2030年には500億ドル市場に 「ラボグロウンダイヤモンド」が低価格で映えるラグジュアリーとして人気に

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宝石類を買う人々は、ラボグロウンダイヤモンド、すなわち実験室で人工的に作られたダイヤモンドやそのほかの宝石に目を向けることが増えつつある。このトレンドは、採掘されるダイヤモンド、すなわち天然ダイヤモンドが高価なこと、ラボグロウンダイヤモンドが入手しやすくなったこと、そして輝く宝石を身に付けたいという欲求の高まりから生み出されている。

ラボグロウンダイヤモンドの領域において、ブライダルブランドとファインジュエリーブランドは、どちらも近年売上が増加していると報告している。D2Cジュエリーブランドのリングコンシェルジェ(Ring Concierge)は、ラボグロウンダイヤモンドのエンゲージリングの売上が2022年に前年比で3.3倍に増加した。また、1万ドル(約133万円)から1万5000ドル(約200万円)の最低価格ラインにおいて、同ブランドは2020年から2022年にかけて2.5倍以上の成長を遂げた。

この分野の専門家は、ラボグロウンダイヤモンドが低価格であり、より大きく見栄えの良いものをわずかなコストで入手できることが顧客を引きつけていると語る。たとえば、3カラットの天然ダイヤモンドは3万ドル(約399万円)なのに対して、ラボグロウンダイヤモンドは1万4000ドル(約186万円)だ。そして、多くのジュエリーブランドが、独自のラボグロウンの商品リリースするようになり、一部の顧客が抱いていた、「本物のダイヤモンドではない」という懸念も解消された。

2030年には500億ドル市場に

リングコンシェルジェ(Ring Concierge)のCEOを務めるニコル・ウェグマン氏は、次のように述べている。「天然ダイヤモンドの価格は上昇してきたのに対して、ラボグロウンダイヤモンドは供給が爆発的に増えていることから価格が低下してきた。そのため、顧客は『人工ダイヤモンドなら低価格で3カラットのものを買える。天然ダイヤモンドなら2カラットも買えるか怪しい』と考えるようになってきた」。

アライドマーケットリサーチ(Allied Market Research)は、ラボグロウンダイヤモンド市場が9.4%のCAGR(年平均成長率)で伸び、2020年の約190億ドル(約2兆5300億円)から2030年には500億ドル(約6兆6500億円)近くに達すると予測している。また、これはジュエリー業界全体のごく一部ではあるが、このセグメントが成長中であることがさまざまな兆候から示唆されている。コンサルタンシー企業のテノリス(Tenoris)によれば、2022年10月に、ラボグロウンダイヤモンドはエンゲージメントリングの売上において、前年の6%から、10%を占めるまでに増大した

しかし、業界の観点からは、反応はさまざまにわかれる。一部のブランドはこのトレンドをいち早く取り入れている。LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)のベンチャーファンドは昨年夏、ラボグロウンダイヤモンド製造元のルシックス(Lusix)に9000万ドル(約120億円)を投資した。ファッションジュエリーブランドのパンドラ(Pandora)は、今後天然ダイヤモンドを使用しないとことを発表し、8月には、ラボグロウンダイヤモンドの商品ラインを発表した

ラボグロウンをラインナップに加えるブランドが増加

サムロングタイム(Somelongtime)の宝石商は、業界専門家のマーティン・ラパポート氏も含め、ラボグロウンダイヤモンドが「本物のダイヤモンド」ではないと攻撃してきた。しかし、連邦取引委員会(Federal Trade Commission)での「ダイヤモンド」の定義は、科学的な品質に基づいており、採掘か栽培かで区別されるものではない。

リングコンシェルジェのウェグマン氏は、今日の市場にはラボグロウンと天然の両方のダイヤモンドが存在する余地があるといい、同氏の会社はどちらの分野も大切であると捉えている。同ブランドは2013年、エンゲージメントリングのカスタムデザイナーとして創業した。そして今日まで、このカテゴリーの顧客のほとんどは依然として天然ダイヤモンドを求めている。しかし、ラボグロウンダイヤモンドへの需要は年々着実に高まっており、リングコンシェルジェは12月、すぐに出荷可能なラボグロウンダイヤモンドのエンゲージメントリングの商品ラインを立ち上げた。

「当社は巨大な顧客ベースを保有し、さまざまな価格帯の商品を提供している。これは、我々の商品を可能な限り多くの人々が購入できるようにし、多くの人々に身に付けて楽しんでもらいたいからだ」と、ウェグマン氏は語る。

