Google の検索アルゴリズム更新、パブリッシャーのコマース戦略に影響も

DIGIDAY

アドテクの巨人たるGoogleの影響力はあいかわらず強く、計画の変更いかんでパブリッシャーを右往左往させるほどの力がある。

Googleは2022年秋、1カ月間で3回も検索アルゴリズム更新をリリースした。これが商品レビュー等のコンテンツの検索順位に影響を及ぼし、ユーザーとの接点を求めて検索エンジンを利用するパブリッシャー各社を混乱の渦に陥れた。

Googleによる最近のアルゴリズム更新の時系列:

  • 8月25日:ヘルプフルコンテンツアップデート
  • 9月12日:コアアップデート
  • 9月20日:プロダクトレビューアップデート

9月に行われたDIGIDAY PUBLISHING SUMMITで匿名を条件に取材に応じたメディア企業の幹部は、「我々はGoogleに振り回されている」と述べている。

Googleの主張によれば、アルゴリズムの変更は、インターネット利用者にとって最も役に立つと思われるコンテンツ、つまり「人々のために、人々によって書かれた」コンテンツを優先し、検索結果で上位表示することを目的としているという。具体的には、専門家の知見を紹介した記事、メーカーの公式サイトからのコピーペーストでなく、オリジナルの写真と表現を活かしたコンテンツなどが高く評価される。ちなみに、米DIGIDAYによる取材要請に対し、Googleの広報担当者からは即答がなかった。

パブリッシャー各社の反応

すでにコマ―ス事業の収益面で多くの課題に直面しているUSニューズ360レビュー(U.S. News 360 Reviews)やハンカー(Hunker)などのパブリッシャーは、今回のアルゴリズム変更による自社の検索トラフィックへの影響を分析し、Googleの最新コンテンツガイドラインをいかに編集方針に取り入れるかを検討しているところだという。

一方、CNETをはじめとするパブリッシャーは、アルゴリズム変更による事業へのマイナス影響はないとしている。これは自社サイトのコンテンツ編集方針がすでにGoogleのガイドラインに準拠していることも一因だろう。

10月18日、スタックコマース(StackCommerce)主催のカンファレンス「スタックコマース・アクティベート(StackCommerce Activate 2022)」がニューヨークで開催された。USニューズ&ワールド・リポート(U.S. News & World Report)の360レビュー担当バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーをつとめるアムロ・ナディ氏は、パネルディスカッションに登壇して次のように述べた。

「過去90日間を振り返ると、一部の商品カテゴリーではアルゴリズム更新の影響で売上が落ち込んだが、それ以外のカテゴリーの業績は安定しており、90日前と比べてさほど見劣りしない結果となった」。同氏は、どのカテゴリーに影響が出たかについては明らかにしなかったが、「昨夜は、祭壇にともすロウソクを増やして、どうか我が社をお助けくださいと神に祈った」と、冗談めかしてつけ加えた。

上位表示で優位に立つメディア、順位低下に苦しむメディア

CNETは商品レビューで、専門家による評価コメントとオリジナル写真の掲載にこだわってきた。それが、Googleのアルゴリズム更新後も同社サイトのコンテンツが高い検索順位を維持できた秘訣だと、コンテンツ&オーディエンス担当エグゼクティブバイスプレジデントのリンジー・タレンタイン氏はいう。

CNETのテレビ関連コンテンツ担当として新規採用されたあるレビューアーの場合、テレビの商品レビューに必要な基準と、効果的な技術評価方法を学ぶため、エグゼクティブディレクターのデヴィッド・カッツマイヤー氏の監督下で9カ月間のトレーニングを受けた。その事実はGoogle側では把握されず、検索順位の判断の考慮対象にもならない。しかしタレンタイン氏によれば、「CNETのサイトでは、同じ筆者が長期にわたり同じテーマの記事を執筆し続けていて、コンテンツの質自体も非常に高い」とGoogle検索エンジンが認識するようになるためサイトの評価が上がり、検索結果における上位表示で優位に立てるという。

リーフ・グループ(Leaf Group)が運営するライフスタイル/インテリア情報サイトのハンカーに関しては、アルゴリズム変更による収益への影響を定量化したデータは入手できなかった。しかし、従来型のコマース関連記事にスニペット(要約文)や動画が挿入されていることが検索順位低下の一因となったと、同社シニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのイヴ・エプスタイン氏は認めている。

