バナナ・リパブリック 店舗の最新化の内側:ラグジュアリーなショッピング体験へ【ファッションブリーフィング】

DIGIDAY

ラグジュアリーの定義は進化しているが、ラグジュアリーなショッピング体験はニューヨーク市の5番街でできるということは変わっていない。とりたてて目立つというわけではないが、ギャップ(Gap Inc.)傘下のバナナ・リパブリック(Banana Republic)がその強力な一例だろう。

フラットアイアン店の方向性

バナナ・リパブリックの担当者によると、18丁目と5番街の角にあるフラットアイアンの店舗はその新しい方向性を物理的にもっともよく表しているもののひとつだという。モダンでありながらも親しみが感じられ、五感に訴えるようにデザインされたこのショップは、モールの定番店舗よりは高級デパートに近い。それは、45年の歴史を持つバナナ・リパブリックのルーツと広大な物理的フットプリントにもかかわらず、である。

2階建てのスペースの1階の中央にはラウンジエリアがあり、柔らかな椅子やビーズのシャンデリア、アーキテクチュラルダイジェスト(Architectural Digest)やディオール(Dior)の本が置かれた木製コーヒーテーブルが配されている。その左側には拡張中のホーム部門があり、今は最高価格350ドル(約4.6万円)のスローブランケットとピローが販売されている。そのまわりにはバーがあり、カクテルとシャンパンを提供している。2022年に再ローンチされたジュエリーの品揃えを配したテーブルはトラフィックの多い場所にある。ウィメンズのプレタポルテセクションには定番のカーゴパンツ、ユーティリティベスト、サファリシャツが取り揃えられている。このセクションのスタイルには同社がアドベンチャーを中心にしたヘリテージに再フォーカスしていることが反映されている。頭上に吊るされている特大の額に入ったアフリカの景色の写真数点についても同じことが言える。これらは11月にローンチされた同社のアート(Art)ラインのものだ。

店の奥にはBRベイビー(BR Baby)セクションがある。10カ月前にローンチされたこのセクションでは2歳までの子ども向けのカシミアの着ぐるみや革製フライトジャケットのコレクションが販売されている。ウィメンズのシューズとハンドバッグは9月にイタリアのスエードと革で刷新されており、隣接セクションは季節に合わせたステートメントスタイルの製品が散りばめられている。現在、250ドル(約3.3万円)のオーストリッチフェザートップと450ドル(約6万円)のゴールドメタリックレザーショートパンツがホリデー向けに販売されている。セールコーナーは店の奥の片隅にあるクローゼットほどの広さの部屋に限定されている。

メンズファッションは、仕立て直しをしているテイラーの姿が見られる中央部分の金魚鉢のような部屋を除いては2階の大部分を占めている。フラットアイアン店は店舗で購入すると無料で仕立て直しをしてくれる数少ない同社店舗のひとつである。

2020年後半からバナナ・リパブリックの社長兼CEOを務めるサンドラ・スタングル氏によると、同社は「バナナ・リパブリックでのショッピングを差別化された特別なものにすることを目指している」という。店舗では「世界各地の自然の香り」と「行ったことのあるおしゃれな場所、または遠い土地」を連想させる音楽で五感に訴えるようにしている。

この階のマーチャンダイジングは意図的に「スタイルのアイデアを示唆している」とスタングル氏は述べている。細かいサポートが必要な人のために同社は予約ベースのパーソナライズスタイリングサービスであるアトリエ(Atelier)を9月に全店舗に拡大している。

全体的にフラットアイアン店のイメージチェンジはバナナ・リパブリックのニュールック(Banana Republic’s New Look)に関係がある。これは、スタングル氏と元最高ブランド担当者のアナ・アンジェリック氏が主導し話題になった2021年のリブランディングである。スタングル氏が説明するように、バナナ・リパブリックを「アクセスしやすくインクルーシブなラグジュアリーにフォーカスした一流のライフスタイルブランド」としてリポジショニングすることがその核心にある。(複数の)新店舗を引き立てるのは、絵画のように美しいロケーションを撮影した大きなフルブリード画像とエディトリアル動画が満載の更新済みウェブサイトである。画像や動画はラルフ ローレン(Ralph Lauren)のマーケティングを彷彿とさせるものだ。

これまでのところ、このような変更は成功を収めている。11月中旬に発表されたギャップの第3四半期の収益によるとバナナ・リパブリックの売上高は前年比で8%増加、ギャップ傘下のブランドのなかで際立っていることが示された。親会社(ギャップ)の長年のスターブランドであるアスレタ(Athleta)とオールド・ネイビー(Old Navy)の売上はそれぞれ6%と2%の増加だった。バナナ・リパブリックは過去2四半期においてもギャップの収益を牽引しており、姉妹ブランドと比較して成長率の差がさらに大きくなっている。バナナ・リパブリックがオールド・ネイビーの売上の4分の1であることは注目に値する。また、横ばいの収益を報告したギャップが第3四半期にカニエ・ウェスト氏との提携を解消したことも注目すべきだ。

