ロレアルは メタバース にどのように参入しようとしているのか?:NYX、イヴ・サンローラン・ボーテなどの挑戦

DIGIDAY

ロレアル(L’Oréal)は、17の仮想商品の商標、メタバースでの一貫したローンチの計画・展開、そしてNYX、イヴ・サンローラン・ボーテ(YSL Beauty、以下YSL)、ミュグレー(Mugler)などメタバースに進出している多数のブランドを抱えており、リアル・デジタル・仮想チャネルを活用してビューティ体験を次のステージへ推進することを目指している。

ロレアルは、そう簡単にイノベーションできるわけではない点を理解している。 ケリング(Kering)やLVMH モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(LVMH)などの他企業が活動を続けているため、ロレアルには迅速にWeb3に基盤を築く必要があった。同社は、昨年12月、慈善活動のためにNFT7点をローンチしたが、売上高は0.5イーサリアムとささやかだった。

現在はコミュニティとエンゲージメントの点で、メタバース全体でWeb2での成功を再現するために同社の複数のブランドの位置付けを慎重に計画しているところである。6月第4週、NYX(インスタグラムでは100万人のフォロワー)は、Web3ソーシャルプラットフォームのサンドボックス(The Sandbox)上で初のメタバースプライドパレードに参加した。NYXは、Web3での多様性の向上にフォーカスしているクリエイティブハブのピープル・オブ・クリプト(People of Crypto)と提携している。

パリで開かれたテクノロジーカンファレンス、ヴィヴァテック(VivaTech)で、Glossyはロレアルの最高デジタル・マーケティング責任者、アスミタ・デュビー氏にWeb2でのロレアル傘下ブランドの成功や、ブランドの目標にWeb3を統合すること、ユートピアを切望する消費者によってもたらされる機会について話を聞いた。

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ーーロレアルのような企業にとって、Web2とWeb3の違いは何か?

「Web2といえば、動画、ライブストリーミング、クラウド、SAS、音声、AI、機械学習が思い浮かぶ。Web2はすでに展開しており、我々はWeb2の加速にしっかり根ざしている。いまはWeb3を探索している段階だ。

我々にとって、Web3はゲーミングであり、そこには大勢のオーディエンスがいる。ARのようなWeb3のほかの部分については、モディフェイス(Modiface)での仮想試着や仮想現実を使用しており、我々は先駆者である。そして、ブロックチェーン、空間コンピューティング、人々の仮想アイデンティティ、さらには仮想空間や仮想製品や仮想コレクターズアイテムがある。我々はWeb3に強固な基盤を築いており、それは我々の『オンチェーンのビューティ』の概念に適合している」。

ーーいま、消費者から求められていることは何か?

「消費者は新しい体験を試したいと切望している。2021年はユートピアへの渇望の転換点であり、いまは消費者からもっとそれが求められている。現在オンラインを使っているのは約50億人だが、2030年までにはその数は75億人になると予想されている。消費者からいろいろな体験が望まれ、また、そのような体験にアクセスできる消費者が増えるにつれて、ビューティの未来は物理的でデジタル、かつ仮想になると信じている。

オンラインを利用している50億人のうち、30億人近くが何らかのゲームをしている。我々はゲーマーやゲーミングのインフルエンサーと多く協働しており、これらのインフルエンサーを「グラマー(glam-er)」と呼んでいる。それはかなりの規模のオーディエンスで、モディフェイスで我々が行っているような拡張現実を見てみると、AR分野はすでにかなり大規模だ。仮想現実やイマージョン、新しいデバイス、そしてブロックチェーンに進出している新しい技術プラットフォームにおけるテクノロジーは日進月歩だ。これらの経験すべてが結集するだろう。我々が目指しているのは、100年におよぶ専門知識を活用し、テクノロジーで我々のWeb3を強化して、それをクリエイティブに成長させ続けることだ」。

ーーWeb3への参入にはどのように取り組んでいるのか?

