Snapchat は広告予算を投資する価値あるプラットフォームに生まれ変わるのか

DIGIDAY

Snapchatの最新広告ツールは、広告主に対するメッセージを変えるために用意されたものだ。つまり、その目的は「Snapchatは時間をかける価値があり、投資する価値があるプラットフォーム」だと伝えることにある。

今回新たに伝えたいのは、大きく変貌を遂げているSNS界にあってSnapchatは異端であるというメッセージだ。このところSNSは、見ず知らずの他人から見られて、流行の一端を担う「見るコンテンツ」に変わり、個人的なつながりがまったくない。その流れに抵抗しようとしているのがSnapchatであり、「リアルな関係の拠り所」として見られたいと考えている。このメッセージは、運営会社スナップ(Snap)が広告主向けに最近開催した複数のイベントで明確に伝えられている。

4月19日にスナップが主催したスナップ・パートナー・サミット(Snap Partner Summit)では、ARイノベーションを通じたユーザーと企業のエンゲージメントがテーマとして取り上げられており、その後のIAB(Interactive Advertising Bureau:インタラクティブ広告協議会)のイベントであるニューフロンツ(NewFronts)でも、広告プラットフォームの新たな変更点をいくつも発表している。これは、広告主の財布の紐を緩めさせて、将来の軌道修正に役立てようという目論見だ。

今回の追加サービスが実際にどの程度効果を発揮するのか判断するのは時期尚早だが、マーケターの話を聞くと、最低でも前向きな印象を受けていることはわかる。それでは、注目ポイントを紹介しよう。

まずはSnapchatがローンチした「First Story」

担当者によれば、First Story(ファースト・ストーリー)を利用すると、ユーザー(Snapchatter)が最初にフレンドのストーリーで見る動画広告を広告主が予約することができ、1日あたりの潜在リーチ数は5000万人を超えるとしている。

スポットライトで正式に広告をローンチ

Snapchatは2022年に、共有機能であるスポットライト(Spotlight)における広告出稿の初期テストを開始していた。これはスナップCEOのエヴァン・シュピーゲル氏が2022年第4四半期の収支報告で報告している。2023年に入り、テスト規模の拡大を経てスポットライトの広告は広告主に向けて正式に、しかもグローバルにサービスを開始した。

担当チームによると、毎月3億5000万人を超えるユーザーがスポットライトを見ているという。これはつまり、プレースメントを利用すれば、広告主のマスオーディエンスへのリーチが可能になることにほかならない。

Snapスターの「Collab Studio」を導入予定

Collab Studioは、(今のところ)米国で展開中だ。Snapchatがブランドの目標達成に最適なSnapスター探しをサポートするため、ブランドはクリエイターとコラボできるようになる。さらに、スポンサーのストーリーに使用可能なクリエイティブなコンテンツ作りを支援するだけでなく、契約や最終的な成果を見極める支援も行なうという。

また、My AIチャットボットも進化させており、これには、会話中のスポンサーリンク設定の初期テストや、今後のコンテンツパートナーシップ(主にスポーツのスポンサー提携)も含まれる。対象のイベントには、たとえばNBAやNFL、WNBAに加え、第39回夏季オリンピック競技大会パリ2024やFIFA女子ワールドカップも挙げられる。

広告主との関係が軌道に乗るのか?

これまでのところ、マーケターはこうした新しい広告展開を前向きに捉えているが、それはもっともな話だ。ただし、米DIGIDAYがマーケターに質問したところでは、誰もがSnapchatに好意的であるが、予算をかける理由を見つけられないと回答した。Snapchatに対する思い入れはあるが、広告インベントリーとなると話は別なのだ。

「モバイルメッセージアプリのSnapchatはこれまで、広告オプションが限られていたため、死にかけたプラットフォームのように思われていた」と話すのは、デジタルPRエージェンシーのタンク(Tank)でデジタル部門責任者を務めるマーティン・ハリス氏だ。しかしハリス氏はここにきて、新しいツールがあるなら、顧客にSnapchatを使ってみようかと考え始めているという。

