ボックス・メディア、 コマース ニュースレター拡大を計画中:「今後人々は、より予算を意識して買い物をするはずだ」

DIGIDAY

ボックス・メディア(Vox Media)はいま、ショッピングコンテンツを追加するのにふさわしいタイトル、ニュースレター、フランチャイズを見極める作業を進めている。方法は、既存のニュースレターにコンテンツを追加するか、あるいは新たにeコマース専用のニュースレターを立ち上げるかのいずれかだ。同社のeコマース担当シニア・バイスプレジデント、カミラ・チョウ氏によれば、「健全な」定期購読者ベースとエンゲージメントの適切な組み合わせを見つけることが重要だという。

チョウ氏のチームは、ニューヨーク・メディア(New York Media)による「ストラテジスト(The Strategist)」――彼女いわく「スープからナッツまで」幅広いおすすめ商品を扱うタイトルだ――の旗艦ニュースレターを運営している。このチームは、そこで得られたインサイトをボックス・メディアのテクノロジーニュース、バージ(The Verge)のチームとのあいだで共有し、同誌が2020年にニュースレターをローンチする際のサポートを行った。また現在は、ボックス・メディアが手掛けるそのほかのタイトルに対しても、ニュースレターにeコマースを取り込むことについてのアドバイスをするほか、ショッピングに特化したニュースレターの立ち上げにも取り組んでいる。なおボックス・メディアの広報担当者は、同社のニュースレターの購読者数やニュースレターから得られる収益についての言及を避けた。

以下の発言には読みやすさを考慮し、多少編集を加えてある。

◆ ◆ ◆

――あなたのチームでは、既存のニュースレターにより多くのコマースコンテンツを盛り込むことを検討しているのか? それとも、ショッピングコンテンツを必要としないオーディエンスを避け、新たに別のニュースレターを立ち上げるほうが理にかなっていると考えるのか?

いま、すべてのブランドの棚卸を始めようとしているところだ。各ブランドがどのようなニュースレターを配信しているか? 週1回配信するショッピング専用のニュースレターであれ、既存のニュースレターにショッピング要素を取り入れるのであれ、こちらがショッピング関連のニュースレターを配信することで、それを役立ててくれるような、ショッピングにフォーカスしたオーディエンスがそこにいるのかどうか? そういったことを見極める。

バージがディール(お買い得情報)のニュースレターをローンチする前は、果たしていつものニュースレターの購読者がセール品や製品レビューのまとめ情報に興味を持ってくれるのかどうか、確信が持てなかった。でもバージのサイト上にあるディールのコンテンツを通して、そのページを訪れる人たちが非常に深い関心を寄せていることがわかった。それで、どちらかといえば「バージ」の一般的なテック・ニュースを読みたい人向けの内容だった既存のニュースレターにeコマースを押し込むのではなく、ニュースレターそのものを「バージ・ディール」という新しいブランドとして独立させるほうが合理的だと考えた。では我々のポートフォリオのなかの、いったいどの部分でそれが可能か? 私たちは「ストラテジスト」の日々の制作業務だけではなく、こういった検討も始めている。

――コマースコンテンツを追加するのに適したタイトルやニュースレターは、どのように見極めるのか?

eコマースコンテンツの経験があるブランドだと助かる。理想的には、いくつかの有用なデータを求めている。そのサイトのユーザーの興味を引くのに適切な製品カテゴリーは何か? コンバージョン率が高そうな小売店はどこか? 価格帯はどうか? ユーザーは高級志向なのか、それともバーゲン情報に目を光らせているタイプか? これらはすべて、eコマースの記事を通して伝えられる価値ある情報である。ユーザーの関心を引くニュースレターを作成するための第一歩として、こうした情報を得ることが重要だ。

すでに多くのアドレサブルなオーディエンスが構築されているニュースレターなら、大歓迎だ。こういう戦術には数字ゲームみたいな面もあって、そこそこの規模のリストでも、実際にメールを開くオーディエンスはそのうちの一定割合だけ。そこからクリックスルーまでしてくれるのは、さらにその一部だ。ごく小さなリストでニュースレターを始めるなら、チャンスはもっと小さくなる。そして重要なのは、定期的にメールを開封し、その内容に興味を示してくれるような、熱心なオーディエンスがいるリストであること。こうした行動は、健全かつエンゲージされた購読者リストである証だ。

――ニュースレターへのショッピングコンテンツの追加を検討する際に、想定するリストの規模はあるか?

