クリニーク は「コー・ラボプログラム」で消費者からのフィードバックをどう活用しているのか?

DIGIDAY

エスティローダー カンパニーズ(Estée Lauder Companies)傘下のクリニーク(Clinique)は、レガシービューティーブランドとして関連性を持ち続けるためには時代の変化に対応しなければならないことを理解している。そこで、クリニークはコー・ラボ(Co-Lab)というプログラムを立ち上げた。このプログラムには、一連の顧客と直接関わり、彼らの最新の価値観と視点を理解する目的がある。

消費者51人が関与したコー・ラボプログラム

クリニークは2020年10月、51人の消費者を有償で募り、コー・ラボプログラムを開始した。参加者は4つのグループに分けられて3カ月間複数の調査と仮想ディスカッションに参加した。2022年2月、黒人歴史月間に合わせてコー・ラボの結果が発表された。これには参加した51人の女性の写真や彼らが制作したビデオ日記、クリニークのキャンペーンにおいてコー・ラボのフィードバックを使う計画などが含まれていた。コー・ラボの設立や影響の詳細について今になって発表されたのは、同社がこのプログラムについて共有できる結果が出るまで公に宣伝するのを控えていたからである。

「振り返ってみると、2020年の出来事はどれも文化的な観点から起こっていた。当社には大規模なコミットメントがたくさんあったが、寄付以上のことをしたいと思った」と述べているのは、クリニーク北米のマーケティング担当副社長、サミーア・アガルワル氏だ。「もっとも大規模で歴史あるビューティブランドの1社として、模範を示しながらも謙虚にリードしていきたいと思った」。

アガルワル氏によると、クリニークは女性たちと1対1でつながり、美容やビューティ業界、クリニークについてどう感じているかを知ろうと試みた。得た情報を利用してクリニークの将来の方向性を示したいと考えたのだった。参加者は、クリニークが2019年に別の消費者調査イニシアチブで協働したメディアエージェンシーのB&Aによって集められた。クリニークはまた、同社が所有するソーシャルチャネルを通じてコー・ラボの取り組みを宣伝し、閲覧者をランディングページサイトに誘導して参加登録を促した。同社は、アガルワル氏がいうところの「アメリカの一面」を代表するあらゆる年齢層からの民族的、人種的に多様な消費者のグループを求めていた。

4時間におよぶ仮想セッションが何度か行われ、その中にはB&Aの担当者がモデレートしたもの、自主制作ビデオ日記についてのもの、アガルワル氏はじめクリニークの重役らが出席したグループディスカッションなどがあった。アガルワル氏によると、クリニークはコー・ラボを内省的な機会と捉えていたため、重役らは双方向に対話するのではなく聞き手として参加した。個人個人の参加者にとって美が何を意味するかを中心に議論がなされ、またビューティ業界が期待を満たしていない点やクリニークに求められていることなどについても語られた。

インクルーシビティを推進する必要性

アガルワル氏によると、浮かび上がったテーマで重要なものには、業界とクリニークの双方が肌の色や人種を超えて表現の範囲を拡大すべきだというテーマがあった。これには、マーケティング素材にさまざまな年齢の人々、妊婦、障害のある人々、特別なニーズを必要とする人たちを起用することがある。この会話と調査結果はその後の同社の広告とマーケティングに活用され、インスタグラムをはじめほかのソーシャルメディアチャネルはよりインクルーシブになってきている。たとえば、2021年8月、クリニークは特別なニーズを持つ一女性を起用したアルタビューティ・アット・ターゲット(Ulta Beauty-at-Target)キャンペーンを実施した。クリニークはクリエイティブコンセプトと製品開発全体でコー・ラボから得た洞察の利用方法について引き続き検討しているとアガルワル氏は述べている。

クリニーク北米のクライアントエンゲージメント担当エグゼクティブディレクター、マイア・マーティン氏は次のように述べている。「良くも悪くも美の基準にどう影響を受けたかを語る女性は多く、また彼女たちはビューティ業界に期待することについても述べている。多くの女性が理想的な美しさと自分を比べてしまうと言っているが、比較すると喜びが失われることもしばしばある。この点を理解して、当社は髪のタイプや体型、性別などの多様性を表現する必要性についていっそう認識している」。

ブランドはもはや美の定義者ではない

美のナラティブを指図することについては無干渉主義でありながらも、顧客のニーズに応える製品を提供するブランドになるという2点のバランスを取るのは簡単ではない。大部分のビューティ製品には、改善、修正、予防、または何らかの解決策を提供するという目的があり、目指すべき美の基準を顧客に提示することは依然として売上を推進する主要な基盤である。だが、クリニークをはじめとするブランド側は、美とは何か、誰が美しいのかについての議論をもはや指図することはできないのである。

「女性たちは美を押し付けられるのはごめんだと思っている。自分らしい美しさを見つける力を得たいのだ」とアガルワル氏。「我々の仕事は、女性に力を与えつつ(当社の製品について)効果的に伝えることだが、同時に製品はすべての人々向けであることも示さなければ。30年前は厳選した出版物でのみ宣伝して、当社が美を定義していたが、今では当社製品を選べる力を皆に与えて、なぜ当社を選ぶべきかを伝えることにシフトしている」。

消費者のフィードバックに耳を傾け続けるクリニーク

クリニークは将来またコー・ラボを実施したいと考えている。同じ女性たちのグループか、新規の参加者と追加の参加者のグループでの実施を目指している。マーティン氏によると、諮問委員会を設立して、年に数回選ばれた女性グループと話し合い、新製品やキャンペーンについてのフィードバックを得るという別のアイデアもあるという。

「将来の計画についてはまだ話し合いの初期だが、2020年の出来事や米国の変化を考えると、人々を支援して、寄付以上のことをするのが重要だと思う」とマーティン氏。「そうすることでクリニークとのつながりを感じてもらえるだろう。つながりを推進することは、当社にとって重要であるし、また、消費者とのエンゲージメントの方法にも重要だ」。

[原文:How Clinique leveraged Co-Lab, its consumer feedback group

EMMA SANDLER(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)

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