ペプシ がマーケティング予算で飲食店支援に取り組む理由:「回復への道のりが長いからこそ、長期的な支援が必要だ」

DIGIDAY

黒人の経営者が抱える資金難という恒常的な問題に、ペプシ(Pepsi)が救いの手を差し伸べる。

シェフのカーラ・ホール氏を迎えて、黒人経営の飲食店にマーケティング予算を投じる支援プログラム「ペプシ・ディグ・イン・デイ」を再開するという。

全米の黒人経営の飲食店と連携

今年で2度目となる「ペプシ・ディグ・イン・デイ」は11月5日に実施された。黒人が経営する全米の飲食店と連携して、無料の音楽とドリンクが楽しめる賑やかなブランチを開催する計画だ。

アトランタ、フィラデルフィア、ロサンゼルスなどで、黒人が経営する飲食店20店舗を選び、ペプシが2000ドル(約29万円)から5000ドル(約73万円)の食事代を負担する。ブランチの目玉はDJの生演奏とオリジナルメニューだ。ペプシはこのイベントで総額4万ドル(約589万円)から10万ドル(約1474万円)の支出を予定している。

ソーシャルメディアユーザーには懸賞キャンペーンへの応募を呼びかける。地元でよく利用する黒人経営の飲食店の写真や動画を「PepsiDigIn」のタグ付きでTwitter、インスタグラム、TikTok、Facebookに投稿すると、抽選で投稿者本人と飲食店にそれぞれ5000ドル(約73万円)が進呈される。

ペプシコ(PepsiCo)のフードサービス部門でグローバルCMOを務めるスコット・フィンロー氏はこう説明する。「ペプシコは黒人経営の事業に5年間で5000万ドル(約73億円)を投入してきた。この金額は、ペプシコ社内に加え、我々が事業を展開する業界や地域社会において、人種平等を推進するための活動資金4億ドル(約590億円)超の一部だ」。同社はこの勢いを維持するために、各種のプログラム、資金、リソースを用意し、黒人経営者の事業拡大を支援したいとしている。

「さまざまなブランドの良い手本に」

「変容する経済のなかで、黒人経営者が事業の拡大や持続化のためにアクセスできる資源や資金は限られている」。そう話すのは、音楽専門ケーブルテレビ局のリヴォルト(Revolt)で、最高経営責任者(CEO)を務めるディタヴィオ・サミュエルズ氏だ。リヴォルトは「ディディ」の愛称で知られるラッパーで音楽プロデューサーのショーン・コムズ氏が創設したデジタルテレビ局だ。

「これほど重要な取り組みでペプシコと協力できることを誇りに思う。この取り組みは、黒人が経営するレストランにとって知名度やアクセスや機会を向上させる一助となる一方、黒人の事業家を有機的に支援する道を模索する各種業界のさまざまなブランドにとっても良い手本となるだろう」。

日常的に支援することの重要性

2020年に黒人事業主に対する支援の必要性が大きな注目を集めた。ペプシの狙いは彼らへの支援を今後も失速させないことだという。

フィンロー氏はこの取り組みの意義についてこう語る。「ペプシは、黒人経営の飲食店を日常的に支援することの重要性を認識している。『ペプシ・ディグ・イン・デイ』は1日限りのイベントだが、彼らのビジネスを祝福し、応援するとともに、黒人経営の飲食店が直面する多くの課題を世に知らしめるというミッションを推進しつつ、彼らが飲食業界にもたらす絶品料理の数々に光を当てたい」。

デジタル広告と短編動画を活用

ペプシは「ペプシ・ディグ・イン・デイ」キャンペーンの一環としてデジタル広告と短編動画を活用した。参加する飲食店のリストには、ペンシルヴァニア州エルキンスパークのフードチェイサーズキッチン、カリフォルニア州オークランドのミモザオングランド、フロリダ州タンパのセヴンスアンドグローヴ、フロリダ州マイアミのドゥカヌージャメイカンキッチン、テキサス州ヒューストンのザ・グリーシースプーンなどが名を連ねる。

また、Twitter、Facebook、インスタグラム、TikTokでは、オーガニックとペイドのソーシャルメディア施策も展開している。フィンロー氏は取り組みの理由について語ること、各飲食店の個性に光を当てることに注力したといい、「オーディエンスやデモグラフィック属性はプラットフォームごとに若干異なるため、それぞれのプラットフォームに集まるオーディエンスに合わせて、メッセージをカスタムで作ることが重要だ」と説明した。そして都市ごとに著名なグルメコンテンツクリエイターを起用して、各自が活躍するプラットフォームを活用しつつ、それぞれのフォロワーに黒人経営のレストランを紹介してもらうという。

フィンロー氏によると、「ペプシ・ディグ・イン・デイ」の広告費の50%はデジタルとソーシャルに、残り50%は現場でのアクティベーションに充てられたという。ただし、ペプシコの広告予算のうち、どのくらいの金額がこのキャンペーンに使われたかは不明だ。フィンロー氏は予算全体の詳細についてはコメントを控えた。カンター(Kantar)のデータによると、ペプシコが2022年に入ってからこれまでに支出した広告費は1億6100万ドル(約237億円)を若干上回る。

長い道のりへの持続的な支援

マッキンゼー(McKinsey)の調査を見る限り、黒人事業主の前には、よりいっそう厳しい回復への道が待ち構えているようだ。テクノロジーの力でチェンジマネジメントを支援するリフレーム(Reframe)のジェフリー・L・ボウマンCEOはこう話す。「これは持続化支援のプログラムだ。ペプシにとって、1年や2年で終わる『アクティベーション』ではない。回復への道のりが長いからこそ、このプログラムに長期的に資金を拠出するという意図的決断が必要だ」。

ペプシはいまもこのプログラムの拡大を模索しており、リソースの拡充に向けて新たなパートナーを求めている。具体的な施策のひとつが「ブラック・レストランツ・デリバー」プログラムで、オンラインで利用できるマーケティングツールを提供するほか、オンライン注文機能やデリバリー機能の強化を支援している。

フィンロー氏はこのプログラムの今後の展開が楽しみだという。「我々のプラットフォーム、企業パートナー、コミュニティをテコに、黒人経営の飲食店に目に見える変化をもたらす、インパクトのある施策を継続的に打ち出せると確信している」。

[原文:How Pepsi is putting the spotlight on Black-owned restaurants with its marketing dollars

Julian Cannon(翻訳:英じゅんこ、編集:黒田千聖)

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