自社製品を売り込みたいビューティブランドから、瞬く間に注目されるようになったオンラインゲーミングプラットフォームRoblox(ロブロックス)。ナーズ・コスメティクス(Nars Cosmetics)もその波に乗り遅れまいと意欲的だ。
7月20日、ナーズはRobloxで「NARS Color Quest(ナーズカラークエスト)」 という90日間のアクティベーションを始めた。これは、ナーズのチーク「ラグナ(Laguna)」と「ライトリフレクティング(Light Reflecting)」のシリーズからインスピレーションを得たもので、各シリーズをバーチャルな4つの南の島に分けて、ナーズのクリエイティブな特徴を再現している。ターゲットは13歳から24歳までのRobloxユーザーで、おそらくナーズをまだよく知らない人たちだ。
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ナーズの親会社資生堂(Shiseido)は、5月の2022年度第1四半期決算説明会で、ナーズが「新製品の好調とデジタルマーケティング投資に支えられたeコマースの成長により、シェアを大幅に拡大」したと発表している。
「最終的な目標は、好奇心を掻き立て、関心を呼び起こすこと。これはまったく新しいオーディエンスに向けたブランドのストリ―テリングであり、今回の目標を鑑みて、新規顧客開拓の目玉となる中心的なシリーズを取り上げている」とナーズ・コスメティクスでグローバルデジタルイノベーションおよび戦略担当バイスプレジデントを務めるディナ・フィエロ氏が説明する。
Color Quest内の各島には、創業者でクリエイティブディレクターのフランソワ・ナーズをはじめ、ナーズ製品のフランチャイズにインスパイアされた3人のキャラクターなど、ユニークなノンプレイヤブルキャラクター(NPC)が住んでいる。RobloxコミュニティのメンバーはナーズNPCの仲間になると 、スーパーチャージされた特別な能力を手にできる。この能力は探検に役立つもので、たとえば、あるNPCの仲間になると、手を振るだけで橋をかけることができ、ラグナブロンザーをイメージした溶けた金色の溶岩の川を渡ることができるようになる。また、仮想通貨を使用して商品やバーチャルルックを購入することができる。ナーズはColor Questの設計にあたり、メタバースのデザインスタジオ、スーパーソーシャル(Supersocial)と提携している。
90日間のアクティベーション期間で、ナーズが特に注目するのは、「一度参加したユーザーにどうすれば繰り返し参加してもらえるようになるのか」である。そこでナーズは、Color Questを簡単には攻略できないものにしようと考えた。そうすればユーザーは複数回チャレンジすることになる。さらに、数週間ごとに更新して、プレーヤーを飽きさせないようにする予定だ。また、開始時に探検できる島は3つだけ用意し、4つ目の島は3週間後に登場させる計画だ。更新内容には、新しいバッジ、商品、バーチャルメークアップも含まれる。フィエロ氏によると、ナーズは今後Color Questを進化させて、Robloxの定番ゲームにする予定だという。
目指すは新しいオーディエンスへリーチ
ナーズはこれまでもゲーミング世界に没入しており、フィエロ氏は2021年を「実験の年」、2022年を「ブランド戦略を固める年」と呼んでいる。2021年は1年間をかけて、「どうぶつの森」内でプログラムを開始、Twitchインフルエンサーのライブストリームゲーム配信でスポンサーになり、SNSアプリ「ゼペット(Zepeto)」で韓国のゲーム開発業者と協働、さらに、エディトリアルファッションゲームアプリDrest(ドレスト)をローンチした。
こうした活動を通して、特定のマーケットで仮想商品を販売できることに気づいたとフィエロ氏は話す。たとえばゼペットでは、71万5000個を超える仮想商品を販売した。しかしながら、Robloxのキャンペーンの目標は、体験の収益化ではなく、ナーズをよく知らない新しいオーディエンスにリーチすることにある。
「私たちは視覚的に豊かな環境を作ろうと考えている。目指すのは、ブランドのストーリーテリングを中心とした、メインの商品が新たな方法で脚光を浴びられるような環境だ」と同氏は話す。「Robloxにはおもしろいビジネスチャンスがあると感じている。ゲーミングやメタバースの環境が充実しており、そのほとんどが芽を出したばかりだ。エンゲージメントが極めて高く、グローバルに展開するコミュニティにはメリットがある」。
ビューティブランドが注目するRoblox
第1四半期のRobloxのアクティブユーザー数は1日あたり5400万人、前年比28%増で、最高値を更新した。最近のGLOSSYの記事にもあるように、Robloxはみるみるうちに、ビューティブランドが注目するプラットフォームに成長した。ナーズ以外にも、ヘアケアのハリー(Hally)、eテイラーのファーフェッチ(Farfetch)ビューティ版、ジバンシービューティ(Givenchy Beauty)などがRobloxに参入している。2021年に上場を果たしてからというもの、ブランドアクティベーションをサポートするために機能を追加し、収益の機会を増やしてきた。最新の決算発表では、ブランドアカウントの有効化 と没入型広告システムが紹介されている 。
RobloxのCEOデイビッド・バズッキ氏は第1四半期決算説明会で「ゲームやプレーで目にしてきたものは、今後ますますブランドや音楽、究極的には我々のプラットフォームのカスタムIPにも見られるようになると確信している」と話した。「ユーザーが生まれるスペースの構築はとてつもなく拡張性が高い。最終的には、Roblox上のこうしたスペースで、たとえばレゴのようなブランドであればレゴ体験を構築していくようになり、ますますブランドならではの体験として展開できるようになる。これが我々が目指す方向性だ」。
ナーズのSNSでは7月15日にColor Questのティーザー広告が始まった。今後は、専属チームがRobloxレビューワーの体験をYouTubeで紹介していくことになる(YouTubeではゲームの生配信や録画配信が一般的)。Robloxユーザーなら、Robloxで「ビューティ」「beauty」 や、もっと具体的に「ナーズ」「Nars」 で検索すればColor Questにアクセス可能だ。Robloxのホームページからアクセス可能なナーズのランディングページもあり、今後もナーズのeコマースやSNSからRobloxに自由にアクセスできるだろう。
「Robloxにはビューティに関心のあるユーザーが多いので、ビューティ関連のアドベンチャーゲームに対する関心もとても高いはずだと期待している」とフィエロ氏。「この新たな体験を逐一レビューしてくれるインフルエンサーもRobloxには大勢いる。だから、大いに話題になるのではないかと期待が高まる」。
[原文:Nars Cosmetics dives into Roblox with ‘Color Quest’ game]
EMMA SANDLER(翻訳:SI Japan、編集:黒田千聖)