「我々が『オンチェーンのビューティ』について語るときには、ロレアルのDNAを根底に持つプロジェクトのことを意味する。多くの異なるメタバースがあるため、最初に行うのはメタバース内のブランドをマッピングすることだ。つまり、どのブランドがどこに適合しているのかが問題になる。

2つめは、コミュニティの優先順位を考えることだ。ビューティは非常にソーシャルであり、Web3とメタバースでは創造的な経済とコミュニティのエンパワーメントが重要なので、そこに注力している。3つめは、3Dビューティへの移行だ。テクノロジーのおかげで誰もが没入型の体験を考えている。ビューティはより3Dになりつつある。3Dのコンテンツが増えており、5G接続により人々はもっと多くのことを体験できるようになる。

これら最初の3つのステップのあとには、4つめ、つまり仮想空間、仮想インフルエンス、仮想アバター、仮想製品、仮想コレクターズアイテムなどの検討を始める。これにより消費者とのエンゲージメントを高め、新たなビジュアルコードを作成するだろう」。

ーー現在、Web3への進出準備ができているロレアルのブランドは?

「NYX、YSL、ミュグレーのどれもが優れた基盤を持っている。NYXプロフェッショナルメイクアップ(NYX Professional Makeup)は、メイクアップの芸術性とエンターテイメント性だけではなく、コミュニティとソーシャルも重視している。ビューティが変化して、そのデジタル化とソーシャル化が進むなかで、NYXは先駆的なブランドの1社だった。NYXは現在、クリエイター向けの初の分散型レコードレーベルとなることで、Web3を模索しているところだ。もしWeb2がクローズして集中型になった場合には、Web3がオープンして分散化される。

NYXは、最初の分散型自律組織として、アニメーターやソフトウェアエンジニアなどの新しいタイプの3Dクリエーターとの提携を開始するだろう。ブロックチェーンの専門家と協働したり、疎外されているコミュニティとももっと協働する予定だ。今週、ピープル・オブ・クリプトとサンドボックスと提携することで、NYXはメタバースをよりインクルーシブにする8000のアバターを導入することになる。NYXは仮想メイクのインスピレーションとして機能するのだ。

YSLのブランドDNAは先駆的で大胆な美である。YSLはそのような新しい形の美を楽しいものにしたいと考えており、その実現のために、YSLのゴールデンブロックNFT約1万点を提供する。これらはソーシャルトークンのように機能する。ソーシャルトークンは顧客の許可であり、体験やそのほかのユーティリティを操作・ロック解除するものだ。このトークンを持つ顧客はコンサートに行ったり、ウェブサイトで独占動画を視聴したりすることができる。そして、参加する人々やトークンでメタバースに我々が構築しているコミュニティは、さまざまな経験ができるようになる。

YSLの最初の体験には、6月21日にローンチするものがある。YSLは分散型プラットフォームのプールズ(P00Ls)と、アガテ・ムジャン氏とキトンズ氏の2人の音楽アーティストとの提携を開始する。YSLのコミュニティに対して、両氏とつながり、トークンを集めるようにという呼びかけがある。また、NFTへのアクセスには、YSLのアビューズ・イズ・ノット・ラブ(Abuse is Not Love)プログラムのパートナーである非営利団体へ寄付できるリンクもある。その団体は、米国ではイッツ・オン・アス(It’s On Us)であり、フランスではアン・アヴァン・トゥート(En Avant Toutes)だ。

一方、ミュグレーはファッションとビューティのブランドだ。同ブランドの位置付けは、メタバースが存在する以前でさえも『現実の世界は十分ではない』というものだった。なので、ミュグラーはかなりメタバースネイティブだと思う。ミュグレーは『メタバース』という用語が生まれた1992年と同じ年に発売された象徴的なフレグランスのエンジェル(Angel)に基づいて、『ウィー・アー・オール・エンジェル(We are all Angel)』という3Dのエンジェルの暗号アートコレクションを制作している。それを足がかりにミュグレーはオンチェーンのロイヤリティを築き、ビューティとファッションとメタバースをつなぐ最初のブランドになることを目指している」。

[原文:How L’Oréal is gearing up for the metaverse

ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:ぬえよしこ、編集:黒田千聖)

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