BNPL (後払い)サービス各社、実店舗での普及に注力:スプリティットはPOS端末のインジェニコと提携

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eコマースへの支出が頭打ちになるなか、後払い(Buy Now, Pay Later、BNPL)サービスを提供する決済プロバイダは、ビジネスを促進する方法として、実店舗での販売を続けている。

ホワイトラベルのBNPLプロバイダであるスプリティット(Splitit)は今月2月、POS端末のインジェニコ(Ingenico)と提携し、顧客がサードパーティーの決済プロバイダと契約しなくても、チェックアウト時に加盟店が支払いプランを顧客に提供できるようなサービスを開始した。

インジェニコは現在、全世界で30万社の加盟店に約4000万台のPOS端末を提供しており、この新サービスはクラウドベースのシステムを通じて追加される。

スプリティットのCEOを務めるナンダン・シェス氏は次のように述べる。「当社の加盟店の多くは、分割払いサービスによってオムニチャネル体験を提供したいと考えている。従来型のBNPLセルでは、新しいローンが開始されてから7段階の登録と引き受けプロセスを行う必要があるのに対し、当社の方法は面倒がなく、完全に埋め込まれたものだ」。

実店舗でのBNPL普及をめざす

ワードプレイ(Wordplay)によれば、BNPLは2025年までに全世界のeコマースの取引の約5%を占めると予測されているが、小売の全取引の約85%を占める実店舗小売ではそれほど普及していない。そのためBNPLプロバイダは、この市場に浸透するための新しい方法を模索してきた。たとえば2022年中盤にアファーム(Affirm)クラーナ(Klarna)はどちらもデビットカードをリリースし、利息なしで分割払いを行えるようにした。一方、スクエア(Square)が所有するアフターペイ(Afterpay)のアプリでは、顧客が、加盟している小売店でBNPLを使用でき、スクエアのPOS端末に組み込まれたオプションでもある。

シェス氏は、BNPLに対する店頭での需要は、家具や、高級アパレル、ホームセンターなど高価な商品のカテゴリーで成功する可能性が高いとしている。これらは購入前に十分な検討が行われる種類の商品だ。買い物客は買い求める前に実際の商品を見たいのが一般的であり、商品の価格が500ドル(約6万7500円)から5000ドル(約67万5000円)に達するのが普通だ。

同氏は、インジェニコのプラットフォーム上で使用されているスプリティットのホワイトラベル技術を使えば、顧客はサインアップや別のアカウントの作成を行う必要がないため、主要な競合他社と比べて優位点を発揮できると考えているという。

また、利用者が手数料や利息をスプリティットに支払う必要はなく、同社はこのサブスクリプションベースのサービスを使用する加盟店に課金することで収益を得る。加盟店側は、スプリティットのオプションを自社のPOSに組み込むかを自身で決定できる。

このプログラムは2月1日に発表されたもので、いまだ運用開始作業中であるため、シェス氏は加盟店について共有できるデータをまだ保有していない。

「市場の規模と、面倒のない体験を提供したい加盟店のニーズを考えれば、需要は膨大なものだ」と、同氏は述べている。

使用パターンとリスク

取引の大部分は依然として店舗で行われるため、小売業者と支払処理業者はオフラインでの販売への注力をますます強めている。アファームのCEOを務めるマックス・レブチン氏は、2月8日に株主に送付した手紙で、同社のデビットプラス(Debit+)カードは「確実性の高い賭け」だと述べた。

このカードは顧客の銀行口座にリンクされているため、顧客は買い物の全額を支払うことも、期間にわたって分割払いにすることもでき、利息なしにクレジットカードと同様に柔軟な支払いが可能だ。デビットプラスの利用者や取引の数について具体的なデータは公表されていないが、約数万人の消費者が利用しており、同社は「自社のユニットエコノミクスを微調整する」作業を行っていると、レブチン氏は語る。

加盟店にとって、店頭での買い物にBNPLを統合するのは、サードパーティー経由でPOS端末に追加するのと同じに見えるかもしれない。たとえばファストファッション小売業者のフォーエバー21(Forever 21)では、対面での買い物客がクラーナやアフターペイを選択できる。最高マーケティングおよびオムニチャネル責任者を務めるヤコブ・ホーキンス氏は、非公開のブランドである支払い方法の内訳の内容を共有できないが、店舗でのBNPLの提供は実装に成功したと、米モダンリテールに語った。

同氏はこれについて、クレジットカードを保有していないが、その日に支払いを行わずに商品を入手したいという顧客へのサービスだと語る。2021年4月にペイパル(PayPal)からの委託によって行われた調査では、ミレニアル世代とZ世代のBNPL利用者の79%は、このサービスを利用できる加盟店で繰り返し購入を行う可能性が高いことが判明した。

「一部の顧客にとっては、クラーナでもアフターペイでも、違った形のクレジットでしかない」と、同氏は述べている。

滞納のリスク

分割払いの購入向けに「今は貯めて、あとで購入(Save Now, Buy Later)」オプションを提供するアクルーセービングス(Accrue Savings)の創設者兼CEOのマイケル・ハーシュフィールド氏は、BNPLは顧客向けの柔軟なオプションだが、負債を生み出す可能性もあると語る。2022年7月のフィッチ・レーティングス(Fitch Ratings)では、大手BNPLプロバイダのあいだでの滞納が、数四半期のあいだに2倍以上に増えたことが明らかになっている。

「分割払いという考えは、顧客がいて、商品を欲しがっており、今後も導入が進むと思われる。しかし、これにはリスクもあり、このカテゴリーにおける滞納の増加にそれが表れている」と、同氏は述べる。

それでも、スプリティットのシェス氏は、新しいPOS端末に対して、滞納のリスクなしに柔軟な支払いを実現する方法として強気な態度を示している。

同社はほかのいくつかのBNPL運営業者とは異なり、購入時にローンを引き受けない。その代わりに、購入者が保有している既存のクレジットを使用し、分割払いでそこから請求する。既存のクレジットを使用することで、買い物客は新たなローンや支払いを負う必要がなくなると、同氏は述べている。

シェス氏は次のように述べている。「従来のBNPLを見ると、彼らはまだ表面的なPOSでさえ活用していないことが明らかだ。これらの業者を利用するにはいくつもの手順を要し、ローンの引き受けも必要になるからだ。当社にはこのような面倒がない。この提携を実行すれば、そのパートナーシップによって、非常に簡単にPOS分割払いの市場リーダーの座を勝ち取ることができるだろう」。

[原文:Why Buy Now, Pay Later services like Splitit are focusing on physical retail]

Melissa Daniels(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Splitit

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