低迷するメディア市場、パブリッシャーは AI でアピール:「最終的に収益やキャッシュフローにどのような影響をもたらすのかが重要だ」

DIGIDAY

BuzzFeed、ドットダッシュ・メレディス(Dotdash Meredith)、ガネット(Gannett)、アリーナ・グループ(The Arena Group)といったメディア企業が第4四半期の決算報告において、ジェネレーティブ人AIを今年注力する分野として挙げた。その狙いは、低迷するメディア市場でコストを削減し、新たな収益機会を発見することだという。

メディア企業の幹部らは株主に対し、ジェネレーティブAIの活用を通じてコンテンツ制作やコスト削減の機会を探る計画を明らかにした。この技術を利用することで、コンテンツ制作の時間を短縮し、ブランドスポンサーを獲得し、ワークフローを効率化できると、彼らは主張している。もっとも、ジェネレーティブAIの力を借りてビジネスを浮上させたいとする彼らの話は、第4四半期の広告売上が期待外れに終わるなかで出てきたものだ。したがって、その打撃を和らげるためにAI技術の話が持ち出された面もなくはない。

「我々がさまざまな決算報告の場で尋ねた質問の要点は、自動化がどのように人間に取って代わるのか、そして最終的に収益やキャッシュフローにどのような影響をもたらすのかということだった」と、投資銀行のザ・ベンチマーク・カンパニー(The Benchmark Company)で、インターネット、放送、メディア担当アナリストを務めるダニエル・クーノス氏は振り返る。メディア企業の経営陣は、コンテンツ制作の自動化や制作コストと運営コストの削減に関する話はしたが、AIで節約できる金額や獲得できる金額を具体的に示そうとはしなかったと同氏はいう。

「慎重にテストを行っている段階だという話を複数の幹部から聞いたが、どの幹部もこの技術の進化を見極めてから全力で取り組むかどうか判断しようとしているのだと思う」と、クーノス氏は付け加えた。

ジェネレーティブAIでコスト効率を高める

昨夏の景気後退以降、マクロ経済的圧力や広告市場の低迷に直面したメディア各社は、いかにコストを削減するかという話を続けてきた。今回の一連の決算報告のように、複数のCEOが一部の目標を達成する手段としてAIに言及したのは初めてのことだ。

もちろん、オープンAI(OpenAI)がChatGPTをリリースしてから初めての決算報告だったということもあるだろう。ジェネレーティブAIは、Web3やメタバース、あるいはブロックチェーンや暗号通貨に続く最新のバズワードとなり、企業の幹部が自社の見通しを明るく見せるために欠かせない用語となっている。

「以前から述べているように、コストの面やコンテンツ開発の初期段階においては、(AIが)効率化に役立つと考えている」と、IACのCEO、ジョーイ・レビン氏は2月14日の決算報告の場で語った。「何事もそうだが、技術は進化するものであり、我々もそれに合わせて進化することになる。とはいえ、(AIは)間違いなく我々が最も注目しているものであり、イノベーションを起こす機会を実際にもたらすと我々は考えている」

パブリッシャー幹部らは、昨年の広告売上の減少などを受けて、今もコスト削減の方法を模索している。以前の記事で取り上げたパブリッシャーは、ほぼ全社が第4四半期に前年同期比で3~27%の減少幅で広告売上を減らしていた。IACの子会社であるドアダッシュ・メレディスは、第4四半期のプログラマティックの平均CPMが前年同期比で10~15%減少したと報告している。ガネットも、第4四半期のデジタル広告売上が前年同期比で20.5%下落した。同社はコストを削減するため、数カ月前からスタッフの解雇や一部の業務のアウトソーシングを行っている。

「チームの生産性が大きく向上する」

ガネットでCFOを務めるダグ・ホーン氏は、2月23日に開催された決算報告において、今年は「少なくとも2億2000万ドル(約287億円)」のコストを削減する計画だと語った。この計画には、AIを利用して「効率を高める」取り組みも含まれている。

ホーン氏によれば、ガネットが「最近投資している」分野はAIツールと機械学習ツールで、その目的は定型業務の効率化だという。このような業務には、画像の選択やトリミングをすばやく行ったり、コンテンツをパーソナライズしたり、さまざまなスポーツイベントを観戦できる場所を読者に知らせるためにデータセットを収集したりする業務が含まれる。

アリーナ・グループは最近、ジャスパーAI(Jasper AI)やオープンAIなどのAI企業と提携したことを発表した。その狙いは、「記者や編集者がニュース記事を執筆するために、豊富なアーカイブからコンテンツをすばやく効率的に探したり取り出したりできるようにすること」だと、同社のCEO、ロス・レビンソーン氏は説明した。

また、レビンソーン氏は今年注力すべき分野として収益性と営業キャッシュフローを挙げ、ジェネレーティブAIの利用をテストした結果「生産性の向上」が見られたと述べている。アリーナ・グループがAIを使って記事を作成していることがウォール・ストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal:以下、WSJ)によって報じられた2月、同社の株価は18%も急騰した

