2年ぶりの カンヌ にマーケターが期待するもの:「微妙に控えめな雰囲気になるだろう」

DIGIDAY

カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルが2年ぶりに現地で開催されている。お馴染みの社交や取引も対面形式で再開の運びとなる。とはいえ、今年は少し例年とは趣が異なるようだ。

現地開催に対する期待感が膨らむ一方、エージェンシーの幹部や企業のCMOたちは、新型コロナウイルスの感染再拡大、忍び寄る不況の影、ウクライナ戦争などに鑑みれば、常より地味な祭典になりそうだと見ていた。

「2022年の祭典では、ふたつの特徴が見られるだろう」と、デロイトデジタル(Deloitte Digital)で米国担当の最高クリエイティブ責任者を務めるレズリー・シムズ氏は、電子メールを通じて述べている。「2年ぶりの現地開催に対する祝祭感がある一方で、世界が直面する難しい問題を考えれば、どこか控えめな雰囲気となることは免れない」。

漂う慎重な雰囲気

カンヌライオンズは業界がもっとも期待を寄せるイベントのひとつだ。会場のあちこちで交わされる駆け引きを、無限に供されるロゼワイン、セレブが顔をそろえるエンターテインメント、大金をかけた派手な出し物(2017年にSnapchatが展示した観覧車や、Spotifyビーチで開催されたコンサートなど)が引き立てる。2年前、主催者はカンヌライオンズの現地開催を一時保留とし、2020年と2021年はバーチャルでの開催を選択した。

以来、社会不安、戦争、経済危機、そして消えやらぬコロナ禍が、「偶然の出会い」や「予想外の発見」といった、マーケターたちのよく知るカンヌらしさに暗い影を落としてきた。

「カンヌはいつでも人脈作りの場だった」と、世界的なマーケティングエクスペリエンス企業のクアッド(Quad)でCMOを務めるジョッシュ・ゴールデン氏は話す。しかし、この2年間に起きたコロナ禍や社会的な混乱が、マーケターたちのあいだに奇妙な空白を作り出した。「通常、年に5、6回はおこなわれる対面式のイベントは、新たな人間関係を作るよい機会となっていたが、大方はメールベースの関係やZoomでのやりとりに縮んでしまった」。

開催に感謝しつつも慎重な参加者たち

コンサルティング会社のブラックグラス(Black Glass)が運営するCMOハウス(CMO House)の共同創設者でマネージングディレクターのジェニー・ルーニー氏によると、同氏のチームは現在の世界情勢に照らして、今年のカンヌ参加の是非をめぐり、相当に頭を悩ませたという。結局、12人のチームメンバーのうち、ブラックグラス所属のふたりが、マスクの着用、ソーシャルディスタンシングの実行、手洗いの徹底など、新型コロナウイルス感染症の安全ガイドラインを守りつつ、現地入りする予定という。

「全体的なトーンとしては、喜びと感謝といったところだ」とルーニー氏は話す。「それでも、困難な時代だという認識はあるため、微妙に控えめな雰囲気になるだろう」。

一方、病人が出た場合に備えて、アドテク企業のインフィリオン(Infillion)では、検疫を担当する医療コンシェルジュや治療体制のほか、米国への帰国便なども含む医療対策を整えているという。さらに、米疾病対策予防センター(CDC)は6月10日、米国に入国する旅行者らに義務づけていた新型コロナウイルスの陰性証明の提示を撤廃すると発表した。これにより、米国への帰国は容易になった。その反面、カンヌフェスティバルの参加者から新型コロナウイルスが拡散する可能性は高くなる。

クアッドのゴールデン氏によると、慎重な雰囲気が漂うのは同社も同じで、今年のカンヌには人数を最小限に絞った「特殊部隊」を派遣する予定という。旅行費用もコロナ禍前のレベルにまで上昇しており、フェスティバル参加者は例年より少なくなると予想される。

「多少のリスクは覚悟」

一部の関係者は、今年はカンヌ復活を占う試金石となるだろうと見る。「はじめからエンジン全開で飛び込んで、大規模なアクティベーションを展開するのは軽率だ」とクアッドのゴールデン氏は述べている。「誰が来るのか、どんな規模になるのか分からないのだから」。

いずれにしても、この2年間でリモートワークが有効であることは証明された。さまざまなリスクや社会不安も収まらない。それでも、マーケティングの関係者たちは、対面での再会には、ビデオ会議では代用できない価値があると口をそろえる。

そしてゴールデン氏は現在の心境をこう語った。「ステイホームの2年間を経て、我々の労働生活は大きく変わった。私自身は、多少のリスクは覚悟のうえで、人と直接会う機会を選びたいと思う」。

[原文:‘It’s probably going to be a little bit tempered’: What marketers expect from Cannes after two-year hiatus

Kimeko McCoy(翻訳:英じゅんこ、編集:黒田千聖)

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