サムスンのゲーム製品責任者が語る、ゲーミング・ハブの意味 :「今こそゲームストリーミングの時代だ」

DIGIDAY

サムスン(Samsung)は1月、ゲーミング・ハブ(Gaming Hub)を発表した。サムスンのスマートTVが1台あれば、YouTubeのゲームコンテンツをはじめとするライブストリームに加えて、ステイディア(Stadia)、NVIDIAのゲットフォース・ナウ(GeForce NOW)、ユートミック(Utomik)などのゲームストリーミングサービスに容易にアクセスできる集中型の発見プラットフォームだ。

ゲームストリーミングプラットフォームは着実に技術的進歩を遂げているが、いまだ普及しているとは言い難い。依然として、もっとも人気があるゲームの遊び方は、家庭用ゲーム機とゲーミングPCを含むゲーム向けデバイスだ。モーニング・コンサルト(Morning Consult)が2021年に実施した調査では、41%のゲーマーが家庭用ゲーム機、37%がPCを使っていると回答している。

サムスンのゲーミング・ハブはサムスンのスマートTVを持つゲーマーにとって便利な場所にすべてを集中させるため、これらのゲームストリーミングサービスにアクセスしやすくなる。家庭用ゲーム機のユーザーを念頭に置いて設計されており、最も人気のあるコントローラーを幅広く選択することができる。家庭用ゲーム機のゲームにゲーミング・ハブから直接アクセスすることもできる。

サムスンのゲーミング・ハブはゲームストリーミングサービス普及への転換点になるかもしれない。たとえそうならなくても、ほかのスマートTVメーカーがゲームコミュニティにより多くのリソースを投じるきっかけになるだろう。米DIGIDAYはゲーミング・ハブの計画内容とサムスンの広範なゲーム戦略における位置付けを明らかにするため、ゲーム製品管理責任者のマイク・ルセロ氏から話を聞いた。

以下、インタビューの内容を掲載する。なお、読みやすさを考慮し、若干の編集を加えている。

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──ゲーミング・ハブとは何か? なぜサムスンはこのタイミングでゲームに特化した発見プラットフォームを立ち上げることにしたのか?

サムスンのゲーミング・ハブは世界クラスのハードウェアとソフトウェアを集め、現在のゲーム界に本質的に存在するサイロを打ち破り、ゲーマーのための統一された体験を実現する場所だ。我々はゲーマーのためだけの体験をつくることで、我々のテレビでゲームに市民権を与えた。なんといっても、ゲームはエンターテインメントのトップの座にあり、ゲーマーはそのように扱われるべきだと我々は考えた。そして、彼らはとても良い反応を返してくれた。

いまこそゲームストリーミングの時代だ。音楽や動画が年月をかけて変化し、おもな流通手段がストリーミング中心になってきたのを見ればわかる。ゲーム業界も同じような時期を迎えている。実際に何度か試みられてきたが、いまの方が適切な場所に適切なタイミングでいると感じられる。これは始まりにすぎない。2022年はさらに多くの発表を予定している。

──ゲーミング・ハブはサムスンのゲームコミュニティに対する広範なアプローチのどこに位置づけられるのか?

結局のところ、ゲーミング・ハブは重要なタッチポイントのひとつにすぎない。もちろん、多くの人がテレビでゲームをプレイしているため、ゲーマーにとってかなり大きなサムスンとの接点になっている。10フィート(3メートル)体験の歴史に目を向けると、ボタンを押し、ただゲームに没頭するだけだ。つまり、大きなスケールとリーチを持つ非常にシンプルな場所だ。その意味では、ゲーマーにエコシステムをもたらし、彼らにとって新しい便利な場所を構築するという大きな戦略の一部であることは間違いない。

サムスンのテレビにゲーム機をつないで遊ぶゲーマーはほかのどのテレビよりも多く、彼らはサムスンのブランドを信頼している。そのため、テレビから直接すべてのゲームに容易にアクセスできたら、彼らは喜ぶだろう。もちろん、ゲームには多くのタッチポイントがある。私個人は10フィート体験に焦点を合わせているが、ゲーマーにエコシステムをもたらすことは我々の戦略の大きな部分を占めている。

我々は長い年月をかけてゲーマーとの親和性を育んできた。突然ゲーム事業に参入したわけではない。我々のマーケティングチームはゲーマーを強く意識している。我々のテレビはゲームに最適だからだ。技術面でも多くの投資を行ってきた。つまり、いきなり現れたわけではない。これは会話の延長線上にある。

──ゲーミング・ハブをステイディアやユートミックのようなパートナーにどのように売り込んだのか?