「First Storyには特別なオプションのプレースメントがあり、重要なローンチや広くアピールしたいキャンぺーンでとくに役立つはずだ」とハリス氏は言い、「米国だけで1日あたりの潜在リーチ数が5000万人以上。それだけのユーザーにリーチできるとなれば期待も膨らむ。決して侮れない」と続ける。

Snapchatをほかの2番手プラットフォームと比較してみよう。ピンタレスト(Pinterest)のグローバル月間アクティブユーザーは現在4億6300万人、Redditは約5億人だ。さらにハリス氏によると、スポットライトに広告を載せると、広告受容性の高いオーディエンスに幅広くリーチできるため、ブランドにとっては大きなビジネスチャンスになるという。

スポットライトを利用したマスリーチは結果が期待できそうではあるものの、マンモス・メディア(Mammoth Media)の創業者でCEOのブノワ・バテレ氏は以前、米DIGIDAYのインタビューで、広告製品はまだTikTokやインスタグラムほどよくないと答えていた。今も、「スポットライトを(試験的に)使ってみたが、よい結果は出ていない」と話している。

現状は不透明な雰囲気

Snapにはほかにも課題がある。こうした新しい広告プレースメントを、どのようすれば広告主が気づいてくれるのか。気づいてもらえなければ、広告予算も使ってもらえない。確かに、Snapの取り組みは明るい話で、ライバルの2番手プラットフォームと比べると有利である。たとえば、First StoryはTwitterのFirst ViewやTikTokのTopViewの1日1社限定動画広告に似ており、スポットライトの広告はTiktok Pulseの利益共有広告プログラムと同じように見える。しかしながら、少なくとも今のところは、市場に分け入ることができるほど売り込んでいない。

ハリス氏は、「これまでSnapchatから受信したメールは利用規約の更新情報だけだ」と話す。新しい広告の内容に関しては一切受け取っていない。「Snapchatから連絡が入り、それがこれまで見たことのないものであれば、間違いなく検討するだろう」と同氏は言う。

マンモス・メディアのバテレ氏によると、Snapchatが今売り込みをかけているのは大手ブランドであり、同氏はまだ一切最新情報の話をしていないという。そのため、今回の最新情報に対するマーケターの反応が概ね良好とはいえ、広告予算が転がり込むかどうかはわからない。

デジタルエージェンシーのPMGでペイドソーシャル担当シニアマネージャーのエイドリアン・クラスト氏に話を聞いたところ、「広告主の関心は、Snapchatが本当に復活するのかよく理解することにある。どのような測定能力があるのか? 本当に国内で使えるのか? 対象に例外を設定できるのか? それに価格設定も忘れてはいけない」と答えてくれた。

スナップが進む、いばらの道

確かにスナップは今、慎重にならざるを得ない。先週4月27日の2023年第1四半期の収支報告で収益減少を報告したばかりだからだ。2023年第1四半期の収益は9億8900万ドル(約1335億円)に達したが、2022年第1四半期は10億6300万ドル(1435億円)で、前年同期比7%の減少となる。

1日あたりのアクティブユーザー数は3億8300万人と成長を見せているにもかかわらず(前年比15%増)、この数字だ。そのため、これからのスナップにはアクティブユーザーを収益につなげるための厳しい戦いが待っているに違いない。それこそ、まさに広告主にも必要なものである。

今回のSnapchatの最新情報がユーザーと広告主、双方のビジネスに実質的な影響を与えるのかどうかは、まだわからない。

「広告インベントリーに注目するのはよいことで、新製品はきっと役立つだろう」とマンモス・メディアのバテレ氏は言い、「それで十分だと思うか? それはよくわからない。しかし、十分であってほしい。個人的にはスナップの大ファンだ」と続けた。

加えて、「とはいえ、スナップはメタ(Meta)やGoogleよりもはるかに規模が小さいため、それほど大きな変化は期待できない。今彼らは、買収されてもおかしくないほど厳しい状況にあるのではないかと思う」と指摘した。

[原文:Is Snapchat’s latest ad offerings enough to steal ad dollars?

Krystal Scanlon(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)

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