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スニーカーのマーケットプレイスのキックスクルー(Kicks Crew)は、新たな資金調達により、より多くの小規模なスニーカー小売店がデジタルへの進出を開始できるよう、支援を試みている。
キックスクルーのビジネスは、同社が「B2B2C」モデルと呼ぶ、ファーフェッチ(Farfetch)と似たモデルで、小売パートナー間で商品のリスト、配送、認証を行っている。買い物客は、マーケットプレイスに並ぶ商品が、個々のどういった小売業者が販売しているものであるかを知ることなく見ることができる。このモデルは、キックスクルー自体の在庫リスクを最小限に抑えながら、小売パートナーが自社のオンラインでの顧客ベースを迅速に拡大するのに役立つと、共同創設者でCOOを務めるロス・アドリアン・イップ氏は説明している。
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約4万SKUと膨大なトラフィック
2020年より前、キックスクルーは、多店舗展開する5つの小売業者が商品を販売していた。しかし、実店舗のスニーカー販売店が、訪問客の減少や商品の売れ行き低下に直面し続けるなか、多くの業者がキックスクルーを利用してデジタルで販売を開始した。同社は現在、複数店舗を展開する20の小売業者が販売を行っている。同社は3月にゴビパートナーズ(Gobi Partners)主導で行われた600万ドル(約7億6800万円)のシリーズAラウンド資金を調達し、スニーカー販売において、より大きなシェアを握ることを目指している。
キックスクルーは2008年、自社独自で商品を入荷するオンラインの靴小売業者として創業し、2018年にB2B2Cモデルに転向した。イップ氏は、キックスクルーは小売業者が自社でオンラインサービスを構築するステップを省いて、eコマースを簡単に試せるだけでなく、全世界のオーディエンス向けに事業を展開する方法を提供していると語る。同社の流通取引総額は2020年から2021年にかけて15倍に増加し、同社のトラフィックは1月から現在までに5倍以上に増えた。
同社は、eコマースの面倒な作業を代わりに引き受けることで、小売業者を集めている。小売業者の統合自体はすべて同社が行い、オンライン顧客の調達もすべて同社が引き受ける。同社はパートナーシップ契約の構造を理由に、小売業者の実名を明かしていないが、同サイトには現在約4万のSKUが掲載されていると語った。
「当社は、これらの小売業者がオンラインで販売し、より多くのオーディエンスに販売を行えるよう協力している」とイップ氏は述べる。販売者は自社商品を管理し、売れたらその商品をキックスクルーに配送するだけで済むとも同氏は付け加えている。
出品の条件とメリット
キックスクルーは、小売業者の店舗内の在庫を、自社のオンラインシステムと統合している。商品が売れると小売業者に通知され、商品の所有権と責任がキックスクルーに移転される。小売業者が商品をキックスクルーに配送すると、同社のプラットフォームは顧客への配達、返品、および通貨の両替や関税など、国境を超えるコマースに関する問題も含め、商品に関するすべての処理を行う。イップ氏は、商品の売上の何%をキックスクルーが受け取るのか、正確な数値は明らかにしていないが、この割合は靴やスタイルごとに異なると述べている。
イップ氏によると、多くのスニーカー小売業者は売れ筋の商品(ナイキエアフォースワン[Nike Air Force One]やリーボッククラブシー[Reebok Club C]など)ならすぐに売り切ることができるが、より独自のスタイルや配色の商品について過剰在庫を抱えることがある。ナイキ(Nike)などのスニーカーブランドが小売業者への卸販売からD2C販売に移行するなか、小規模な小売業者のパートナーには、売れない商品をブランドに返却するような交渉力がないことが多くなってきた。
イップ氏は次のように述べている。「当社は、小売業者が販売する商品の最大70%が流通に支障をきたしていることを発見した。数多くの商品はたちまち売れるが、残りは何らかの形で小売店による販売サイクルを通過する必要がある。これらの小売業者は、卸売業者やほかの小売業者に商品を販売するようになり、大幅に割引を行う必要がある」。
同氏は、キックスクルーの小売業者パートナーのほとんどはチェーン店で、平均して十数店以上の実店舗を保有していると語る。これらのパートナーの大部分はアジアに存在する。
同氏は次のように述べている。「我々が小売業者に求める一般的な条件は、小売業界がオンラインに移行しつつあるという事実を理解しようとする意欲だ。理想的には、ひとつの大きなパートナーと協力するほうが、50の小規模なパートナーよりも良い結果になる」。
グローバルデータ(GlobalData)のマネージングディレクターであるネイル・サンダース氏は、キックスクルーの流通モデルは小売業者が「より広いオーディエンスを獲得する」ために役立つだろうと、メールで説明した。
同氏は次のように述べている。「顧客獲得のコストは非常に高く、さらに増え続けているため、キックスクルーなどのサイトで販売を行うのは、既存の売上をさらに増やすための便利な方法となり得る。これは、よりローカルなブランドが国際的なオーディエンスを研究するための効果的な方法になる可能性もある」。
イップ氏は次のように述べている。「特定の、非常に売れ行きの良い商品の場合、取り分はやや少なくてもかまわない。トラフィックを増やすために役立つからだ。販売がやや難しい商品の場合は取り分が多くなり、もしもその商品を販売しているのがほぼ当社だけだと判明している場合にはさらに高くなる」。
キックスクルーは消費者のため、全世界の商品を集約することで、より多くの商品を、より多様なサイズで提供することを望んでいる。たとえば、同社の小売業者の多くはアジアに存在するが、同プラットフォームの顧客のほとんどは米国に存在する。
「ほかのブランドのマーケティングと販売を行うプラットフォームは、顧客中心主義というユニークな位置にある」と、カーニー(Kearney)の消費者プラクティスのパートナーであるキャサリン・ブラック氏は述べている。「これらのプラットフォームは特定のスタイル、価格設定、美的感覚に縛られることなく、さまざまな顧客の動向を把握し、顧客のニーズに合った商品を提供できる」。
次なる注力先は真贋補償とグローバル展開
消費者は、注文にあたり10ドル(約1280円)〜70ドル(約8960円)の範囲で送料を追加で支払う必要があるが、キックスクルーは2〜9営業日以内に商品を顧客に届けることを目指している。
また同社は、真贋保証もプラットフォームに組み込んでいる。小売業者は商品を直接消費者にではなく、キックスクルーの施設に送る必要があり、同社のチームが商品の品質と真贋性をチェックする。
今年3月に600万ドル(約7億6800万円)の資金を受け取ったあと、同プラットフォームは新たなグローバル認証と配送施設のために追加投資すると、イップ氏は述べた。同社は現在、東京、韓国、ニュージャージーに新たな施設を開設、または開設を検討している。
サンダース氏は、キックスクルーのようなオンライン集約モデルは、スニーカーやラグジュアリー分野などのカテゴリーでうまく機能すると説明している。
「スニーカーとラグジュアリーはどちらもグローバルなカテゴリーで利益率が大きく、価格帯も高いため、コストにかかわらずオンライン販売に適している」と同氏は述べている。
カーニーのブラック氏は、「消費者の強い支持を受けており、取引による買い物だけではない強い関心やロイヤルティを生み出すことができる商品カテゴリーであれば、このモデルがうまく機能する」と付け加えている。
[原文:How Kicks Crew aims to gain an edge in the sneaker space by working with retailers]
Maile McCann(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:猿渡さとみ)
Image via Kicks Crew