「この取り組みは、我々の優秀な記者や編集者を置き替えるためのものではない。だが、この取り組みによって、我々の有能なチームの生産性が大きく向上すると考えている。これは、2023年の調整後EBITDAの目標を達成するために積極的に行っているコスト構造の調整の一環に過ぎない」と、レビンソーン氏は語った。

アリーナ・グループは第4四半期、営業費用合計を前年同期比で30%減となる3560万ドル(約46億5000万円)にまで減らしている。広告売上は前年同期比で46.9%増加した。同社は昨年、パレード(Parade)、メンズ・ジャーナル(Men’s Journal)、メンズ・フィットネス(Men’s Fitness)など、熱心なファンが多いブランドをいくつか買収している。

AIで収益機会を探る

BuzzFeedのCEO、ジョナ・ペレッティ氏は、3月13日に行われた決算報告で、AI生成コンテンツを「研究開発段階から当社のコアビジネスに」移行させる予定だと語った。同氏によれば、詳しい発表は今年の5月11日に開催するオンラインイベント「インベスターズ・デイ(Investor Day)」で行うという。バズフィードの広告売上は、第4半期に27%下落した。

BuzzFeedでプレジデントを務めるマルセラ・マーティン氏は、2023年2月にリリースしたAIクイズ「インフィニティ・クイズ(Infinity Quizzes)」に言及し、「オーディエンス体験を強化し、収益化の新たな道を切り開くために」同社がAIを採用した初の取り組みだと語った。読者と観葉植物をマッチングするカスタムクイズは、園芸用品メーカーのスコッツ・ミラクルグロー(Scotts Miracle-Gro)がスポンサーだった。

さらに、「我々は今後もAIを活用して、こうした革新的でブランドセーフティなパートナーシップの機会をクライアントに提供したいと考えている」と、マーティン氏はいう。BuzzFeedがジェネレーティブAIを使ってクイズを作成していることがWSJによって初めて報じられた1月、バズフィードの株価は7カ月ぶりの高値を記録した。ただしマーティン氏は、この取り組みは長期的な事業成長計画の一部だと述べ、この手のコンテンツの収益化が短期間で進むことを期待する投資家を牽制している。

その一方で、コンテンツ制作の面では、最近実施したコンテンツ管理システムとAIツールの統合により、より多くの記者がこのツールにアクセスしてAI生成コンテンツを生成できるようになったと、ペレッティ氏は決算報告の場でメディアアナリストに説明した。「拡張性を高める取り組みは今始まったばかりだ」と、同氏は語る。

また、クレイグ=ハルム・キャピタル・グループ(Craig-Hallum Capital Group)のアナリスト、ジェイソン・クライヤー氏から短尺動画の収益化計画について尋ねられたペレッティ氏は、アニメーションコンテンツの制作プロセスを自動化、改善、効率化するのにAI技術が役立つ可能性があると述べている。

SEOトラフィックへの影響

バークレイズ(Barclays)のアナリスト、ロス・サンドラー氏は、IACでCEOを務めるレビン氏にジェネレーティブAIがドットダッシュ・メレディスに与える影響を尋ね、この技術がコンテンツ制作の「効率を将来的に大幅に高める」だけでなく、「SEOトラフィックにマイナスの影響をもたらすのではないか」と指摘した。

この質問に対するレビン氏の回答は、バッスル・デジタル・グループ(Bustle Digital Group)やリーフ・グループ(Leaf Group)といったライフスタイル系のパブリッシャーに関して米DIGIDAYが以前報じた内容と一致するものだった。これらのパブリッシャーは、ChatGPTのようなAIチャットボットが従来の検索エンジンの役割を引き継ぐ可能性に備えて、SEO主導のコンテンツからリソースを移す計画を立てている。

「新しい技術はすべて、脅威にもなれば機会にもなる」と、レビン氏は述べ、次のように続けた。「ボットに質問すればその質問の答えが返ってくるというのは素晴らしいことだ。だが、ボットには意見はなく、経験もない。さらに、その回答結果に信頼性を与えるブランドも存在しない」

また、バッスル・デジタル・グループのように、トラフック面でSEO主導のコンテンツへの依存度を下げる動きは必ずしも目新しいものではないと、レビン氏は指摘した。

「トラフィックの50%以上がGoogleからもたらされるようなことはもはやない」と、同氏はいう。「我々は検索エンジンに関して、以前からそのような状況に対処し、準備を進め、ある意味ではすでに過去の話となっている。検索エンジン自体の形式が変わる可能性もあるが、我々はそのようなトラフィックを当てにしておらず、もうかなり前から検索エンジンのトラフィックには依存していない」と、同氏は語った。

[原文:Publishers tout generative AI opportunities to save and make money amid rough media market

Sara Guaglione(翻訳:佐藤 卓/ガリレオ、編集:分島翔平)

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