日本の CBD 市場、今後拡大の可能性はあるのか?:CBDブランド経営者3人が語る【IGTVレポート】

DIGIDAY

北米を中心にビジネストレンドとしても勢いを増して、合法大麻を取り扱う「グリーンラッシュ」と呼ばれる現象がここ数年、世界各地で巻き起こっている。日本において大麻は規制薬物だが、合法的に使用が認められているCBDは、大麻草の成熟した茎又は種子のみから抽出・製造されていること、または化学合成により得られたCBDを用いて製造されていることが条件となっている。
参考*「CBD製品の大麻非該当性の確認について」 厚生労働省麻薬取締官ホームページ

2020年からのコロナ禍によりメンタルヘルスケアの重要性を後押ししたこともあり、国内でもCBDプロダクトを扱うブランドが急増。いまでは180ブランド以上あると言われている。Glossy Hot Liveでは、日本のCBD市場の革命期ともいえるタイミングで関心が高まってきたCBDを主軸にブランドを立ち上げた3名をゲストに迎え、行く末を語ってもらった。

Glossy Japanでは、Instagramでも情報発信中。いま注目のD2Cブランドのキーパーソンなどをゲストに迎え、インスタライブ「Glossy Hot Live」を開催しています。

本記事では、このGlossy Hot Liveにおける「CBDの未来を語る」回の内容をテキストでサマライズ。なお、読みやすさを考慮して、編集を加えている。

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CBDブランドを広めていく過程で立ちはだかる壁

「WALALA(ワララ)」/CEO・Founder 柴田マイケル空也氏

東京を拠点に100%合法の日本製CBDスキンケアアイテムを展開するブランド「WALALA(ワララ)」を2020年8月にスタートした柴田マイケル空也氏は、「日本ではまだ大麻に対してアレルギーがあり、そもそもCBDについて知らない人が多いという印象」と、CBD自体の認知度の低さを実感していると話す。「すばらしい効能はECサイトやSNSなどオウンドメディアや印刷する資料にいたるまで、具体的に明記することが薬事法上できないというもどかしさがある。多くの人がCBDをどういうものか知っているアメリカとは違い、かなり啓蒙していく必要性を感じる」。

オウンドメディアで詳細に説明できない現状について、「直接的ではないにしても、商品について伝えていくにはある程度テクニックが必要だ」と話すのは上地牧人氏。今年3月に、運営しているLGBTQメディア「GENXY(ジェンクシー)」から、「PEAQ(ピーク)」というCBDブランドを立ち上げた。「運営しているメディアと商品を説明しているブランドサイトは完全に切り分けられているけれど、薬事法上、どういう効果があって、どんな症状のときに使ってなど、詳細に説明できないジレンマは常にある。今はアーリーアダプターと呼ばれる先進的な人たちが興味を持ってくれているが、CBDの一般への浸透率はまだ低いと実感」。

麻由来の成分を使用したジェンダーレスかつエイジレスなスキンケアアイテムをはじめ、サプリメントなども扱っているCBDのライフスタイルブランド「MUKOOMI(ムコーミ)」の代表を務める吉川プリアンカ氏も、「製品についてきちんと説明したくても薬事法上、むずかしい」と、同じような壁を感じている。「広告を出稿することができない事情もあり、認知度を上げる努力は重要だが、それと同時にCBDについて理解してもらうためのエデュケーションが必要」と話す。

可能性あるCBDの安全面に関して考慮していること

CBDの効能が多岐に渡っていることもあり、ブランドが取り扱っている内容もさまざま。ゲスト3名が手がけているブランド「WALALA」と「MUKOOMI」はビューティーやウェルネス、「PEAQ」はセルフプレジャーと、ジャンルはそれぞれ異なる。製品を幅広く展開できるCBDには可能性を感じられるものの、知識が浸透しにくい理由のもうひとつに、安全面を心配している人が多いという事実がある。

「PEAQ(ピーク)」/ディレクター 上地牧人氏

CBDの効能に関しては説明したくてもできない事情があるが、「工場やファームとの連携は密接で、成分の分析結果をすべて開示するなど、製造面や原料については透明性をキープ。良質な麻による良質なCBDを原料にした商品を提供している」とは吉川氏。気軽に連絡できるカスタマーサポートも充実させ、不安を取り除く手立ては常に講じているそうだ。

同じくスキンケアアイテムを手がけている柴田氏は、「CBDの成分自体、非大麻由来の有機化学合成で作られていて、ヨーロッパでCBD配合の食品を売る際に必要な認証“ノベルフーズ”も獲得。かなり厳しい基準をクリアしている」と、安全性は担保できていると話す。上地氏も、安全確保のためにできることはすべて実行し、大麻草や有機栽培で無農薬、CBD以外の大麻由来成分などは一切使わないことを徹底している。

医療大麻解禁の可能性と日本でのCBD市場の動向予測

CBDに関する制度や法律が日々変わっている現状、認知して知識を得てもらう以前に、CBDブランドを展開するにあたりハードルは多い。そんななか、日本でも2022年には医療大麻が解禁されるのではないかと一部では話題に上っている。

アメリカのCBD事情に詳しい柴田氏は、「アメリカではCBDは医薬品として扱われていて、子供のてんかんの治療薬として処方されることがある。日本でも検証されているようだが、法律や規制の内容によっては、逆に食品や化粧品、サプリメントなどに使えなくなるリスクも考慮しておかなくてはならない」と、日本での医療大麻解禁について考察。CBD市場については、「日本ではグリーンラッシュの現象は起こらないと思う。ただ、CBDの効能を考えると、カフェインやニコチンのように市場が拡大していく可能性は感じている。ただし、法整備などが遅れている日本では、合法大麻の「グリーンラッシュ」は10年くらいはかかるのではないか」」。

吉川氏も「物事が新しく変わるときの変化に時間のかかる日本のCBD市場の進捗は、他国と比較するとどうしても遅い」と、現状を示唆。「ここ数年、日本の美容業界でもCBDは注目されているので、今後マーケットが大きくなる可能性を感じる」と続ける。

「MUKOOMI」/CEO・Founder 吉川プリアンカ氏

上地氏は現状に関して、「今後CBDが完全に規制されることはおそらくないと思っているが、ルールがアップデートされたとき、正しい業者以外は淘汰されていく可能性も。マーケットとしては、大麻が解禁されてグリーンラッシュのように活性化されると嬉しいが、現実的には厳しいと思う」と、市場拡大には時間がかかると推測。それでも健康需要が高まるなか、今後CBDの勢いが増しそうなジャンルは、心をケアするマインドフルネスを叶えるウェルネス業界や、ノンアルコールブームに便乗して飲料業界ではないかと睨んでいる。

CBDに魅了されたユーザーの声を拾い上げ、コミュニティを構築しながら市場を盛り上げていくという思いは共通。ライバル関係でもあり、まだ発展途上であるCBD業界をスケールアップさせる仲間でもある3者が狙う、それぞれのグロース戦略を今後も注視していく。

Written by Manami Ren
Navigator by Mei Kawabata

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