エスティローダーカンパニーズ のファブリツィオ・フリーダ氏、「過剰報酬のCEO」ランキングで2位にランクイン

DIGIDAY

株主擁護団体が毎年発表しているランキングによると、エスティローダーカンパニーズ(Estée Lauder Companies)のファブリツィオ・フリーダ氏は、S&P 500の企業のなかで2番目に「過剰な報酬」のCEOである。

NPO法人アズ・ユー・ソウ(As You Sow)が2月中旬に発表した「過剰な報酬のCEOトップ100」に関する第9回年次報告書によると、2022年6月30日までの1年間の追跡期間中に6590万ドル(約89.6億円)の報酬を受け取ったフリーダ氏が、リストの上位に入っていることがわかった。同報告書では、それ以前の5年間の株主還元率が毎年27%であったにもかかわらず、その成長率に対する報酬が同業他社をはるかに上回っているとしている。これはCEOの報酬引き上げに対して株主が反対票を投じるケースが増えているタイミングでの報告となった。

このリストでは、CEOの報酬パッケージを次の3つの加重基準によってランク付けしている。まず、給与が会社の業績に対してどの程度見合っているかに基づいて計算された「過剰報酬」のレベル、そして報酬パッケージに対する株主投票の割合、最後に労働者の給与の中央値に対するCEOの給与の割合である。フリーダ氏の報酬パッケージは、会社の業績に基づくと5000万ドル(約68億円)以上の「過剰報酬」が含まれていると計算されている。法人株主の大多数がこのパッケージを拒否し、70%が反対票を投じた。この報酬パッケージは、エスティローダーカンパニーズの労働者の中央値に対して1965倍も高い。

フリーダ氏の報酬は業績に基づく予想より331%も高額

今年のリストに掲載されたほかの美容関連企業は、50位のジョンソン・エンド・ジョンソン(Johnson & Johnson)と51位のプロクター・アンド・ギャンブル(Procter & Gamble)だ。S&P 500のメンバーであるバス&ボディワークス(Bath & Body Works)、コルゲート・パーモリーブ(Colgate-Palmolive)、アルタビューティ(Ulta Beauty)は100社に含まれていなかった。この調査はS&P 500のみに焦点を当てており、ロレアルグループ(L’Oréal Group)、ユニリーバ(Unilever)、資生堂といった、世界の美容コングロマリットの多くは評価していない。

報告書によると「過剰報酬」の計算は、「CEOの報酬と株主に対する企業の財務業績のリターンを比較した回帰分析」に基づいており、企業の株主資本に対するキャピタルゲインと配当のトータルリターンを考慮に入れる。この方法を用いると、フリーダ氏の報酬は会社の業績に基づいて予想される額よりも331%も高い計算になる。

報告書にあるエスティローダーカンパニーズのその年のプロキシーステートメントによると、フリーダ氏は、「同氏の利益を株主の利益とさらに一致させ、長期的に当社の事業、ブランド、人材、評判を引き続き管理する動機を与える」ために「付与日の公正価値の合計が4000万ドル(約54.4億円)となる(非年次の)長期株式報酬をふたつ」付与された。また、「報償は合計約4年半の期間となり、多くの役員報酬プログラムにおける一般的な期間よりも長い。この設計の重要な要素は、一般的な事項として、フリーダ氏が勤務要件を満たすためには少なくとも2024年6月30日までその地位にとどまる必要があり、2025年9月まで株式は受渡されない」。

また、そのプロキシーステートメントには、「追加の(非年次の)株式報酬の価値と時期により、前年比で大きく変動する」とも記載されている。今回の調査に記録された期間以降、2022年秋の株主総会での最新のプロキシーステートメントによると、フリーダ氏の新たな報酬パッケージは2500万ドル(約34億円)に引き下げられた。この減少は、2021年度の報酬パッケージに含まれていた5042万9620ドル(約67.8億円)の株式報酬に起因する。CEOと労働者の賃金中央値の比率は872:1に低下した。

