どのブランドもZ世代を惹きつける最善の方法を模索しているが、この世代は気まぐれだ。クアルトリックス(Qualtrics)による1月のブランド調査によると、Z世代はもっとも満足しにくい世代であるという。
しかし、厚手のウィンターコートで知られるカナダのブランド、カナダグース(Canada Goose)は、2021年のあいだに物議を醸した素材の変更を発表し、またソーシャル戦略を刷新してZ世代を惹きつけ成功を収めている。
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3チャネルに注力してZ世代顧客を増加
カナダグースのマーケティング・エクスペリエンス最高責任者、ペニー・ブルック氏によると、2021年にZ世代の顧客を増やすために全社一丸となって取り組んだ後、2022年4月の時点でZ世代はオンライン売上の4分の1を占めるようになったという。さらに、全顧客層においてZ世代はウェブサイトへのアクセスがもっとも高く、またウェブサイトで費やした時間、閲覧したページ、コンバージョン数ももっとも多いことが示されている。
「持続可能性を優先しないブランドは10年、20年後には消えているということがよく言われている」とブルック氏。「(優先順位を付ける)Z世代についても同じことが言える。この世代に合わせて成長しないブランドは10年後には存在していないだろう。当然のことながらZ世代のブランドに対する期待は高く、それによってエクスペリエンスが本当に意味するものとファッション業界が我々の生活で果たす役割が再定義されている」。
ブルック氏によると、Z世代を狙って使っている3つの主要なチャネルは、インスタグラム、Snapchat、TikTokであるという。インスタグラムのフォロワーはミレニアル世代が大部分だが、Z世代のフォロワーは昨年2倍になった。同氏は、これは過度に洗練されたコンテンツから離れ、より自然なコンテンツに移行したからだと考えている。最近の例には、探検家のベン・サンダース氏が極地旅行で撮影したフィルタリングされていない写真の投稿がある。
カナダグースはSnapchatとTikTokでも活発に活動している。昨年、NBAと提携して「プレイ・イン・ジ・オープン(Play in the Open)」と呼ばれるTikTokチャレンジを実施、バスケットボールのトリックショットを披露するようにユーザーに促した。ブルック氏によると、「 #playintheopen 」というハッシュタグは1億1600万回使用されたが、その大部分はZ世代だったそうだ。また、11月にはシューズコレクションをローンチしたが、それに合わせたSnapchatのカスタムフィルターを提供した。ブルック氏はこのフィルターによってカナダグースの「認知度、関連性、好感度が著しく高まった」と述べているが、同社のエンゲージメントについてそれ以上の詳細は共有されなかった。
「これは3つのソーシャルチャネルすべてで行っている継続的なインフルエンサーパートナーシップに基づいている」とブルック氏。同ブランドのパートナーインフルエンサーには、Z世代のインスタグラムインフルエンサーで本人もZ世代のハナ・ホワイティング氏、デザイナーのルイジ・ヴィラセニョール氏らがいる。どちらもインスタグラムで約30万人のフォロワーを抱えている。カナダグースは、ホワイティング氏のようにハイファッション分野やスポーツまでさまざまな興味対象からインフルエンサーを選んでおり、最近ではサッカー選手のカリーナ・ルブラン氏と提携している。
Z世代のツールと購買力に合わせた戦略
ブルック氏によると、カナダグースのZ世代顧客はほとんどモバイル経由で関与しているため、あらゆるマーケティングコンテンツは見栄えがよく、モバイルサイズの画面に合わせて調節できるようにデザインされているという。さらに、カナダグースの分割払いパートナーであるクラーナ(Klarna)は、Z世代に人気が高いことが判明している。この世代はほかの世代よりもクラーナを利用してカナダグース製品を購入している。その理由には、カナダグースの価格が比較的高いこと(コートは約1000ドル、約12.8万円)、そして年齢の高い層と比べてZ世代の購買力が低いことがある。同氏は、コートの購入についてはミレニアル世代が最大の消費者層であると述べている。
「クラーナについて言及している広告は、顧客の中でもとくにZ世代にアピールしている」とブルック氏。「これはZ世代が(ほかの世代とは)異なる方法で購入している証拠であり、Z世代が共感できるコンテンツを提供してZ世代がいる場所で関与することが重要である理由だ」。
最後にブルック氏は、Z世代のあいだで人気が高まった背景には同社の持続可能性の優先順位付けとより倫理的な慣行があると述べている。昨年、カナダグースは新しい毛皮の購入をやめることを、そして今年は毛皮の使用を完全にやめることを確約した。また、価格を変更することなく、2025年までに望ましい繊維と素材を90%使用することも約束している。
Z世代の購入客を対象とした2021年のドゥサムシング(DoSomething)の調査では、75%が倫理的で持続可能なブランドからの購入を好んでいることが判明している。その一方で、Z世代はシーイン(Shein)のような持続可能性の低いブランドを利用していることもわかっている。
ブルック氏は次のように述べている。「我々の特別プロジェクトとコラボレーションではZ世代はつねに指標を上回っている。NBAとのコラボや(フットウェアデザイナーの)サレヘ・ベンバリー氏、(カナダのファッションブティックの)OVO、(中国のファッションデザイナー)エンジェル・チェン氏らのコレクションについては、引き続きZ世代からの関心が高い。また、スタンダードエクスペディションパーカ(Standard Expedition Parka)とヒューマネーチャー・カプセル(HumaNature Capsule)コレクションもZ世代から購入されている。このコレクションはリサイクル素材と責任を持って調達されたダウンを使うようデザインされた」。
DANNY PARISI(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)