ウォッカ・ブランドのグレイグース、 メタバース 予算を強化:「ファンの体験を向上させ、ブランドを象徴的な存在にする」

DIGIDAY

ウォッカ・ブランドのグレイ・グース(Grey Goose)は、仮想体験を使った体験型マーケティングを強化しようとしている。グレイ・グースはバカルディ(Bacardi)が所有するブランドだが、同ブランドはメタバースに力を入れており、最近では全米オープンテニス選手権でアクティベーションを行なった。

9月初め、グレイ・グースは全米オープンのためにメタバースのプラットフォーム、ディセントラランド(Decentraland)で没入感のある体験を制作し提供した。来場者は全米オープンの看板カクテルであるハニー・デュース(the Honey Deuce)について学ぶことができ、お気に入りの選手に乾杯できるインタラクティブなディスプレイも用意されていた。

「(仮想の)体験を通じて消費者に会う、というキャンペーンを実施したかった」とグレイ・グースのVP、アレコ・アズケタ氏は、同ブランドのメタバース体験について語った。「スポーツやゲームとのつながりを考えると、USオープンは私たちのブランドにとってもっとも自然な提携だった」。

なぜグレイグースはメタバースに注力するのか

全米オープンなどのイベントをメタバース・マーケティング戦略の構築に活用することで、同ブランドはターゲット層を引き付け、スポーツファンやアルコール愛飲家から注目されるような新しいコンテンツを制作できる。グレイ・グースは仮想アクティベーションを開発するために、ウェブ開発、メディアの計画と購入、技術とイノベーションを専門とするインタラクティブ・エージェンシーのレイザーフィッシュ(Razorfish)に協力を求めた。

全米オープンのアクティベーションにおいてグレイ・グースは、実際の生活におけるブランドと消費者のつながりを仮想体験が強力に引き出すことを望んでいた。これを達成するために、同社はインタラクティブなゲームとチャレンジをセットアップし、来訪者に様々な賞品を獲得する機会を提供した。その中には限定版ウェア、グッズ、来年の全米オープンでのグレイ・グース・スイート席のチケットなどが含まれる。

グレイ・グースは以前、グラミー賞においてファッションデザイナーのピーター・ダンダスとのパートナーシップの一環としてメタバース・マーケティングを試みていた。限定版のNFTや、グレイグースとピーター・ダンダスがパリス・ヒルトンのために作ったマティーニの形をしたバッグなどだ。一方、全米オープン・アクティベーションは「私たちが構築した初めての完全にインタラクティブなデジタル世界だ」とアズケタ氏は述べている。「今後数カ月から数年にわたってWeb3の機能を探求し続ける」。

グレイ・グースの広告予算のうち、どの程度がこのメタバース内のキャンペーンに割り当てられているのかは不明だ。アズケタ氏は全体の予算の詳細を明らかにしていないからだ。ただし、広告費の大部分(70%)はデジタル・チャネルが占めており、Facebook、インスタグラム、Twitterなどのソーシャルメディアがブランドの総広告費の26%を占めていることも明かした。パスマティックス(Pathmatics)のデータによると、グレイ・グースは今年これまでに410万ドル強を広告に費やしている。

ニューヨークとメタバースを組みわせる

グレイ・グースの全米オープン・マーケティング戦略は、同トーナメントとブランドのあいだの絆を固めることにかかっている。グレイ・グースと全米オープンの関係は、2007年から始まった長年のパートナーシップにある。グレイ・グースはこれを通じて同社の文化的プレゼンスを高め、ブランド認知度を高めたいと考えている。

メタバース・マーケティング戦略の一環として、グレイ・グースは限定エディションのウェアをメタVIPラウンジ(MetaVIP Lounge)で提供しており、常に完売しているとアズケタ氏は述べた。全米オープンのトーナメントでは、わずか1週間で2万6000ダウンロードされたという。「これが私たちがニューヨーク市全域とメタバースで活動を模索している理由だ」と同氏は言った。

グレイ・グースは全米オープンのほかにも、宅配サービスやアットホームなカクテルの提供にも力を入れている。たとえば、ニューヨーク、ブルックリン、マンハッタンの住民は、事前に作って冷やしたハニー・デュースを、デリバリーサービスのカクテル・クーリエ(Cocktail Courier)で配達してもらうことができる。

「グレイ・グースがハニーデュースで成功したのは、彼らが継続的に進化しているからだ」と語るのは、総合メディア・デジタル・コミュニケーション代理店チームワン(Team One)でライフスタイル・マーケティング・パートナーシップ部門のグループ・ディレクターを務めるデイミアン・アレヤン氏だ。「自宅配達のカクテル、フローズンバージョン、カクテルキット、ソーシャルメディアでのカクテルレシピ、彼らはこれらポートフォリオ全体の認知度を高めるために全米オープンを使用している。彼らはまた、この機会を利用してハニーデュースを全米オープン関連のオンライン文化の一つのトレンドにしている」。

ブランドが文化的インフルエンサーに

今後数年のうちに、メタバース関連の採用が増え、メタバースにおけるマーケティングは実験的なものから主要ブランドたちによる標準的なものに移行するかもしれない。

スポンサーシップ情報プラットフォームのスポンサーユナイテッド(SponsorUnited)の創設者でCEOのボブ・リンチ氏は、「グレイ・グースと全米オープンは、この提携によってファンの体験を向上させるだけでなく、それ自体が象徴的な存在になったことで、大きな恩恵を受けている」と述べた。

「このパートナーシップの拡大は、全米オープンとグレイ・グースの両方が、デジタルでつながっている音楽、ファッション、スポーツの文化的インフルエンサーに到達することを可能にする」。

[原文:Why Grey Goose is pouring more marketing dollars into metaverse

Julian Cannon(翻訳:塚本 紺、編集:分島翔平)

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