ゲーマーとの親和性は重要であり、それが売り込みの助けになったことは間違いない。しかし、パブリッシャー、このケースでは、パートナーやストリーマーにとってより重要なのは、我々が圧倒的なリーチを持っていることだ。我々はスマートTVの市場シェアがもっとも大きいため、ゲーミング・ハブを通じてリーチし、彼らのサービスにもたらすことができる人数も市場でもっとも大きい。このユニークな立場は彼らにとって非常に魅力的だ。さらに、我々がテレビに搭載している技術は、よりレベルの高いゲーム体験を実現できるということにも納得してもらった。このふたつが大きな要素だが、それに加えて、我々はオーディエンスを引き付け、エンゲージメントを高める方法を熟知している。

──ゲームストリーミングサービスに対する批判のひとつに、ゲームのライセンスに関する問題がある。つまり、プラットフォームでプレイするゲームには、ユーザーの完全な所有権が認められないことへの不安だ。この問題についてどう考えているのか?

我々が実際に、ここで本当に解決しようとしていることは何なのか、立ち返ろうと思う。ゲーミング・ハブでは、家庭用ゲーム機ユーザーも我々の体験を楽しむ第一級の市民だ。ストリーミングサービスも利用できるが、プレイステーション(PlayStation)やXbox(エックスボックス)、Nintendo Switch(ニンテンドー・スイッチ)も使うことができる。だから、我々はあらゆる規格、あらゆる流通手段を尊重している。

最終的には、個人の選択に委ねられる。必ずディスクを購入するというコレクターもたくさんいる。実は私もそのひとりだ。しかし、人々の考え方は時間とともに変化する。20年前はCDを買いに行くのが普通だったが、そのような概念はもう存在しない。レンタルの概念もちょうど同じ道を歩んでいる。そのため、時間がたてば、人々はそれに応じた判断を下すようになると思う。誰かのために選択するつもりはない。ただ人々に選択肢を与えるだけだ。

──ゲーム業界では、この数カ月でかなりの統合が行われた。これはサムスンのゲーミング・ハブにとってどのような意味を持つか?

マクロのレベルではふたつの意味があると思う。ひとつ目は、間違いなく、プラットフォームはいくつかの意味でそれぞれ魅力的になっていくということだ。家庭用ゲーム機の場合、純粋にゲーム機に依存した差別化が進むだろう。ファーストパーティ製品が拡大を続け、ブランドとプラットフォームがそのユーザーにとってますます魅力的なものになる。そのため、プラットフォームとそのファーストパーティコンテンツを中心に、ある種の集約が起きるだろう。

これがわかりやすいひとつ目の意味だ。ふたつ目の意味は、すべてのものに容易にアクセスできる場所を持つことの価値が明確になったことだ。たとえば、すべてのコンテンツがXboxとプレイステーションと任天堂のゲーム機でしか利用できないとしたら、これは明らかにアクセスしやすい場所だ。しかし、こうした統合はほかの場所でも行われている。我々が発表したストリーミングサービスに参加するほかのパブリッシャーも例外ではない。今後も同じようなことが起きるだろう。すべてのものがどんどん細分化されているため、利便性という概念の重要性はかつてないほど高まっている。一連の統合によって、すべてを1カ所で提供することの利点がさらに強調されたのだ。

[原文:‘The time is now for game streaming’: Q&A with Samsung head of product management for gaming Mike Lucero

ALEXANDER LEE(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:小玉明依)

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