NYT のサブスク拡大、鍵を握るのはゲーミングプロダクト:「今後も我々のマーケティングミックスにおいて大きな役割を果たす」

DIGIDAY

ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)は高まるゲーミングプロダクト人気を利用し、サブスクリプション増加を図るとともに、ブランドパートナーシップおよび広告インベントリの新たな機会創出を狙っている。

同紙は1942年以来、クロスワードパズルを毎日載せているが、サブスクライバーファネルとしてのゲーム利用は、2022年1月のWordle(ワードル)買収を契機に始めた、ゲーミングへの新たなフォーカスの一環だ。Wordleは無料でプレイできるが、同紙で高い人気を誇るゲームの多くはプレミアムオファー(有料)となっており、より上のレベルに進みたいユーザーには、ゲームのみか、あるいは同紙の全エディトリアルコンテンツか、サブスクリプションの選択が求められる。

国際化が進むゲームオーディエンス

「2022年度、我々のフォーカスはゲームビジネスの拡大であり、Wordleについては、その全ユーザーに我々のゲームを紹介できる絶好の機会と捉えている」と、同紙ゲーム部門トップ、ジョナサン・ナイト氏は話す。

その戦略はすでに効を奏していると、ナイト氏は話す。「ここ数週間、これは数字としてはっきりと現れているのだが、サブスクリプションをゲームのみにするのか、あるいは全エディトリアルコンテンツにするのか、二つの選択肢を提示すると、多くは後者を選んでくれる」。具体的なサブスクリプション数については明かさず、氏はこう言い添える。「これはニューヨーク・タイムズが提供するすべてを人々に紹介できる素晴らしい機会であり、実際、作戦の効果は現れ始めている」。

同紙のパズルゲームとエディトリアルコンテンツの両オーディエンスには、合理的に考えて重複があるという。「ワードゲームに惹かれる人々は、一般に、もっと知的なニュース記事を読みたいと欲する人々と重なる部分が多い」と、デジタルサブスクリプションプラットフォームLeaky Paywall(リーキー・ペイウォール)のクリエーター、ピーター・リクソン氏は話す。

Wordle獲得によるゲーミングオーディエンスのデモグラフィック(年齢、性別、国籍、年収帯など)の有意な拡大は、ゲーミングプロダクトのより直接的な利用を同紙に促す契機にもなっている。具体的な割合は明かせないが、ゲーミングオーディエンスは国際化が著しく進んでいると、ナイト氏は話す。

広告インベントリとしての価値も

同紙ゲーミングオーディエンスの諸外国への広がりは、Wordleのグローバルな成功の後押しによるものであり、海外ユーザーの少なくとも一部は、サブスクリプションについて、ナイト氏および氏のチームが思い描いたとおりの道を進んでいる。たとえば、ニューヨーク・タイムズ・ゲームズ(New York Times Games)のロンドン在住ユーザー、ソニア・ファム氏はWordleに誘われて同紙のパズルゲーミングセクションに行き着いたが、いまはもう、Wordleは滅多にプレイせず、ゲーミング時間の大半は有料ゲーム、スペリング・ビー(Spelling Bee)に費やしているという。

「最初は、ゲームサブスクリプションだけでいいと思っていた。だけどふと、『ところで、ニュースサブスクリプションっていくらなの?』と。それで結局ニュースを購読するようになり、最近ではもっぱらそこを情報源にしている」とファム氏。「たしかに、毎日ゲームをひとつするだけのためだと思うと、私にとってはかなりの高額だ。でも、これはもう日常のルーティンのひとつになっている。一度サブスクリプションを始めたらすぐ、料金のことはすっかり忘れてしまう。そういうものだと理解している」。

ゲーミングオーディエンスが拡大を続けるなか、ニューヨーク・タイムズがゲーミングセクションの活用を通じて狙っているのは、サブスクリプション収益増だけではない。同紙のゲームは有用性の高い広告インベントリでもあり、彼らはすでにマーチャンダイズおよびブランドパートナーシップの試みを始めている。ハズブロ(Hasbro)と共同制作したWordleのボードゲームや、同紙の一部パートナーをゲームに組み入れる取り組みは、その好例だ。たとえば2022年9月、ニューヨーク市の通勤者は、デジタルゲームボードを介して、地下鉄内およびプラットフォーム上スペリング・ビーをプレイできるのだが、これは同紙が屋外広告会社、アウトフロント・メディア(OUTFRONT Media)との提携で仕掛けたアクティベーションだ。

「何百万という人が我々のパズルゲームを一日の息抜きとして、そしてときに挑戦しがいのあるものとして、楽しんでくれている」と、ニューヨーク・タイムズ・ゲームズのマネージングディレクター、チャンドラ・クックス氏は話す。「我々はコミュニティをもてなすとともに、自社ポートフォリオの再認識に努めており、だからこそ、ブランドコラボレーションと思慮を重ねたうえでのインテグレーションは、今後も我々のマーケティングミックスにおいて大きな役割を果たすことになる」。

「さらに多くの人にプレイしてもらいたい」

今日のアテンションエコノミーにおいて、ゲーミングは最速で成長するメディアおよびエンターテイメント形態のひとつであり、エディトリアルコンテンツと並ぶ、メディア消費者の幅広いエンターテイメント消費の新たなかたちへと急速に発展している。ニューヨーク・タイムズのゲーミングへのフォーカス強化は、この変わりゆくメディア市場に対する同社の理解の表れにほかならない。

「我々が毎日掲載しているゲームとワードプレイフォーラムに莫大なオーガニックな関心を寄せてもらえているのは、ありがたいかぎりだ。世界中のユーザーが、レベルの高低を問わず、毎日ゲームを楽しんでくれている」と、同紙のアーンドマーケティング部門トップ、ホーリー・ハーニッシュ氏は話す。「我々はすでに強固なコミュニティとの繋がりをなおいっそう深めるとともに、さらに多くの人にプレイしてもらいたいと考えている。そのためにいまは、より大規模なマーケティング活動へと、慎重に足を踏み入れているところだ」。

[原文:The New York Times looks to gaming product to grow subscriptions

Alexander Lee(翻訳:SI Japan、編集:分島翔平)

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