世界的な景気後退の脅威が、とぐろを巻くニシキヘビのように、企業を締め付けている。すべての企業を絞め殺すほどではないが、息をするのがさらに困難になる程度にきつい締め付けだ。そうしたなかで、B2Bマーケティング手法を向上させる予防措置を取る企業が増えている。メディアエージェンシーは高度な技術と比較的容易なコンテンツ制作を軸に、B2B中心のマーケターへのサービス提供に注目し、その取り組みを強化しつつある。
業界最大手の独立系メディアエージェンシー、ホライゾン・メディア(Horizon Media)はこの現実を認識し、同社はこのほど、営業とマーケティング間の相互理解を深めながら、顧客の財務パフォーマンス向上を目的とした新たな取り組み「グリーン・スレッド(Green Thread)」を立ち上げた。
「完全なマーケティングソリューションパートナーになる」
グリーン・スレッドの社長には、ユナイテッド・レンタルズ(United Rentals)やシーメンス・エンタープライズ・コミュニケーションズ(Siemens Enterprise Communications)、シュナイダーエレクトリック(Schneider Electric)と共にホライゾン・メディアで3度クライアントを経験し、企業の成長を支援するコンサルタント企業レベニュー・イネーブルメント・インスティテュート(Revenue Enablement Institute:以下、REI)で指導的立場にあったクリス・ヒュンメル氏が就任し、同社の舵を取る。
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「特にeコマースや分析、コンテンツ、テクノロジー、スポーツマーケティング、体験型マーケティングといった分野に進出、拡大してきた当社は、独立したエコシステムを構築し、あらゆる規模の企業が望ましい事業成果を導き出せるよう支援する能力とリーチを備えた完全なマーケティングソリューションパートナーになることができる」と、ホライゾン・メディアの創設者でCEOのビル・ケーニグスバーグ氏は、声明で述べている。
B2Bは、「特にメディアサイドでは、エージェンシーのエコシステムの多くで、サービスが十分に提供されてこなかった分野だ。B2BとB2Cの線引きも曖昧になっている(中略)これは、私の全キャリアを費やして、B2B顧客のニーズに真に取り組んできたことであり、拡大するポートフォリオマーケティングソリューションだけでなく、当社が開発して導入する多くの特化型ソリューションにも焦点を当てている」とヒュンメル氏は語る。
技術に関する決定を導く役割
ホライゾン・メディアがREIを買収したのには、技術に関する決定を導くのに役立つという理由もあった。「インサイトという点では、特にB2B業界で現在起きている出来事について、より迅速なインサイトを得られるため、REIは(グリーン・スレッドの構成において)重要な役割を果たしている」とヒュンメル氏は述べ、グリーン・スレッド構想は、ケーニグスバーグ氏と交わしたいくつかの会話から生まれたと付け加えた。
REIのマネージングディレクターを務めるスティーブン・ディオリオ氏は、過去にヒュンメル氏とビジネス書を共同執筆しており、今後もREIの経営に携わる。
マーケター向けB2Bソリューションの拡大を検討し、販売目標をマーケティングメッセージにより効果的に一致させることを狙うアカウントベースのマーケティングを重視するメディアエージェンシーのあいだでは、明らかな成長がみられる。コンテンツも、B2Bが成長している分野で、アクティブなLinkedIn(リンクトイン)ページを越えている。ヒュンメル氏は、ホライゾン・メディア傘下にある多くの他部門を利用して、グリーン・スレッドでこれらの分野すべてを攻略する計画だと述べている。
オムニチャネルのアプローチの重要性
2月に発表されたマッキンゼー・アンド・カンパニー(McKinsey & Company)のレポートは、B2Bをめぐる盛り上がりを裏付けながらも、顧客にサービスを提供しようとするエージェンシーにとっては、オムニチャネルのアプローチが、心に留めるべきもっとも重要な教訓だと警告している。また、このレポートでは、B2B分野での顧客のロイヤルティは、バスケットボールの試合開始時のジャンプボールのように、どちらに転ぶか分からないと指摘している。「顧客は、格段のオムニチャネル体験を得るためには、サプライヤーの乗り換えにかつてないほど意欲的だ」とレポートには書かれている。
「B2Bコマースのカスタマイズ化により、今ではハードルがさらに高くなっている」と、マッキンゼー・アンド・カンパニーのパートナーで、レポート作成者の1人であるジェニファー・スタンリー氏は述べている。「B2Bのリーディング企業は、トレンドや行動を予測し、それに対応して、顧客価値を向上させ、ロイヤルティを強化し、持続可能な成長を実現する必要がある」。
[原文:Horizon Media jumps into the burgeoning B2B media agency space]
Michael Bürgi(翻訳:矢倉美登里/ガリレオ、編集:黒田千聖)