変化し続ける労働環境に対応する、「フラクショナル CMO 」:「フリーランスでもコンサルタントでもない存在だ」

DIGIDAY

CMOの仕事は絶えず変化している。FOたちがマーケティング予算を絞り続ける一方でCMOの在職期間は短く、少ないリソースのなかでより難しい仕事への対処をこなさなければいけないようだ。

これらの制約と現在のハイブリッドな労働環境を考慮すると、パートタイムのCMO、つまり契約された期間だけ仕事をする「フラクショナルCMO(fractional CMO:部分的CMO)」のモデルを採用している会社が現れていることは驚くに値しない。

このスタイルは新しいものではない。取材に応えてくれたフラクショナルCMOのひとりは、8年近くこの分野でブランドと仕事をしてきたと言っている。しかし、フラクショナルCMOたちは最近少し注目を集めている。フラクショナルCMOとして働いたことのある人たちや業界アナリストによると、最近はより多くのオファーを受けているというのだ。

なぜフラクショナルCMOが必要とされるのか

ブランドコンサルティング会社メタフォース(Metaforce)の共同ファウンダーでパートナーのデーヴィッド・キャンプ氏は、本人も以前フラクショナルCMOであったと述べた上で、「フラクショナルCMOが一般的になった理由は2つほどある。CMOの離職率はかなり高い。マーケティング分野のリーダーは、企業の成長が遅い、あるいは成長していないことの責任を負う人であり、それがマーケティングの問題であろうとなかろうと、責任は彼らに問われる。(その役割において)多くの人が入れ替わるため、企業は戦略が決まるまで新しいCMOを欲しがらないかもしれない。あるいは(フラクショナルCMOを起用することが)経済的である場合もある」と語った。

米国広告主協会のCMOグローバル・グロース・カウンシルで議長を務めるエグゼクティブ・バイスプレジデントのニック・プリモーラ氏も、その意見に同意している。「(フラクショナルCMOという形態は)長いあいだ、さまざまな形で行われてきた。今はもっと体系化されている。ここ数年で、より可視化され、成長している」。

フラクショナルCMOポジションの在職期間は様々だが、一般的には6カ月から9カ月である。利用するブランドの種類もさまざまだ。大手ブランドであれば、「本格的」な人材を確定するまでの暫定的なCMOや、経験の浅いCMOをサポートするための人材として探すこともあるだろう。一方、新興企業の場合はフルタイムのCMOを探しつつも、その間にマーケティング能力を構築するための支援が必要だという認識しているかもしれない。

CFOの統制が、特にパンデミックを通じて大きくなったことで、予算は厳しくなり、マーケターは以前より大きなプレッシャーにさらされるようになった。それは迫り来る不況とともに続くだろう。もちろん、これはCMOが直面し続けている数多くの問題の1つに過ぎない。彼らが抱える問題は、自身の任期、役割の拡大、データプライバシー分野における変化などが山積している。

「フラクショナルCMOは『傭兵』ではない」

キャンプ氏によると、最近のフラクショナルCMOを求める声の増加は、フラクショナルCMOという人材のニーズ自体の増加というよりは、どちらかというとマーケティング部門の構造が変化しているためだと言う。マーケティング部門は「以前ほど流動的で伝統的ではなく」、また労働環境はハイブリッドへと変化した。また、ハイブリッド型の労働環境が原因で人材市場が形成されているため、企業は管理職の人材を雇用することが難しくなっており、断片的なCMOやパートタイムのCMOを活用する必要性が高まっていると指摘する人もいる。

同時に、フラクショナルCMOたちは、たとえ一時的・部分的な役割であっても、契約期間中はその会社や部門にしっかりと統合されることが重要だと述べる。

「フラクショナルCMOと、フリーランスやコンサルタントとの間には大きな違いがある」と説明するのは、ザ・フィールド・トリップ・デパートメント(The Field Trip Department)のフラクショナルCSMO(最高戦略兼マーケティング責任者)であるイーライ・パキアー氏である。

「コンサルタントには傭兵的な意味合いがある。さっと入ってきて、改善のための提言をして去る。フラクショナルCMOはメールからコンプライアンス、テクノロジーまで共有する。外部パートナーと経営陣の一員になることの間の境界線を削除する。そのため、会社の一員である感覚を持つ」。

そのことが、この役割を一層困難にする場合もある。匿名を希望したフラクショナルCMOのひとりは、「最初に与えられた為すべき仕事内容がある一方で、仕事が始まり深く掘り下げていくと、ビジネスに関するさまざまな問題が明らかになり、解決する必要のある問題が増えていく。私がそれらの問題を解決するのか、それとも組織の誰かがそれをするのか。答えに正しいも間違いもないが、コンサルタントが上司になるのは奇妙な現象だ」と説明した。

活用できるか否かは定かではない

企業がフラクショナルCMOを使用するかどうか、そしてこのポジションの活用が増えるかどうかは、経営陣がCMOのポジションをどのように見るかにかかっており、それは変動し続けている。

フォレスター(Forrester)の主任アナリストであるディパンジャン・チャタージー氏は「すべてはCEOがマーケティングをどう考えるかにかかっている」と述べた。「マーケティングが企業の重要な機関であり、すべての顧客の知識の宝庫であり、最も価値の高い資産であるブランドエクイティの管理能力を備えていると考えるのであれば、完全にその役職に注力するリーダーでなければならない考えはばかげている」。

同氏は、「長期的なブランドの構築者と顧客の生涯価値を育む者が、フラクショナル的な役割であることは企業の利益になるのだろうか。フラクショナルCMOは、CEOが持つ信頼できる経営陣の中で対等なパートナーになれるのか。顧客重視の企業は本当にフラクショナルマーケティングリーダーで成功できるだろうか。私の推測では3つすべての点でノー、だ」と続けた。

[原文:Marketing Briefing: As the CMO role continues to change, some organizations turn to a ‘fractional CMO’

Kristina Monllos(翻訳:塚本 紺、編集:分島翔平)

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