Amzon プライムデーでの収益化に賭けるCPG新興企業たち:「ブランド戦略の大きな位置を占めている」

DIGIDAY

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7月12・13日に開催された今年のAmazonプライムデー(Prime Day)は、全世界で120億ドル(約1兆6300億円)を超える売上を生み出し、CPGブランドはこの年次イベントの大きな恩恵を受けることになった。

プライムデーは従来からテックやガジェットが多く販売されるショッピングイベントとして知られてきたが、Amazonでのビジネスを拡大しようと試みている食品や飲料の新興企業にとっても重要なものになりつつある。インフレを背景に、多くのアメリカ人が良い商品を探している状況下で、今年のプライムデーでは食料品の売上は大きなものとなり、買い物客の10人に1人がカートに家庭用品や食料品を入れるようになった。ニューメレイター(Numerator)のデータによると、今年のプライムデーに買い物をした客の29%はCPG商品を購入している。AmazonはCPGの収益をまだ公表していないが、このカテゴリーは今年のプライムデー売上の20%以上を占めたとニューメレイターは推定している

今年の2日間のイベントにおいて、多くのCPG新興企業は、新規顧客の獲得、サブスクリプションプランの開始、デジタル販売全体の増加の機会を得た。多くの食品および飲料企業の経営陣が、Amazonのトラフィックが全体的に急増したことで、自社ブランドがこのプラットフォームの騒がしいフィールド内で認知されるようになったと、米モダンリテールに語った。これらの企業は、サブスクリプションによる割引の増加など、さまざまな方法で顧客を引き入れ、Amazonのランキングチャートで上昇させることに成功した。

CPGスタートアップ企業に絶対必要なもの

植物原料のスーパーフードミックスブランドであるユアスーパー(Your Super)は、今月のプライムデーに売上が急増した。今年のイベントで同社は、すべてのスポンサードキャンペーンでインプレッション、クリック、コンバージョンが2.5倍になったと、共同創設者のクリステル・デ・グルート氏は語っている。

「Amazonで本格的に販売を行っているすべてのブランドにとって、プライムデーは絶対に必要なものだ」とグルート氏は語る。同氏は、この2日間のイベントにおけるユアスーパーのストアへのトラフィックは、通常の平日と比べて3~4倍になるのが普通だと述べている。買い物客は最初からお買い得の商品を探しており、「我々は商品を動かし、合計売上を増やすことを求めている」と同氏は述べている。ユアスーパーは2020年にAmazonで販売をはじめてから過去2年間、プライムデーに広告や販売を行ってきたが、今年のプライムデーはもっとも大規模なプロモーションを行い、反響も大きかったと語っている。

ユアスーパーは今年、ベストセラーであるスーパーグリーン(Super Green)、ムーンバランス(Moon Balance)、プラントコラーゲン(Plant Collagen)などの粉末系のSKUも含め、自社商品のほとんどを20%割引にした。また、プライムデーの期間中、より多くのユーザーにリーチするため、アマゾンでの広告活動を強化した。「当社はスポンサードキャンペーンで5倍の新規顧客を呼び込むことができ、これは非常に大きな成果だった」と、同氏は述べている。

ベーキングブランドのスーパーナチュラル(Supernatural)も、今年は従来よりもプライムデーを重視した。

同社の創設者であるカーメル・ハーゲン氏は、同ブランドが2016年の操業開始以来Amazonで販売を行ってきたが、これまでの数年間はプライムデーのプロモーションには散発的にしか参加してこなかったと語る。

同氏は次のように述べている。「今年は多くの広告を掲載し、当社のベストセラーを宣伝することで、事前に準備した。昨年と比べて売上が300%も増加し、多くの新しい人々が当社の商品をカートに入れるようになった」。

スーパーナチュラルの商品は一般にベーキングホリデーの前後に多く売れるので、同社はAmazonのDSP広告を使用して、今年後半のホリデーシーズンにはプライムデーの顧客を再度ターゲットに設定すると、同氏は語っている。

プライムデーのマーケティングキャンペーンへの投資

プライムデーのキャンペーンの主な目標は直接的な売上を増やすことだが、一部のブランドは、Amazonで自社ブランドの認知を広めるためにこのイベントを利用した。「適切なキーワードに入札しコンバージョンすることで、Amazonで自社のオーガニックなランキングを上げることができる」とグルート氏は述べている。