想定はしているが、ある程度は各ブランドにもよると考えている。数字を提示すると、各ブランドにとってはある種の「目標到達点」のようなものになってしまい、「我々はまだその域に達していないから、もうこれを追求するのは無駄だ」と思わせてしまう。そのようなことにはしたくないので、現時点では、できれば数字は出したくない。私たちが共に仕事をしたい理想的な相手とは、現在も成長する努力を続けていて、新規獲得に積極的で、かつリストを成長させるためのアイデアを持っているメールリストだ。そうでなければ、同じ人に何度も繰り返し当たることになる。それがニュースレターのメールリストの難しいところだ。

――具体的に、どのニュースレターにコマースコンテンツが追加されるのか?

どこにチャンスがありそうかは、感覚的にわかっているのだが、それについていまコメントすることは差し控えたい。まずはプロセス全体を一通り行い、細かいところまで精査して完璧を期したいからだ。ひとつお話しできるのは、「ポップシュガー(PopSugar)」にはもっといろいろなことができると考えている。ポップシュガーのチームは、自身のビジネスにおけるニュースレターの役割をさらに掘り下げていこうと、熱心に取り組んでいる。「ポップシュガー・マストハブ(PopSugar Must Have)」というサブブランドも持っている。これは我々の取り組みを活性化するのに最適な優れたブランドだと思う。

――では、ショッピングコンテンツを追加しないタイトルやニュースレターは?

おそらく、「ナウディス(NowThis)」や「ボックスドットコム(Vox.com)」などの、よりニュースに特化したブランドだろう。これらのオーディエンスは意識が少し違っていて、最新のニュースや情報、専門家の意見に基づく内容などのコンテンツに興味を持っている。こうしたオーディエンスに強引にショッピングコンテンツを押し付けることは、たとえ最高に買物気分が盛り上がる時期であっても、あまり意味がないのではないかと思う。私たちが探しているのは、もっとライフスタイル寄りのブランドであって、ボックス・メディアのポートフォリオのなかにはそういったブランドはたくさんある。

――ボックス・メディアのコマース収入を伸ばすということだけでなく、さらにこのような取り組みが重要なのはなぜか?

これは私たちのショッピング・オーディエンスを多様化する大きな取組みのなかのひとつだ。私たちは、Google検索を通じたオーディエンス獲得だけに過度に依存したくないと考えている。もちろんGoogle検索が重要でないという意味ではない。Google検索は、とても、とても大切なものだ。現在もインテントドリブンなトラフィックを数多く誘導するために、このチャネルに頼っている。だが過剰に依存することはせず、ショッピングのオーディエンスを獲得するための多様なチャネルをうまく組み合わせていきたいと考えている。eメールは非常に高いエンゲージメントとロイヤルティを備えたチャネルなので、私たちはそこに注力していくべきだと考えている。

――今回のニュースレター戦略は、コマースビジネスに影響を及ぼすマクロ経済的な要因への対応でもあるのか?

マクロ経済の状況に対応するために考え出した戦術というわけではないが、いま実際に目にし、感じ始めているマクロ経済の状況を考えれば、結果的に有用であったことがわかってくるだろう。私たちはセールスカバレッジを強化しているところだ。今後人々は、より予算を意識して買い物をするようになる。eメールは、ディールのような「期間限定の」コンテンツを、直接オーディエンスの受信トレイに届けることを可能にしてくれるだろう。

[原文:A Q&A with Vox Media’s Camilla Cho on the publisher’s commerce newsletter expansion

Sara Guaglione(翻訳:SI Japan、編集:黒田千聖)

Source

タイトルとURLをコピーしました