供給の改善

ルイ・カルティエ氏の玄孫であるジーン・ドゥセット氏は、同氏の名が由来となったジュエリー商品ラインに、すぐに購入できるラボグロウンダイヤモンドのコレクションを新たに加えた。同ブランドがラボグロウンダイヤモンドの販売を開始してから約1年後のことで、現在では同社の売り上げ全体の約75%を占めている。

同氏は、ラボグロウンダイヤモンドや宝石の製造技術の向上に合わせてデザインを行っていると、米モダンリテールに語った。

「当社はこれまで、ラボグロウンダイヤモンドにあまり関心を持っていなかった。それは、当社が使用できたラボグロウンダイヤモンドはカット、透明性、色、カラットの点で満足のいくものではなかったからだ。長年のテクノロジーの進化により、現在ではラボグロウンダイヤモンドは、天然物と同じ第三者認証を得ながら、天然物よりもはるかに低コストで顧客に提供できるようになり、天然物と対等の立場で競えるようになった」と同氏は、米モダンリテールへのメールで述べている。

しかし、これらの商品はマスマーケット向けではない。新しい商品ラインには、テニスブレスレット、ネックレス、イヤリングがあるが、価格は1200ドル(約16万円)から1万9800ドル(約263万円)で、依然としてラグジュアリー中心の商品だ。それでも、天然ダイヤモンドを使用するよりは低価格だと同氏は述べている。

「ラボグロウンダイヤモンドのおかげで、より多くの人々が、これまでは手が届かなかったような精巧な細工のデザイナーリングや宝石類、そしてより高品質のダイヤモンドを入手できるようになる」と、同氏は述べる。

花嫁からの需要

ドゥセット氏は、顧客調査を行った結果、顧客の4分の3はラボグロウンダイヤモンドのジュエリーを望んでいることが示されたという。この需要が特に強いのはブライダルのカテゴリーで、花嫁は同じ価格でより大きなサイズのダイヤモンドを切望している。

「3カラットは昔の1カラットと同じ扱いをされるようになっている」と同氏は述べており、いくつかのデザインではさらに大きな7カラットや10カラットの石も使用されている。

リングコンシェルジェのウェグマン氏は、花嫁が目立つ大きな指輪を欲しがるのには、ソーシャルメディアも一役買っていると語る。

同氏は次のように述べている。「婚約は非常に公的でソーシャルな瞬間だ。だから、その場で指輪を自慢したいという思いが強くなる。背伸びをして必要以上に多くの金額を出したり、ラボグロウンダイヤモンドを選ぶことで見せびらかしたくなるような大きなカラット数の石を入手する動機付けになると、私は考えている」。

しかし、このような買い物をするときは、ある程度の認識と教育も必要となる。リングコンシェルジェのプレジデントを務めるケイティ・ビロダウ氏は、ラボグロウンダイヤモンドを選んだ顧客に対し、市場でのリセール価値が下落する可能性があることについて、十分な認識を持つように、同ブランドのカスタマーサービス担当者が努めているという。

逆に、天然ダイヤモンドは、市場によっては、長年にわたって価値が評価される可能性があると、同氏は述べている。

「1年後の価値はわからない」と、同氏は述べる。

人気の高まり

メグ・ストラチャン氏が2019年に創設したドーシー(Dorsey)は、ラボグロウンの宝石のみを扱うファインジュエリーブランドで、ラボグロウンの白色サファイア、ルビー、エメラルドなどの色付きの石を使用している。同ブランドは2021年から2022年に、セレブリティのインフルエンサーのあいだでトレンドの選択肢となったことが後押しとなり、収益が前年比で600%も増加した。ヘイリー・ビーバー氏とジャスティン・ビーバー氏もそのふたりで、ジャスティン・ビーバー氏は前回のツアーでドーシーのネックレスを着用していた。

「同氏が当社の商品を選んだことは、ラボグロウンダイヤモンドの業界全体にとっても、当社にとっても重要なことだ。しかし総合的に、これによって業界全体の推進に弾みがついた」と、同氏は述べている。

ドーシーのリビエール(Riviere)のネックレスと、それに合わせたテニスブレスセットの商品ラインは何回も売り切れとなり、順番待ちリストの顧客は3万人にもふくれ上がっている。

ストラチャン氏は、顧客の大部分が30代前半から50代で、多くの場合は自分のためのショッピングだと語る。

これもまた、業界の変化を表している。

「特にリビエールのネックレスとダイヤモンドのブレスレットは、人生の重大な瞬間の贈り物として知られていたものだ。そのため、年に数回のホリデーを除いて、当社の主な顧客が自分のために買い求めているのは大変興味深いことだ」と、同氏は述べている。

[原文:Lab-grown diamonds are being embraced as affordable luxury options]

Melissa Daniels(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Ashley Barrett/Dorsey

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