プレバイオティックなソーダブランドのポッピー(Poppi)は2020年3月にAmazon経由で操業を開始し、7月第2週は同社サイトでもっとも多くの売上を記録した。ポッピーはオンライン注文のすべてのフルフィルメントをAmazonストア経由で行っており、自社ウェブサイトでは行っていないため、Amazonプラットフォームはポッピーの売上の多くを占めている。同社の飲料は地域や全国の小売業者、たとえばターゲット(Target)、スプラウツ(Sprouts)、ホールフーズ(Whole Foods)でも販売されている。

ポッピーの共同創設者であるアリソン・エルズワース氏は、「当社はこの7日間にトラック14台分のポッピーを販売し、100万ドル(約1億3600万円)以上の売上を得た」と、米モダンリテールに語った。

同氏は、この1週間に売上を促進したのが同ブランドのマルチチャネルマーケティング手法であり、これによってトラフィックとコンバージョン率を最適化できたとしている。顧客をAmazonの自社ストアに招き入れるため、ポッピーはビッグフレーバーエナジー(Big Flavor Energy)キャンペーンを開始し、TikTokのインフルエンサーの投稿、屋外広告、現地でのマーケティング、賞品の配布などを行った。

これらのプロモーションと、プライムデーの30%割引により、同ブランドはプライムデーのライトニングディール(割引プロモーション)のページで27位に上昇したと、エルズワース氏は語る。またポッピーは、食料品のベストセラー一覧でも9位に位置している。「当社は3~5倍の売上が得られれば十分だと考えていたが、実際には15~18倍もの売上を達成できた」と同氏は述べ、これらの売上の85%はポッピーをはじめて購入する顧客によるものだと付け加えている。

プライムデーを顧客維持に使用する

コンブチャメーカーのヘルスエイド(Health-Ade)のマーケティング担当バイスプレジデントを務めるシャーロット・モスタード氏は、この毎年恒例のイベントは、これまで自社商品を試すことをためらっていた顧客が見逃せないような大きな割引を提供し、新規顧客が商品を試すよう働きかけるための「絶好の機会」だと語る。

しかし、ヘルスエイドはプライムデーの大幅割引を、補充用の注文を促すために利用することを望んだ。

そこで同社は、サブスクライブ・アンド・セーブ(Subscribe & Save)に登録した顧客に対して、通常より大きな割引を行った。ヘルスエイドのポップ(Pop)商品ラインについて、プライムデーの通常の割引は定価の10%だが、定期購入に登録した顧客に対しては30%の割引を行った。「結果として、プライムデーには定期購入者が大幅に増加した」と同氏は述べている。

「当社はプライムデーの前にも多少の割引を行って、早めの購入を計画している人々が待たなくていいようにした」と、モスタード氏は述べている。プライムデーの開始後、同社は48時間のあいだに年間最大の割引を行い、その結果として同社は通常のeコマースの収益レベルよりも5倍の収益を得ることができた。

炭酸水ブランドのサンゾー(Sanzo)の創設者であるサンドロ・ロコ氏は、プライムデーが同社にとってブランドへの認知を急速に広め、業務を促進するためのものになりつつあると、米モダンリテールに語った。

同社は昨年はじめてプライムデーに参加し、2日間のイベントで炭酸水の売上として14位を獲得した。ロコ氏によれば、今年は、スパークリングアイス(Sparkling Ice)、アラニヌー(Alani Nu)、ペリエ(Perrier)、サンペレグリノ(San Pellegrino)などのブランドのSKUを超え、12位に上昇した。

「Amazonでは最近食料品の売上が低迷しているが、当社は今年もプライムデーで大きく売上を伸ばすことができた」と同氏は述べる。Amazonプライムデーの2日間に、同社は自社の炭酸水のフレーバーすべてを、ベストセラーのバラエティパックも含めて30%割引にした。

全体的に見て、同社のプライムデー売上は昨年の2倍に達した。

同社は、プライムデー以後も7月23日まで10%の割引を続けた。「今年の大きな目標は、人々がサブスクライブ・アンド・セーブに参加するよう働きかけることであるため、インセンティブを増やし、より大きな割引を長い期間にわたって実施することにした」とロコ氏は述べている。

プライムデーはブランド戦略の重要な存在に

より多くのCPGブランドがAmazonのアルゴリズムを利用するようになり、プライムデーはサイト上における各社戦略の大きな部分を占めるようになっていく。

ポッピーのエルズワース氏は、「プライムデーは、はじめての顧客をもっとも低いコストで獲得できるので、当社が年に1回プロモーションに特別に力を入れる期間だ」と説明している。

[原文:How CPG startups capitalized on Prime Day to grow sales and acquire customers]

Gabriela Barkho(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:猿渡さとみ)
Image via Ivy Liu

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