エスティローダーカンパニーズの担当者は、2021年度と2022年度ともに「報酬の半分以上は当社の将来に依存するものであった」と述べている。

CEOへの報酬が過大な企業はパフォーマンスが低い傾向

しかし、大多数の株主は6590万ドル(約89.6億円)の報酬パッケージに納得していない。CEOの高額報酬パッケージを拒否する法人株主が増加するなかで、強制力はないが70%の反対票が投じられた。こうした傾向は、2010年にドッド・フランク法(金融規制改革法)が成立し、企業に役員報酬に関する投票である「セイ・オン・ペイ(say on pay)」が義務付けられて以降、増加している。

このレポートのデータ分析を担当したHIPインベスター(HIP Investor)のCEO、R・ポール・ハーマン氏は、「人々が反対票を投じる理由は、エスティローダーのように財政的に成功している企業ですら報酬が過剰だからだ」と述べている。

投資家が抵抗する理由のひとつは、報告書が主張している「CEOに対する天文学的な報酬が株主の利益に結びつかない」という事実かもしれない。同レポートによると、報酬をもらいすぎているCEOたちのリストに掲載された企業は、実際にはS&P 500全体とくらべて財務的なパフォーマンスが低い傾向にある。2015年以降、ひとつの報告を除けば、この集計リストは財務利益と再投資された配当に関してS&P 500全体と比較すると低いパフォーマンスだったことが示されている。リストの上位10社はこれらの分野でさらに悪い結果となり、超過報酬のリスト全体やS&P 500インデックス全体と比較してもパフォーマンスが下回っている。

家族経営の会社はCEOの報酬が過剰になる構造

「株主総会での議決権行使を見ると、エスティローダーは株主の意思をまったく気にしていない」と、報告書の著者アズ・ユー・ソウの賃金公正および役員報酬担当ディレクター、ロザンナ・ランディス・ウィーバー氏は言う。同氏は、法人あるいはAクラス株主の投票は、Bクラス株主あるいは会社の「インサイダー」の9%がこのパッケージに反対票を投じたのとは、劇的に異なっていると指摘した。

エスティローダーカンパニーズのプロキシーステートメントには、法人株主による投票には拘束力はないが、報酬委員会のメンバーは「株主が表明した意見を重視する」と記されている。

ハーマン氏によると、エスティローダーカンパニーズのような家族経営の会社は、CEOの報酬が過剰になる構造があるかもしれないという。

「創業者が経営陣の後継者を指名する創業者主導型企業の多くでは、(創業者が)大きな影響力を持っている。したがって創業者は正式なCEO報酬を多くもらってはいないが、最初の株式を所有しており、経営者としてではなく株式所有者として収入を得ている」とハーマン氏は述べている。「CEOがその金額を徴収できる唯一の理由は、ローダー家が承認したプランの設計にある」。

ローダー家は現在、クラスA株の約38%、議決権の約86%を保有している。クラスA株は1株につき1票、クラスB株は1株につき10票の議決権を持つ。

CEOとの巨額の給与差は従業員の士気に影響する

また報告書では、従業員給与の中央値に対してCEO報酬の比率が高いことは、他の従業員よりもCEOが実際に会社にもたらしている価値を反映したものではないと述べている。

従業員給与の中央値を3万3586ドル(約458万円)としたエスティローダーカンパニーズの給与比率開示の一環として、報告書は「給与比率の規則の範囲内にある」労働者の25%以上が「パートタイムまたは派遣社員」であり、その70%が米国外だと述べている。

ひとりのトップエグゼクティブと従業員らとのあいだの巨額の給与差は、株主の利益に結びつく重要な要因のひとつになり得るとハーマン氏は述べ、それが従業員の士気に大きな打撃を与える可能性がある点に言及した。従業員の士気は、ほかの研究でも株主の利益に関連することが示されている。

「要するに、CEOを尊重するのと同じように従業員を尊重してはいないということだ。エスティローダーは長期的に高い業績を上げているので、社員に対して、そして現場の従業員やマネージャーなどに対して、もっと給料を払うという選択肢もあるはずだ」とハーマン氏は言う。「これは侮辱的かつ失礼であり、誰が価値を生み出しているのかを代表するものではない」。

[原文:Estée Lauder Companies’ Fabrizio Freda ranks second on ‘Overpaid CEOs’ list]

LIZ FLORA(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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