ハンカーも他社同様、オリジナルのコンテンツ作成に注力している。エプスタイン氏によれば、同社運営のサイトに掲載されるクリスマス商戦向けコンテンツの多くは、2022年に同社が米カリフォルニア州に開設したハンカーハウス(Hunker House)というショールーム(イベントスペース、撮影スタジオとしても使われる)で制作されるという。

アルゴリズム変更への対処法

答えは、「柔軟な対応」にある。

「プラットフォーム側でアルゴリズム更新がリリースされるたび、更新前と後では、検索トラフィックの10%から25%程度の変動を想定する必要がある」と360レビュー担当のナディ氏は述べたが、USニューズ&ワールド・リポートのトラフィック変動データは開示しなかった。アルゴリズム変更がコマース事業にもたらす影響については、SEO(検索エンジン最適化)対策の専門家たちで構成される社内チームから説明があったが、ナディ氏は、Googleの新たなガイドラインに合わせた同社のコンテンツ戦略変更計画に関するコメントは差しひかえた。

Googleが自社プラットフォーム上の商品レビューを対象にアルゴリズムを変更したのは今回が初めてではなく、前回は2021年4月に実施された。更新後は、複数商品を紹介して比較するコンテンツや、専門家の見解を取り入れたコンテンツが検索結果で上位表示される仕様になっていた。

大規模なコマース事業を持つあるパブリッシャーの経営幹部は、Googleのアルゴリズム変更を2021年当時は歓迎しており、匿名を条件に米DIGIDAYの取材に応じた。「Googleは、コマース関連の『くだらない』コンテンツの一部がSEO検索結果の上位から排除されることを期待してアルゴリズムを変更した。その種のコンテンツはけっきょく『コストに見合わない』との判断からだろう」。

「目標にあと一歩というところでアルゴリズムが更新されると、大変な痛手になる」

一方、CNETのタレンタイン氏はナディ氏が言及したような社内のSEOチームを率いており、「昨今、アルゴリズム更新が矢継ぎ早にリリースされ、チームの仕事量がいっきに増えた」と述べている。

CNETでは、Googleのシステムのアルゴリズム更新版がリリースされると、SEOチームがエグゼクティブサマリーを作成する。運用開始後1、2週間のうちに、コンテンツのどの部分またはトピックがアルゴリズム変更の影響を受けたかを完全に把握し、分析する。分析結果をもとに、SEOチームから編集部に対し、記事の見出し、キーワード、フォーマット等の推奨案が必要に応じて伝えられる。

「当社ではGoogleが発表したガイドラインに従ってコンテンツを作成しているが、ガイドラインといっても十分な情報が得られるわけではない」とタレンタイン氏はいう。ただ、Googleからの情報提供が不十分とはいえ、CNETは今回、自社サイトの検索順位低下を回避できた。「我々が気づいた変化といえば、9月12日にリリースされたコアアルゴリズムの更新時だ。当社にとってはプラスとなる変更だった」。

ハースト・デジタル・ニュースペーパーズ(Hearst Digital Newspapers)のコマース担当バイスプレジデントのジェシカ・スピラ氏は、前述のスタックコマース・アクティベートで講演した際、「コンテンツ配信では多角的なアプローチが肝要だ」と述べた。アルゴリズム変更による打撃を回避するため、スピラ氏はウェブサイト運営側との協力のもと、各ブランドが「オフ・プラットフォーム」の接点を通じてユーザーと直接の関係を築く可能性を追求している。例として、コマースに重点をおいたニュースレター配信やサイトのトップページ上のコマースコンテンツ強化などがあげられる。

スピラ氏がハーストに入社したのはつい最近で、スタックコマース・アクティベートが開催された10月第3週のことだ。そのためか、講演ではGoogle検索からのトラフィックへの依存を避ける戦略については概要を述べるにとどまった。

スピラ氏はこう語っている。「Google検索からサイトへ流入するトラフィックは効率がよく、ユーザーを購入者に転換させるコンバージョン率がきわめて高いため、サイトのパフォーマンスは検索アルゴリズムに依存しがちになる。だから、四半期の数値目標にあと一歩というところでアルゴリズムが更新されると、大変な痛手になる」。

[原文:‘Google is really nailing us’: Publishers re-shift commerce strategies after platform releases flurry of algorithm updates
Kayleigh Barber(翻訳:SI Japan、編集:黒田千聖)

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