ユニクロ やマンゴも グローバル展開するアパレル企業、米国での不動産獲得に力を注ぐ

DIGIDAY

こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です
※モダンリテール[日本版]は、DIGIDAY[日本版]内のバーティカルサイトです

グローバルなアパレル小売企業は、米国の買い物客からの支持を得ようと、米国内での出店を加速している。

日本のカジュアルウェア小売であるユニクロ(Uniqlo)は、2027年までに北米に200店舗以上を持つという目標の一環として、今夏米国に4店舗を開設することを計画していると、4月に明かした。スペインのファッション小売のマンゴ(Mango)も、米国での事業拡大に狙いを定めており、2024年までに米国内に40店舗を構えることを計画している。一方で、バリューベースのファッションと家庭用品の小売企業であるプライマーク(Primark)は今夏、新たに3店舗を米国に開設することを計画している。

海外のアパレル小売企業が世界最大級の消費者市場に食い込もうとしているのは、驚くべきことではない。しかし、米国市場に参入する方法は、実績のある小売企業と提携するなどいくつも存在するが、独自の実店舗を保有することで、こうしたグローバル企業は自社のメッセージングとショッピング体験をコントロールできる。ただし、これらの小売企業が米国市場におけるプレゼンスを拡大しようとしているのは、自由裁量の支出を抑えている買い物客を既存の業者が奪い合うという競合の激しい環境下でのことだ。

世界で共通化するトレンド

コンサルティング企業のザ・パーカー・アベリー・グループ(The Parker Avery Group)でシニアマネージャーを務めるドミトリー・マガス氏は次のように述べている。「大型の百貨店に出店しているブランドのひとつとしてではなく、独自の店舗を持つことで、より良い方法でほかの企業との差別化を図ることができる。ただし、当然のことながらリスクも大きくなる」。

不動産コストの問題だけでなく、米国のような大きな国では品揃えをローカライズする問題にも取り組む必要があると、同氏は語る。ユニクロは、ロイターの取材に対し、米国内のさまざまな地域に合わせて品揃えをローカライズするのは、気候も買い物体験も異なるため、「大変なこと」だと語った。

地域によってそれぞれ独自の特色があるのはたしかだが、アパレル小売企業、特に若い層を対象とする小売業は、彼らが世界的なトレンドに従うことによる利点がある。インサイダーインテリジェンス(Insider Intelligence)のシニアアナリストを務めるスカイ・キャナバス氏は、地域に関係なく、若い層の買い物客はよりトレンドである衣服を求め、欧州の新しいブランドもオープンに受け入れる傾向があると語っている。

同氏は次のように述べている。「現在見られるトレンドの多くは、世界的にかなり似通っている。どのように分散しているかの問題にすぎない。消費者は世界の人々が何をしているかを見ることができるし、トレンドが世界に広がるのも、従来よりはるかに速くなっている」。

同氏は、こうした世界的なトレンドをけん引しているもののひとつとして、ソーシャルメディアのトレンドを挙げている。たとえば、ラウンドミニショルダーバッグのように、ユニクロの購入品紹介動画はTikTokで数十万回も再生され、世間の注目を集めている。ユニクロは第2四半期の決算発表で、利益と収益が「大幅に」増加した地域のひとつが北米だったと報告した。同社の海外事業は、北米も含めて前年同期比27%増の7552億円(約54億ドル)に達した。

一方でマンゴは、すでにオンライン販売が強い州をターゲットにする予定だと述べている。同社は昨年、過去最高売上を達成し、前年よりも収益が20%も増加した。同社のCEOを務めるトニー・ルイス氏は、米国での事業成長について「何かが変化した。米国の消費者は、欧州のブランドについて以前とは異なる好意的な見かたをするようになった」と、ロイターに語った

長期的アプローチが必要

しかし、これらのグローバルな小売企業が米国で店舗を増やしているのは、困難な時期でもある。既存のアパレル小売企業は、レイオフやインフレが頻発する経済の不確実性から、買い物客が新しい衣服の購入を控えるのを目にしている。たとえば、ファッション小売企業のジェイジル(J.Jill)は第1四半期の純売上高が前年同期比で4.9%減少し、ドイツで創業したフットウェアブランドのドクターマーチン(Dr. Martens)は、10億ポンド(約1820億円)という過去最高益を達成したにもかかわらず、米国地域での会計年度収益は恒常通貨ベースで1%減少した。

グローバルな小売企業の多くは米国市場への参入を試み、失敗してきた。マンゴは米国に展開しようとして2回失敗している。同社は2014年にグローバルな展開のために投資を行った後、年間利益が11%減少した。アムステルダムを本拠地とするスコッチアンドソーダ(Scotch & Soda)は米国にある拠点の多くを最近閉店したが、そのなかには、ほんの数カ月前に開店されたばかりの店舗もあった。

キャナバス氏は次のように述べている。「特にアパレル業界については、あらゆる点で厳しい環境だ。急いで大規模な参入を行い、目標を満たせなくなるよりは、長期的なアプローチで、非常にゆっくりと、着実に進めていくことが、おそらくもっとも効果的だろう」。

厳しい環境ではあるものの、この経済状況は一部のグローバル企業にとって、買い物客に価値ベースの選択肢を提示できる機会でもある。プライマークの米国プレジデントを務めるケビン・チューリップ氏は、同社の手ごろな価格の価値提案が、インフレを気にしている米国の買い物客にアピールするかもしれないと、以前米モダンリテールに語ったことがある

[原文: International apparel retailers are snagging real estate space in the U.S.]

Maria Monteros(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)

Source

タイトルとURLをコピーしました