時点で、アクシオスはその割合を公表していない)。同社は、獲得した更新契約と契約更新者向けサブスクリプションパッケージの増加を理由に、2023年の収益を前年比20%増と予測している。つまり、会員たちは2年目に入ってもアクシオス・プロの購読を続けるだけでなく、さらに多くの料金を支払う意思があるというわけだ。

会社負担の購読料は予算カットのリスクも

だが、現在起こっている景気の減速とインフレが、同社のサブスクリプション事業にリスクをもたらしている。とくに懸念されるのは有料のサブスクリプション製品だ。なにしろ、アクシオス・プロの購読料は安くない。メディア業界の動きから医療政策まで、さまざまなトピックについて読者が「深掘り」できるニュースレターの年間購読料は、トピック1つあたり599ドル(約7万8000円)で、すべてのトピックのニュースレターを購読できるサービスは年間2499ドル(約32万5000円)もする(アクシオスは、購読者が支払っている購読料の平均値を公表していない)。

一般に、有料サブスクリプションの購読者はビジネスパーソンであり、その購読料は会社が負担していることが多い。また、法人向けサブスクリプションとして企業に直接販売されているケースもあるが、その場合は複数の従業員がコンテンツを読めるため、1ユーザーあたりの購読料が通常より安くなる。アクシオス・プロもこのような購読者ベースを抱えていることから、不況を乗り切ろうとする企業から余分なコストとみなされ、予算をカットされるリスクがあるのだ。

B2Bや有料のビジネス系サブスクリプションの強みは、ニュースや政治、ライフスタイル系のサブスクリプションと比べて、契約継続率が平均より高いことにあると、FTIコンサルティング(FTI Consulting)で電気通信・メディア・テクノロジー業界グループのマネージングディレクターを務めるジャスティン・アイゼンバンド氏はいう。だが、「企業が経費の削減や見直しを進めるなかで、解約率は上昇している。(ビジネス系コンテンツも)例外ではない」と、同氏は指摘した。

アクシオスで発行人を務めるニコラス・ジョンストン氏は、不況によるクライアントのコスト削減が契約継続率に直接影響している様子は見られないものの、昨今の経済情勢から、自身のチームが販売している製品の品質を担保する必要があると話す。「優れた記者が質の高い情報や素晴らしいスクープ記事を提供すれば、そのコンテンツは人々にとって必読のものとなる。我々が参入したサブスクリプションの分野では、とりわけそうした傾向が強い」。

高額製品だからこそ、読者からは有益なフィードバックが得られる

アクシオスの共同創業者でプレジデントのロイ・シュワルツ氏は、2021年のDIGIDAYポッドキャストで、アクシオスの総売上の半分をアクシオス・プロ事業が占めるようになることを自身の最終目標として掲げていた。だが、1億ドル(約130億円)近い2022年の総売上に対するアクシオス・プロの貢献度は、2%ほどだ。したがって、2023年に購読者を増やすことが、貢献度を高め、ほかの事業との比率を50対50にするために必要なステップとなる。

ジョンストン氏の場合、ニュースレター製品を拡大したり、購読者限定イベントや期間限定の割引セールを開催したり、購読者調査をできるだけ増やしたりすることで、2023年にこの事業を成長させることができるだろう。「サブスクリプション製品に参入すれば、当社のような高額の製品の場合はとくに、読者の目が肥えているため、非常に有益なフィードバックを数多く得られる。500ドル(約6万5000円)とか1000ドル(約13万円)といった金額をクレジットカードで払おうと考える読者は、コンテンツへの関心が高く、コンテンツに対してさまざまな考えを持っているものだ」と、同氏はいう。そのうえで、発行人としての仕事時間の大半は、購読者、潜在的な購読者、それにアクシオス・プロの営業チームと電話で話し、できるだけ多くのフィードバックをもらったりオプションについて検討したりすることに費やされると語った。

アクシオスの広報担当者は、アクシオス・プロが利益を上げているのかという質問に対し、「この事業を新たな垂直展開や新事業に向けた投資と捉えている」と回答した(要するに、答えは「ノー」ということだ)。2月には、テクノロジー政策とエネルギー政策を取り上げた2つの新しいニュースレターを創刊する計画だが、ジョンストン氏によれば、どちらも潜在的な購読者からの意見を参考に企画されたものだという。「人々は、これらの製品がまだ存在しないうちから関心を示してきた。私は(購読を)検討している人たちと電話で話をし、彼らが抱えている課題を教えてほしいと頼んだ」と、ジョンストン氏は述べている。

FTIのアイゼンバンド氏によれば、年間契約や2年契約を促すことが、契約継続率の向上や解約の阻止につながるという。そのため、企業が今年行う可能性があるコスト削減の影響を回避するには、価格が少々安くなる複数年契約のオプションを更新時に提示するのもひとつの方法だと話す。さらに、「コミュニティの構築が、読者のエンゲージメントを高めるのに大いに役立つ可能性がある」と、アイゼンバンド氏は続ける。ただし、「これは最も効果の高いリテンションツールだが、実行するのは極めて難しい」と付け加えた。

[原文:Axios Pro generated $2 million in 2022 with more than 3K paid subscribers

Kayleigh Barber(翻訳:佐藤 卓/ガリレオ、編集:島田涼平)

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