景気後退が独立系 エージェンシー に与えている影響まとめ:「予算を30%減額されれば、多くの問題を抱えむ」

DIGIDAY

万が一に備えて準備を整えておこう。マーケティングとメディア業界全体にとって、2022年後半は波乱含みの展開になりそうだ。

どの部門も、数字の落ち込みや顧客の喪失から逃れることはできないだろうし、それはより広範なエージェンシー業界も同じだ。実際、すでに危機感を覚えている企業もある。その中には、大手エージェンシーホールディングスというある程度安全な環境下にある企業もあれば、メディア、デジタル、体験、パフォーマンス、クリエイティブなどの仕事を提供する独立系エージェンシーもある。

生き残りに苦労するエージェンシーも

少なくともある独立系メディアエージェンシーが、サプライチェーンの問題から、販売を継続することができなくなったクライアントを失ったという事例がある。このエージェンシーの戦略およびプランニングの責任者は、自身の所属に関する発言を避けた上でクライアントを失ったことを認めた。「文字通り何も売ることができない、もう売る商品がない、広告を止めなければならない、と言ったクライアントがいた」と、その人物は語った。

一方、クライアントから予算を減らされたり、クライアントからRFP(提案依頼書)を受け取り、着手するはずだった仕事が一時中断されたりしたエージェンシーもあった。ある大手持株会社の投資部門責任者は、自動車や通信関連の広告主など「景気の不透明感、サプライチェーンの問題の継続、そして新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染再拡大により、主要なカテゴリーの多くが費用を削減している」と述べている。

ある独立系の小規模持株会社のCEOは、独立系エージェンシーの約半数は、時間をかけて不確実な経済の先行きを読むことをしておらず、そのような会社は生き残るために苦労する、と話す。「クライアントがブランド広告の10%、20%、30%を削減し、ソーシャル広告を削減するのは必然だ」と、このCEOは言う。「もちろん、最後に剥がされるのは不可欠な顧客獲得メディアだ。しかし、特に10%のマージンで仕事をしているかもしれない独立系企業にとっては、クライアントのキャッシュフローが45日遅れ、同時に従業員が昇給し、予算が30%減額されたとしたら、すぐに多くの問題を抱え込むことになる」。

米DIGIDAYは、多くの独立系エージェンシーのリーダーに、メディアエージェンシーの世界にどのようなダメージがあり、それがどの程度になるのかについて話を聞いた。その結果、いくつかの共通点が見えてきた。

専門化は危機のもと

単一または狭い範囲の顧客をターゲットにした専門ショップは、窮地に立たされることになるかもしれない。ひとつ、またはふたつのバーティカルを超えて顧客ベースを多様化するか、他の領域にサービスを拡大してリスクを減らすことを考える必要がある。

「一般的に、体験型広告や、より上部のファネルにおけるブランド構築は、最初に打撃を受けることが多い」と話すのは、デジタルエージェンシーのアカディア(Acadia)でCEOを務めるジャレド・ベルスキー氏だ。「それは必ずしも段階的ものではなく、通常はかなりバッサリとカットされる。だから、時には足元をすくわれることもある」。

独立系企業メディア・トゥ・インタラクティブ(Media Two Interactive)のCEO、セス・ハーグレイブ氏は、デジタル専門ショップでありながら、深刻な不況を回避することができたと語る。「我々はメディアバイイングとテクノロジーに特化したエージェンシーだが、その一方で、できる限り多様な顧客ベースを求めている」と、同氏は言う。「なぜなら、そうすることがある種の防御策となり、困難な時にも機会を与えてくれるからだ」。

D2Cの人気は下降気味

エージェンシーはD2Cの広告主、特にスタートアップから手を引いている。こうした企業は(不況下では売れない)高級品を売ることが多く、戦略的なアプローチをしていないことが多い。複数のエージェンシー幹部は、過去2年間はD2Cが熱狂的に支持されていたが、カテゴリーとしてのD2Cの優先順位を下げたと語っている。

「小規模なブランドやD2Cブランド、独立系のパフォーマンス・マーケティング企業が大きな成功を収め、それがパフォーマンス・マーケティングや独立系エージェンシーの成長をけん引していた。それが失われつつある」と、コート・アベニュー(Court Avenue)のCEO、マイケル・スティッチ氏は言う。

あるデジタルエージェンシーの幹部は、匿名を条件に次のように語っている。「我々はもうD2Cにはあまり興味がない。以前はある程度の興味はあった。彼らの起業家精神は素晴らしいが、厳格さが足りず、期待に沿わないこともときにある。確かに、1年目に1000%の売上増を達成することは可能だが、それが何を意味するかわかるだろうか? 1000個売れたからと言って、本当に持続可能なビジネスができるわけではない」。

クライアントへのプレッシャーがエージェンシーへのプレッシャーにつながる

エージェンシーは、クライアントがプランニングと実行に対してより厳しい監視を行うことに備える必要がある。CMOやマーケティング部門は、CFOや調達担当者から同様に厳しい監視を受けているからだ。

「CFOがすべてを仕切っている」と、クライアントを失った前述の戦略およびプランニング責任者は言う。「彼らは、『我々は現金を残す必要がある』と言っているようなものだ。そして、ここは彼らが最も簡単に手を付けられる場所のひとつだ」。

「CMOやマーケティング担当者は、リターンの証拠を示すために、窮地に追い込まれそうだ」と、ハーグレイブ氏は同意する。「彼らは常に苦しい立場にある。しかし、2022年の後半には、この締め付けはさらに大きくなるだろう」。不況による財務面のプレッシャーがあるからだ。

ブランド、メディア、ショッパーを扱う独立系エージェンシー、ブルー・チップ(Blue Chip)のCMO、ダン・アイゼンバーグ氏は、RFPでも同じことが起きていると話す。「市場分析、サプライチェーンの問題、流通、売上予測など、ビジネスプランのすべてが完璧であることを確認するために、クライアント側の財務責任者からマーケティング担当者への監視の目が厳しくなっているRFPも見受けられる」と、同氏は言う。「市場に参入する準備が整ったマーケターは、さらに多くの社内レビューや追加的な精査を余儀なくされることになる。時には、ビジネスプランをもう一度練り直さなければならないかもしれない」。

削減すべき場所

エージェンシー、特に上場企業は、ウォール街に罰せられることを心配しなければならないが、収入が減少した場合のリスクを最小限に抑えるために、いくつかの手段を講じることができる。レイオフに至る前に、採用を凍結し、出張費や経費を削減するのだ。

「人材に焦点を当て、人材を保護し、不況に見舞われても、顧客とチームとでサポートできるような体制を整えておくことだ」と、独立系エージェンシーのネットワーク・グループであるワールドワイド・パートナーズ(Worldwide Partners)のCEO、ジョン・ハリス氏は述べる。「これに対して。“スタッフを10%削減した。ああ、なんてことだ、また雇用するしかない”」ということは、かつてないほど困難になっている。

[原文:Media Buying Briefing: How the recession is affecting independent agencies

Michael Bürgi(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:分島翔平)

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