物理的なフットプリントの発展

フラットアイアン店は「理想的な」バナナ・リパブリックのショッピング体験を誇っているが、同社のほかの店舗の魅力も積極的に高められている。担当者によるとバナナ・リパブリックのデジタルプレゼンスを反映しながら製品密度を減らして、「明確な製品ナラティブ」を作成してワードローブ作成の支援をもっと提供することが店舗の今後の方向性を決めるという。

ギャップが物理的なプレゼンスを変更しているのはバナナ・リパブリックだけではない。2020年秋、ギャップは「もっと健全な店舗群」を所有するという目標を掲げ、2023年末までに北米のギャップとバナナ・リパブリックの350店舗を閉鎖する計画を発表した。ギャップによると2022年末までにその計画の9割は完了するという。

ギャップのブランド全体の第3四半期の店舗売上高は前年同期比で1%増加、これは総売上高の61%を占めた。売上高の17%が屋内モールからであり、ストリップ(商店街)店やライフスタイルセンターからの収益が大部分だった。ギャップは個々のブランドの売上高をチャネル別に分類していない。

パーソナルスタイリングサービスの導入

一流のカスタマーサービスは店内でのショッピング体験を成功させるための鍵である。バナナ・リパブリックの場合、新たに展開されたアトリエはその目的のためのものであり、さらにパーソナライズされたカスタマーサービスを提供している。店内またはオンラインでの個別スタイリングセッションなど、以前はラグジュアリー購入客に限定されていた従来のクライエンテリングプロセスが組み込まれている。ウェブサイトでサイズとショッピングの目的に関するアンケートを記入すると、顧客はスタイリストによる45分間のセッションを予約することができる。

バナナ・リパブリックはアトリエのスタイリストがこのコンセプトを理解できるように注力している。たとえば、ミズーリ州デペレスの店舗のアトリエマネージャー、スザンヌ・トーシッグ氏は、過去にエルメス(Hermès)、ロロピアーナ(Loro Piana)、プラダ(Prada)の店舗での勤務経験がある。

トーシッグ氏は、自分にとってアトリエでの典型的な体験は、予約の前に顧客とつながり、顧客が購入したいと思っているルックの「ビジョン」について尋ねることであるという。収集した情報に基づいて彼女は約8パターンのパーソナライズスタイルと、組み合わせるアイテムを準備する。また、試着室にはスタイルに合わせるためのアクセサリーを揃える。顧客のコートを預かり、予約中に軽食を提供するのは定番のサービスだ。

トーシッグ氏は、顧客(その多くは常連になり、男性も女性もいる)をサポートして商品を説明する際に高級生地に焦点を当てることがしばしばあるという。たとえば、同氏は「メリノウールのセーター」や「シルクシャルムーズのブラウス」を勧める。また、必要に応じて、最近アップグレードした同社のスーツのようなスタイルについても言及する。トーシッグ氏が選んだスタイルを顧客がどう感じるかに基づいてほかのオプションを提供することもよくあるという。また、ベルトやステートメントネックレスを追加して試着の外見を微調整することも度々ある。

「私は意外性が好きだ。つまり、顧客にお決まりのパターンから抜け出してもらい、新しいものを提供すること」とトーシッグ氏。同氏はバナナ・リパブリックの「ラグジュアリーな方向性」に魅力を感じて入社したという。

トーシッグ氏は原則として1人の顧客に注力したいため、予約を連続して入れることはない。通常彼女のスタイリングセッションは長めで、平均1時間だという。また、同氏は必ず携帯メールかメールでフォローアップして、購入客に感謝してさらに「関係を育む」という。継続的なコミュニケーションには常に目的があり、過去の購入品に基づいて新しいスタイルを提案したりホリデーにメッセージを送ったりしている。

モールの全盛期に誕生したほかのファッション店舗も同様の動きを見せており、質の高い従業員を雇用して顧客とのタッチポイントを改善することを目指している。たとえば、エクスプレス(Express)は自社の店舗フットプリントの見直しに合わせて、「アソシエイト」を「スタイリスト」に昇格した。また、メイシーズ(Macy’s)はパーソナルスタイリング予約を導入している。

バナナ・リパブリックが「クールで関連性が高かった」90年代を思い出して、スタングル氏は「我々はこのブランドに対する意識を変えることを目指している」と述べている。

「バナナ・リパブリックはこの10年間道に迷っていた」とスタングル氏。「だが、今では既存の顧客にフレッシュで創造的な方法でサービスを提供しつつ、新規顧客を獲得している。また、従来の顧客は…戻ってきている」。

そして「物理的な表現は当社のビジネスに不可欠だ」とスタングル氏は述べた。

[原文:Fashion Briefing: Inside the modernization of Banana Republic’s stores

JILL MANOFF(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)

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